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スペインにとってロシアW杯とは何だったのか? 騒動、腐敗疑惑…五里霧中の改革も「また明日」

text by 木村浩嗣 photo by Getty Images

ここは「アスタ・マニャーニャ」(=また明日)の国である

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スペイン代表は決勝トーナメント1回戦で開催国ロシアに敗れた【写真:Getty Images】

 腐敗したロッカールームの掃除、という特命を得ての就任という噂で、8月31日の招集リストで誰が呼ばれ、誰が外れるのかが俄然注目されることになった。

 イニエスタ、シルバ、ピケが代表引退を表明した。シャビは引退済みでセスクはロペテギ時代から招集されていないから、技で大男を倒し8年前に世界を制覇した“ちびっこMF”の時代は、これで完全に終焉したことになる。

 シルバはマンチェスター・シティ、ピケはバルセロナで代えの利かない選手であり続けているから引退は時期尚早ではあるが、これもクラブは日常で仕事、代表は非日常でお祭りという認識が反映された決断だろう。代表はあくまで体力的に余裕があり、金銭のためではなく名誉のために参加するものなのだ。

 シルバとピケについては世界一にも欧州一にもなってハングリー精神を失ったということもあるが、ルイス・エンリケ新監督の改革に今さら付き合えない、というのもあるのかもしれない。

 小柄なMFがショートパスを繋ぐ“ティキタカ”が行き詰った後が何になるのかは、まだまったく見えない。ジエゴ・コスタのような長身FWをCFに置くのか、イアゴ・アスパスやロドリゴのようなMF的なFWを起用するのか。パスサッカーという軸をどう肉付けして再び国際舞台で戦えるようにするのかは、ルイス・エンリケの胸一つで、その胸中は想像がつかない。

 同じ大会前の監督解任でスタートしながら、あれをやれば良い、というスタイルが見えた日本、その継続路線として日本人監督を選んだ日本とは、スペインは正反対の状況にいる。改革すべきなのだが五里霧中で何をしたらよいかわからない。

 とはいえ、ここは「アスタ・マニャーニャ」(=また明日)の国である。リーガ開幕に浮かれてしばらく代表のことは忘れるというのも、「明日できることは今日するな」というこの国らしい。

(文・木村浩嗣)

【了】

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