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柴崎岳がヘタフェの中心になるために。適任はトップ下、信頼寄せられる攻撃の展開力【現地記者の目】

text by ホセ・アントニオ・デ・ラ・ロサ photo by Getty Images

ボルダラスが柴崎に寄せる信頼…だが好調アンヘルが立ちはだかる

 柴崎については、楽観的になれる要素がいくつも存在している。意思疎通も満足ではなかった8月の段階で、すでにレギュラーのポジションをつかんでいたのは、ボルダラスが彼という選手に信頼していたからだ。

 柴崎の選手個人のクオリティーはチームの平均を優に超えており、ボルダラスは彼の加入当初の練習、もっと言えば獲得を承諾する段階から、そのことを理解していたはずである。負傷後、スタメン復帰を果たしても、そのクオリティーの片鱗は示していた。そして現在は、それを継続的に示さなければならない。

 柴崎が再びレギュラーに返り咲く上で、問題はアンヘルの存在にある。柴崎と同じく身体は大きい方ではないが、スピード豊かで、ジャンプ力があり、ヘディングもうまいストライカー。代えがきかない大黒柱J・モリーナの素晴らしいパートナーとなっている。

 現在アンヘルはチームトップとなる7ゴールを記録しているが、その内6ゴールが柴崎の離脱中に決めたものだ。そして7点目は、先のリーガ第20節アスレティック・ビルバオ戦で記録。精彩を欠いていた柴崎との交代で出場し、2-2の同点に持ち込んだゴールだった。

 さて、ボルダラスは今後も、J・モリーナとアンヘルの2トップを置く1-4-4-2を使用し続けるのだろうか、それとも柴崎をトップ下とする1-4-2-3-1にシステムを変更するのだろうか。私は後者だと見ている。

 なぜならボルダラスは、アラベス、そしてヘタフェで1部昇格を果たした過去2シーズン、1-4-2-3-1のシステムを駆使し続けてきた。今後、柴崎をトップ下で使い続け、チームメートとの連係を深めさせていくのが彼の考えなのではないだろうか。

 柴崎は非常に視野が広い選手で、常に自身と味方のポジションを気にしており、自分でゴール前へと持ち込むべきなのか、それとも誰かにパスを出すべきなのかを即座に判断できる。ボルダラスは2トップでもって単調な攻撃を仕掛けるのではなく、柴崎を攻撃の核とすることで攻撃の展開力を引き上げ、相手ゴールにより深く攻め入る狙いがあるように見受けられる。

 おそらく柴崎は、シーズン後半戦にヘタフェの真の中心選手になることを期待されている。だが、そうなるのに必要なのは、結果を残していくことにほかならない。選手としての価値を示す……、いや、リーガ、ひいては世界でその価値を跳ね上げるための試合は、あと18戦残っている。

(取材・文:ホセ・アントニオ・デ・ラ・ロサ【ヘタフェ/アス】、翻訳:江間慎一郎)

【了】

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