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代表 6年前

オランダ代表、凋落の因果。国際舞台で競争力低下、暗黒時代脱出のために必要なこと

text by 中田徹 photo by Getty Images

有望なタレントが「ブレイクする」ということ

 しかし、彼らタレントが「現れる」のと「ブレイクを果たす」ことには大きな差があることをロナルド・デ・ブールは指摘する。

「ブレイクするということは、高いレベルでコンスタントに結果を出し続ける選手のこと。例えばクリスティアーノ・ロナウド。彼は若い頃からハイレベルのプレーをしていたが、今もなお、より相手にとって脅威になろう、より良くなろうと自己投資をし続けている。オランダのタレントたちはベーシックなクオリティを持っている。そして、そこから次のステップを踏まないといけない。技術、戦術、フィジカルに留まらず、メンタル面でも一層の成長が必要だ。それが果たせれば2022年のW杯でオランダ代表は本当に良いチームになると思う」

 ルーシンク編集長は「次世代のタレントがいない」と嘆き、ロナルド・デ・ブールは「タレントはいる」と主張する。しかし、欧州のビッグクラブ、ビッグリーグのクラブは常にオランダ人の若手選手をスカウトして買っていくのだから、きっかけさえ掴めば、中には「ブレイクする」だけのタレントはいるのだろう。こうした意味では、オランダの育成指導者は相変わらず一定のレベルを保っているのではないだろうか。

 深刻なのは、プロサッカーリーグのレベルで国際的に通用する指揮官が、オランダからいなくなってしまったことだ。

 オランダ代表の監督の名前を2008年秋から並べていくと、ベルト・ファン・マルワイク、ルイ・ファン・ハール、フース・ヒディンク、デニー・ブリント、ディック・アドフォカートと並ぶ。監督としての実績に乏しかったブリントは例外かつ論外として、ここ10年、「超」の文字がつくベテラン指導者ばかりが名を連ねている。

 ロナルド・クーマンがエバートンで苦しんでいる今、欧州の舞台で信頼を集めているオランダ人指導者がどれだけいるかと言えば、アヤックスをEL決勝に導き、ドルトムントでロケットスタートを切ったペーター・ボスぐらいのものだろう。  

 今、オランダのクラブはチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグでの存在感をなくしている。そのことは、オランダ人指導者たちがヒリヒリするようなハイレベルな舞台で、戦術プラン、選手交代などの采配、チームのフィジカルやメンタルのピーキング、勝負勘などを養う機会を逸しているとも言える。これまで多くのタレントが表れてはブレイク出来なかったことと、国際舞台で通用する指導者が表れてないことには因果関係があると思うのだ。

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