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代表 6年前

フランス国民は優勝を確信。その理由は? 98年との共通点と20年ぶり栄冠が持つ意味【ロシアW杯】

text by 小川由紀子 photo by Getty Images,Yukiko Ogawa

デシャン監督が叩き込んだ哲学とは

フランス紙
現地紙【写真:小川由紀子】

 しかしいまワールドカップに熱中している若いファンは、エムバペ同様、この栄冠に輝いたときにはまだ生まれていない、あるいは物心ついたかどうかという人たちも多い。そして代表チームが、そして彼らの善戦が、社会に与える影響という面でも20年前とは大きく違う。

 当時は、多くの移民が混ざり合ったフランス代表の成功は、そのままフランスの移民社会の結合を象徴していると言われた。しかし生まれた時からデジタル社会に生きるいまの世代のファンたちは、良い意味で、そういった、社会問題と結びつける域を飛び越えたところにいる。

 多くのファンは、経験のそれほど豊富でない若い選手に自分たちを重ね合わせて、彼らが成功を手にするために、みなで力を合わせ、ときに自己犠牲を負いながらも奮闘している姿にエールを送っているのだ。

 そこには「フランスが絶対勝つぞ!」とか、「20年後という節目は成功を意味している!」といったイケイケな雰囲気は感じられない。漂っているのは、粛々と、成功を祈る、といった空気だ。

 と、場外の盛り上がり具合はこのような感じだが、チーム状況の方はピークに達している。

 今大会のレ・ブルーは、見ての通りの、組織的ディフェンスを強みとするチームだ。「個の前にチーム」。それがディディエ・デシャン監督が叩き込んだ哲学。

 準決勝のベルギー戦でも、ポール・ポグバなどはありとあらゆるボールホルダーに密着プレスを挑んでいたが、彼だけでなく、アタッカーのジルーやアントワーヌ・グリーズマンも懸命に守備に身を投げ出す。選手たちのその献身的な姿は「ピッチ上の11人の闘犬」などとも例えられている。

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