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代表 6年前

ベルギーの「あのカウンター」が成功する理由。日本も英国も葬った“創造主”デ・ブライネ【ロシアW杯】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

イングランドを圧倒した戦術的完成度

 それでもマルティネス監督からデ・ブライネへの信頼は揺るがず、チームの中心に据え続けた。最終的にロシアでの1ヶ月間は彼らにとって「良いワールドカップ」になっただろう。対戦相手によって毎試合アプローチを変えながら、戦術的なバリエーションの豊富さや完成度の高さも見せつけた。「解決策」を示したうえで「3位」という過去最高の成績に至ったのである。

 3位決定戦のイングランド戦でも、デ・ブライネはスペシャルだった。5-2-3に近い形で守るベルギーに対し、3-5-2のイングランドがポゼッションで上回った…と書けば、まるでイングランドが主導権を握っていたように思えるが、実際は真逆である。

 確かにイングランドはボールポゼッション率でベルギーを上回り(58:42)、シュート数でも勝っていたが(15:12)、どう見ても主導権はベルギーが握っていた。開始4分で強烈なカウンターからベルギーのトマ・ムニエが先制点を奪ったことだけが、その要因ではない。

 デ・ブライネは準々決勝のブラジル戦に近い「偽センターFW」のような役割を与えられ、ロメル・ルカクとポジションを入れ替えながら縦横無尽に動き回った。走行距離でも右サイドを制圧したムニエの10.93kmに次ぐ、チーム2位の10.71kmを記録したのが背番号7のデ・ブライネだった。

 さらにパス本数でもデ・ブライネは58本で、チーム最多を叩き出している。このデータからは対照的な両チームの特徴も見えてきた。イングランドのパス本数上位5人はジョン・ストーンズ、キーラン・トリッピアー、エリック・ダイアー、ファビアン・デルフ、フィル・ジョーンズとなっている。

 一方、ベルギーの上位5人はデ・ブライネをはじめ、トビー・アルデルヴァイレルト、エデン・アザール、アクセル・ヴィツェル、ユーリ・ティーレマンスだった。中盤よりも後方の5人が多くのパスを回していたイングランドに対し、ベルギーはアルデルヴァイレルト以外は中盤より前の選手である。どちらの攻撃が機能していたかがよくわかるだろう。

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