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Jリーグ 7年前

神戸・ポドルスキ、J1デビュー戦で見せた異次元。W杯優勝戦士、勝利への貪欲な執念と献身

text by 藤江直人 photo by Getty Images

すべては勝利のために。ゲームの流れを読むセンス

 天を仰ぐ場面もあれば、うなだれる場面もあった。中盤や時にはボランチの位置にまで下がって攻撃の組み立てに参加しようとした場面もあったなかで、前半39分にはチャンスが生まれかけている。

 右タッチライン際の低い位置でボールをもったポドルスキが、左斜め前を向いた直後だった。利き足の左足から放たれた、ピッチの幅を目いっぱいに使ったサイドチェンジのパスが寸分の狂いもなく橋本へ通る。

 橋本がボールを前へもち運ぶ間に、ポドルスキは相手ゴール前へ移動。最終的にはシュートシーンまで至らなかったが、橋本からのリターンを受けてペナルティーエリア内へ強引に侵入しようとした。

 橋本と絡んだこのプレーが、なかなか機能しない攻撃を活性化させるためのヒントになったのか。後半開始前のピッチで繰り広げられた、緊急の作戦会議には続編があると橋本は笑う。

「ストライカーというよりは、本当の意味での『10番』の選手みたいなパサーもやると。このチームではそういう役割もやる、みたいなことを言っていたので。その意味で、左サイドでどんどん前へ飛び出していってくれ、という感じで僕に言ったんだと思います。

 試合の流れを自分で読むというか、そういう経験はすごく豊富な選手ですし、キック自体もものすごく正確ですからね。タメを作ることもできるし、左右に散らすこともできる。実際、前半には僕にもすごくいいボールが入ってきたし、その意味では明らかにいい感じだったと思います」

 ヴィッセルを率いるネルシーニョ監督も、前半の攻撃が停滞した理由を「ボールをバイタルエリアにまでもち運べなかった」と総括している。司令塔タイプの選手が不在だったうえ、ボランチの位置からパスの出し手となっていたニウトンもハーフタイムでベンチに下がっていた。

 そうした状況を踏まえたうえで、ポドルスキは後半からストライカーと司令塔の一人二役を担うと橋本に告げた。前半は何も自分中心の考え方で苛立ち、周囲に向かって吠えていたわけではなかった。

 どうすれば相手ゴールをこじ開けられるのか。どうすれば勝利を手繰り寄せられるのか。すべては新たに加わったヴィッセルのために。思考回路をフル回転させながら、後半の戦いに臨んでいた。

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