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アジア 6年前

人生かかる運命の決勝は日韓戦。韓国、兵役免除へあと1勝。主将ソン・フンミンの自己犠牲

text by 舩木渉 photo by Getty Images

決勝は日韓戦。ソン・フンミンも気合十分

 終わってみれば3-1。日本を力強さで上回ったベトナムに、韓国は力の差を見せつけた格好となった。決勝は「兵役免除」をかけた大一番、来月1日の日韓戦となる。

 ソン・フンミンは試合後、「パフォーマンスは非常に良かった。選手たちは勝つために貪欲だったし、勝利に値するプレーだったと思う」と結果への手応えを語った。しかし「今大会のベストパフォーマンスだったか?」という質問には「そうは思わない。僕たちの課題は試合を追うごとに改善されてきている。決勝では僕たちの100%、いや…100%以上の、今日よりも良いパフォーマンスを見せられるだろう」と答え、さらなるパワーアップを宣言した。

 韓国のキム・ハクボム監督も、チームをけん引するキャプテンへの信頼を強調する。記者会見では今大会1ゴールのみの背番号7について「ソン・フンミンはゴールが重要な選手ではない。確かに彼にとって左右のウィングがベストポジションかもしれないが、このチームでは中盤の役割を担ってもらっている。それでも彼は問題なくプレーできる。チームの精神的支柱であり、ポジションは大きな意味を持たない」と述べて決勝での活躍にも期待を寄せた。

 誰よりもハードワークし、カウンターを食らえば全力ダッシュで誰よりも早く自陣に戻って守備をするソン・フンミンの姿を見て、「自分もやらなければ」と思わない選手はいないだろう。「僕が下がることで味方にスペースができる。僕以外にもゴールを決められる選手はたくさんいる」と語るキャプテンの自己犠牲によってチーム全体の力が底上げされている。

 2ゴールで韓国を勝利に導いたイ・スンウも「全員が90分間最善を尽くし、最後まで諦めずに走った。選手同士の信頼があってたくさんのゴールが決まる。今日もそうだった」と、あくまでチーム全体の献身の末に自らのパフォーマンスがあることを説いていた。

 金メダル獲得によって「兵役免除」を受けられるか否か、つまり今後の人生を左右する分かれ道に韓国の選手たちはたどり着いた。プレッシャーの大きさは想像もつかないが、今大会でのチームの成長ぶりを見れば、決勝ではその重圧を感じさせないパフォーマンスで日本に襲いかかるだろう。

 ソン・フンミンの自己犠牲とカリスマ的リーダーシップに触発され、試合後に立ち上がれなくなるまで走りきる韓国。勝利に対してこれほどまでに貪欲な集団は、ここぞの大一番で最大のパワーを発揮するに違いない。

(取材・文:舩木渉【インドネシア】)

【了】

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