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Jリーグ 6年前

東京Vを支える賢人・橋本英郎の存在感。大ベテランの経験が敷いたJ1昇格POへの道

text by 舩木渉 photo by Getty Images

「勝たないといけないという感覚が薄れるのがすごく嫌」

橋本英郎
橋本英郎はセレッソ大阪時代にJ1昇格プレーオフを経験し、その厳しさを痛いほど理解している【写真:Getty Images】

 次なる戦いはJ1昇格プレーオフ、25日のアビスパ福岡戦になる。今季は2度対戦して1分1敗と勝てていない相手。だが、多くの選手たちは「勝って味スタに戻ってきたい」「ホームでもう一度できるのが一番いい」と、勝利して本拠地・味の素スタジアムへ戻ってくることを望んでいた。

 東京Vは5位のため、もう一方の対戦で6位の千葉が3位の名古屋に勝利すれば、上位クラブにホームアドバンテージが与えられるレギュレーションによって、プレーオフ決勝をホームで開催できる。だが、橋本は安易にホームの恩恵を受けようとする姿勢に警鐘を鳴らす。

「みんな結構(ホームに)戻りたがっていましたけど、僕はあんまり戻りたくないですね。勝たないといけないという感覚が薄れるのがすごく嫌なので。やっぱりここホームになるということは、僕らは引き分けでOKの状態に変わるので、そういう試合はあまり僕らには良くないんじゃないかなと」

 徳島戦は引き分けでもよかったゲームだが、東京Vは最後まで攻め続けた。貪欲に勝利を目指すチャレンジ精神が2点目を呼び込んだ。橋本は続ける。

「やっぱり僕らに勝ち切る気持ちがないと。そこに怖さを感じるんじゃないかと思う。それだったらアウェイで勝たないといけない状況の方が、絶対にチャレンジはし続けないといけないので、負けていても攻めないといけないし、同点でも攻めないといけない。若いチームでもあるので、そういう状況で僕らはチャレンジする形の方がいいと思います」

 橋本自身、セレッソ大阪時代にJ1昇格プレーオフを経験している。上位チーム(4位)として迎えた2015年の準決勝では愛媛FC相手に、スコアレスドローと大いに苦しんだ。同じ年の決勝は勝たなければいけない状況にもかかわらず、ホームだったことが逆にプレッシャーとなってアビスパ福岡に及ばなかった。だからこそ「チャレンジする形」の重要性を誰よりも認識しているのである。

 徳島戦は橋本にとって8試合ぶりの出場だった。プレー時間は年間を通して決して長いとは言えない。それでも冷静にチームの状況を分析し、的確な方向へ導ける、酸いも甘いも噛み分けたベテランの存在は東京Vにとって計り知れないほど大きな意味を持つだろう。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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