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代表 6年前

優勝候補スペインで輝く「魔法のイスコ」。貫くティキタカ、超攻撃的3バックも【ロシアW杯全32チーム紹介】

シリーズ:ロシアW杯全32チーム紹介 text by 江間慎一郎 photo by Getty Images

新たな中心、“マヒア(魔法)“と呼ばれるイスコ

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スペイン代表の基本フォーメーション

ノルマ:ベスト4
目標:優勝

 今回のW杯欧州予選、スペインはイタリアと同組となったが、9勝1分けという抜群の成績で突破。今回の代表チームはポジティブな印象を植え付けている。W杯本選ではポルトガル、イラン、モロッコと同組になったが、国内の論調は「何よりも今回のスペインは良い」というものだ。チームの目標は、言うまでもなく2010年以来となる2度目の優勝。ノルマについては、たとえW杯が運にも左右される大会であろうとも、疑いの余地などない優勝候補であることに鑑みれば決勝トーナメント1回戦、またベスト8での敗退では物足りなさを感じさせることになる。良い感触を残してベスト4まで残れば、未来への期待感を生めるのではないだろうか。

 ロペテギが基本フォーメーションとするのは4-3-3。中盤ではボールの散らし役&潰し役を務めるブスケッツがアンカーとなり、その左右にはオーガナイザーのイニエスタ&チアゴ(orコケ)を配置。両ウィングにはパス回しに参加しつつ自らも切り込むことができるイスコ&シルバ、1トップにはモラタorD・コスタという強力なフィニッシャーが据えられる。ハーフウェーラインよりも前に位置することを常とするJ・アルバ&カルバハルも絡み合う崩しは、抜群の迫力がある。

 ロペテギはW杯欧州予選や親善試合の中で、その戦術のバリエーションを増やしてきた。ジエゴ・コスタorアルバロ・モラタと純粋なストライカーを1トップで起用するほか、シルバをファルソ・ヌエベ(9番)として相手の最終ラインをかく乱することも試み、さらには3バックも頻繁に使用している。特に3バックは興味深い。その際のフォーメーションは3-4-3となり、最たる特徴は最終ライン3枚の両端に元サイドバックのセルヒオ・ラモスや、カルバハル、ジョルディ・アルバ、モンレアル、アルベルト・モレノとサイドバックが本職の選手を置くことにある。

 ロペテギは3バックの意図について、こう説明する。「私にセンターバックを3枚並べているという考えはない。3-4-3はより攻撃的にプレーするための策だ。最終ラインの3枚にサイドバックが含まれれば、サイドでさらなる数的優位を生み出せる」。この“超攻撃的“3バックを成り立たせるためにはブスケッツが最終ラインまで下がって攻守の安定を取る必要がある。しかし、それでも比重が攻撃に傾き過ぎることがあり、先のロシアとの親善試合では3-3と殴り合いの試合を演じることになった。試合が停滞した際の3バックの使い方が、スペイン浮沈の鍵を握るかもしれない。

 スペインであれば誰もが注目選手となれるが、新たな中心選手としてイスコの名が挙がる。ロペテギはU-21スペイン代表から指導する同選手に全幅の信頼を寄せており、レアル・マドリーで出場機会に恵まれなかった時期にもフル代表に招集し続けた。

 レアル・マドリーのチームメートから“マヒア(魔法)“と呼ばれるイスコは、フル代表でもスペイン各地のスタジアムで、観客を思わず席から立たせるプレーを披露して喝采の的となった。最大の武器はボールが足に吸いつくようなドリブルをはじめとした一人で局面を打開できる個人技だが、最近には欠点と指摘され続けた球離れの悪さも解消されつつある。後方に下がって攻撃の組み立てに絡み、また守備でも奮闘するなど、献身性も光るファンタジスタだ。

(文:江間慎一郎)

【了】

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