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Jリーグ 6年前

荒木大吾、名波ジュビロで覚醒へ。忸怩たる思い乗り越え・・・古巣・日立台で果たした恩返し

text by 青木務 photo by Getty Images for DAZN

やっとできた古巣への恩返し

 投入直後にはPA左でパスを受けると、迷うことなく前を向き、右足を振り抜いた。

「パスを選択するつもりはなかった。でも、シュートは思いっきり力みました。あれを決めたかったんですけどね」

 荒木は苦笑いを浮かべる。柏のゴールを守る中村航輔から得点を奪いたかった。それでも、逆転弾をアシストできたのだから仕事を果たしたのは間違いない。

 試合終了後、中村とがっちりと握手を交わすと頭をポンと叩かれた。ようやく頭角を現してきた1年先輩のアタッカーを、リーグ屈指のGKが労ったように見えた。荒木は、アカデミー時代から傑出した存在だった柏の守護神へのリスペクトを口にする。

「やっぱり日本代表だけのことはありますよね。というか、僕からすれば航輔は日本代表じゃなきゃダメでしょうという感じです。それくらいの選手だから」

 これまで、同世代の仲間たちが活躍する姿を見つめることしかできなかった。荒木にも自信はあり、能力の片鱗を見せた時期もあった。大怪我などで急ブレーキを余儀なくされたが、3年目にしてようやく形になりつつある。

「またすぐルヴァンがあるし、決勝トーナメントに進むためにもまずは勝たないといけない。個人としてはこれからも活躍しないと、お世話になった人たちに成長した姿を見せられない。その意味では今日、結果を残せたのは大きかった」

 サッカー選手としての基礎を作ってくれた柏レイソルを相手に活躍できた。荒木はそこに意味を見出している。

「これからシモさんに挨拶してきます」。そう言って24歳のアタッカーはミックスゾーンを抜け、恩師である下平監督のもとへ向かった。

 約1年前、「恥かいてるだけなんで」と吐露した男はもういない。荒木大吾はプロサッカー選手として、また新たな一歩を踏み出した。

(取材・文:青木務)

【了】

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