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Jリーグ 6年前

湘南・曹監督、清宮父との交流で得た指導観。「主将は決めない」。就任7年目の初挑戦

text by 藤江直人 photo by Getty Images,Kenzaburo Matsuoka

全員がフレッシュな気持ちでサッカーを楽しんでほしい

 冗談まじりで舞台裏を明かした曹監督と清宮監督の、競技の枠を越えた親交をさかのぼっていくと、元号がまだ昭和だった1987年に行き着く。京都府立洛北高校から早稲田大学商学部に入学した曹監督は、サッカー部であるア式蹴球部の一員になった。

 当時の練習グラウンドがあった保谷市(現西東京市)東伏見で、隣接するラグビー部のグラウンドで周囲とは明らかに一線を画す存在感を放っていたのが、学年がひとつ上の清宮監督だった。

「当時からオーラがあったし、リーダーシップだけでなく、独特の人生観というものももっていた。あの時点で、この人は将来的に必ず指導者になると思いましたから。ア式蹴球部とラグビー部の寮も隣同士だったこともあり、喫茶店とかでいろいろな話をしたことも覚えています。

 あのシーズンのサントリーはすごく強かったこともあり、僕自身、『ALIVE』という言葉がずっと忘れられなかった。二番煎じになるかな、とも思ったんですけど。それでも今シーズンは、清宮さんという素晴らしい指導者が扱った言葉にあやかりたいと思ったんです」

 早稲田大学を卒業してからも交流は続き、何気なくテレビ越しに見たサントリーサンゴリアスのプレースタイルに魅せられた。10年もの歳月を超えて拝借した『ALIVE』を、ベルマーレに脈打たせる最初のアプローチこそが、あえてキャプテンと副キャプテンを決めないことだった。

 清宮監督にショートメールを送ったのは、1月上旬の3連休あたり。決意を新たにした曹監督は、最初のミーティングで「ベテランという言葉が大嫌いだ」と、声を大にして選手たちに告げている。

「経験のある選手はベテランと呼ばれるけど、そうじゃないと。このチームには、ヤングルーキーとオールドルーキーが同居しているだけだと。だからこそ、全員がルーキーのようなフレッシュな気持ちを抱きながら、サッカーを楽しんでいってほしいというか。

 今年のチームはピッチのなかでも外でも、常に生きているんだということをビジョンと示せるようなサッカーを追い求めていきたい。特にピッチのなかでは、プレーに関わらない時間を一人ひとりができるだけ少なくして、勝利への責任を等しく背負うチームにしていきたいので」。

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