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移籍市場の裏で暗躍する代理人ビジネスの実態。サッカー界を支配する「カネ」と「コネ」

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images

横行する「タップアップ」。ドラマなき移籍劇の数々

 だが先日『BTスポーツ』の「フットボールライターズ・ポッドキャスト」にパネルとして登場したジョーイ・バートンは、このような代理人主導の現在の状況に対して、問題提起している。

「マフレズの新しい代理人はカルロス・テベスやフィリッペ・コウチーニョの代理人でもある。コウチーニョの前例があるから、マフレズの価格相場もそこから来たに違いない」

「ただ俺が最も懸念しているのは、トランスファーの際にすでに選手の動向が分かっていなければクラブ側がオファーを出さないところ。今の選手たちはみんながみんな『タップアップ』されている」

「タップアップ」と言えば、2005年にアシュリー・コールがチェルシーからアーセナルに移籍した際に大問題になったように、獲得を目指すクラブが直接選手に移籍話を持ち掛ける“禁じ手”である。しかしながら、バートンは現在のサッカー界ではそれが容認され、横行していると断言する。

「直接か間接か分からないが、クラブは狙った選手の動向に常に探りを入れている。そして好感触であれば、選手との契約内容をある程度詰め、そこからクラブ間の話し合いがようやく行われる。だから最近の移籍はとても早くカタがつくんだ。オファーを出す側は『移籍金はいくら出せばいいか』と代理人と『相場』を確認しているしな」

 おそらくクラブ側は選手と直接話をするのではなく代理人と話しているはず。さもなければ、現在の移籍はほぼすべてルール違反をしていることになってしまう。いずれにしろ、英国でサッカー代理人の影響力は特大になったのは確かだ。

 前出のマルカム氏によると「ポグバの移籍でライオラが得た収入は4100万ポンド(約61億円)。他方、昨夏のネイマールのパリ・サンジェルマンへの史上最高額の移籍で、このブラジル代表の交渉役を務めるピニ・ザハビが手にしたのは1000万ポンド(約15億円)程度だった」という。

 ユナイテッドとアーセナル間で行われたサンチェスとムヒタリアンのトレードでは、前者の代理人であるフェルナンド・フェルチェビッチに1500万ポンド(約22億円)の手数料が支払われた報道もあった。

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