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移籍市場の裏で暗躍する代理人ビジネスの実態。サッカー界を支配する「カネ」と「コネ」

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images

「現状は最悪」。UEFA会長も代理人の存在感増大に危機感

チェフェリン
UEFAのアレクサンダー・チェフェリン会長は移籍市場の惨状に危機感を抱いている【写真:Getty Images】

 UEFAが1月に発表した現在の欧州サッカーの傾向についての調査資料「The European Club Footballing Landscape(ヨーロッパにおけるクラブフットボールの大勢)」には、以下の内容が記されている。

・調査をした2014年から2017年にかけての2000件の移籍のうち、代理人が受け取ったコミッションは平均12.6%

・一般的に移籍金が少ないトランスファーの方が代理人に支払われる手数料が上昇する

・10万ユーロ(約9万ポンド=約1350万円)以下の移籍金の場合、代理人は手数料40%を受け取り、移籍金100万ユーロ(約90万ポンド=約1億3500万円)では同20%程度、500万ユーロ(約443万ポンド=約6億6000万円)以上の際には“驚愕の”同9%を得ている

 先月24日にUEFAが発表したプレスリリースによると、今後は代理人に対する手数料の制限を考慮しているという。さらに、同じく先月、英高級紙『テレグラフ』が行ったUEFAのアレクサンダー・チェフェリン会長とのインタビューでは、同会長が現在の移籍市場の状況について警鐘を鳴らしている。

「代理人はクラブに対して『移籍金の50%を私に支払わなければ、ほかのクラブに行くようにする』とか、『もしこの選手を獲得したければ、ほかのこの選手、あの選手、その選手も買わなければダメだ。要らないかもしれないけど獲得して手数料を払え』というスタンスを取っているようだ。(代理人はライセンスが要らなくなり)現在は最悪のシチュエーションだ。大げさに言えば、殺人犯でも代理人になれるのだから」

 こういった話になるたびに、解説者を含むサッカーの識者たちは「これがモダンフットボール」という一言で終わらせようとする。だが、代理人の“悪行”が横行する現在のビジネスモデルが正しいものだとは決して思えない。

 FIFAやUEFA主導で悪徳な代理人の抜け道がない明確なルールを作って、常軌を逸脱した額の現在の移籍金や選手のサラリー、そして代理人に支払われる手数料への対策を施すことに期待したい。

(取材・文:松澤浩三【イングランド】)

【了】

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