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スペインにとってロシアW杯とは何だったのか? 騒動、腐敗疑惑…五里霧中の改革も「また明日」

text by 木村浩嗣 photo by Getty Images

故・ルイス・アラゴネス氏とイメージが重なるルイス・エンリケ

 サッカーが国技であるスペインでもロシアに惨敗した後は、代表叩きが数日間続いたが、その後のW杯はいつもの男どもを中心としたサッカー好きが見る大会になり、週末ごとに夫や恋人の不在を嘆く、「クラブサッカー嫌いだが代表好き」の女性を中心とした層は離れて行った。

 大体にしてスペイン人は気まぐれで都合が悪いことは忘れてしまうのだが、このロシア大会はロペテギの解任とフェルナンド・イエロの急きょ登板、ロペテギ派と反ロペテギ派の内紛やロッカールームの腐敗疑惑(消灯も起床も自由、練習は午前のみ、試合後の1日半は休養など古株が仕切るルールがあった)など火薬は十分あった。よって、敗退後もしばらく花火が上がり続けることを期待していたが、そんなことはなかった。

 ロペテギはプレシーズンが始まるとCL3連覇チームの新指揮官として颯爽と登場し、表情が曇るのはロナウド退団について質問された時だけになった。いくらメッシが落ち込んでいたからといって、バルセロナでその後遺症に苦しむだろうとする声は皆無だった。ファンも選手も誰もが気持ちを切り替え、過去を忘れて現在を生き始めたのだった。

 ロシア後、いつくかのことが起こった。

 イエロは早期敗退の責任を取る形で退任。同情論の一方で采配を批判されたことで嫌気がさしたのか、スポーツディレクター(SD)のポストも放り出し連盟を離れてしまった。

 新監督選びを手掛けるはずのSDがいなくなったので、ルビアレス会長が自ら選んだのは元バルセロナ監督のルイス・エンリケ。SDにはアトレティコ・マドリーなどで活躍したホセ・フランシスコ・モリーナが選ばれた。

 ルイス・エンリケ起用は、ロペテギを躊躇なく解任した剛腕会長らしい強気の一手である。かつてメッシと衝突したこともある強烈な個性は、ラウールを代表から外す大ナタを振るうなどしてチームを刷新、EURO2008優勝をもたらした故ルイス・アラゴネス氏とイメージが重なる。

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