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フランスリーグはスター選手が来るのに輸出国? 輸入国ではない理由と五大リーグでの位置付け

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

スター選手を迎え入れた近年のフランスリーグの動き

 このように、『選手輸出』には金銭面での必要に迫られて、という背景もあるが、育成のシステムがしっかりしていて優秀な選手を輩出できる、という好条件があってこそ、という両方向からの作用によって実現しているともいえる。
 また、自クラブで育成した選手は、市場に広く知らしめるべく、各クラブとも試合で積極的に起用する傾向にあるから、フランスリーグは若手選手にとって実戦経験が積みやすい場だ。つまり求める側にとっては、若くても実戦経験豊富な人材を探せるマーケットということだ。

 そんな中、近年は変化も見られている。その変化球を投げてきたのはカタールだ。2011/12からカタール勢がPSGの運営に参画してから、事情は少し変わってきた。

 彼らがズラタン・イブラヒモヴィッチやチアゴ・シウバ、デヴィッド・ベッカムや、ネイマールといった世界的なスター選手をリーグアンに引き入れたことで、リーグアンの注目度は以前よりも向上している。選手たちも、「彼らがいるリーグなら自分もやってみたい」と以前に比べて魅力を感じるようになってきている。

 また、PSGがカルロ・アンチェロッティを招聘したのを皮切りに、指揮官の動きにも変化が見られ、クラウディオ・ラニエリ、ウナイ・エメリー、ルシアン・ファーブル等、欧州の名将がフランスリーグで指揮をとるようになってきたことも、選手の流入に影響している。

 2017年の冬のメルカートでは、フランスリーグが新戦力獲得のために支払った金額は合計1億5600万ユーロに達し、イングランドのプレミアリーグ(2億5380万ユーロ)、中国のスーパーリーグ(2億1870万ユーロ)に次いで世界で3番目となった。

 放出で計上した金額は3700万ユーロと輸入額が輸出額をはるかに超え、プロフットボール協会(LFP)のジェネラルダイレクター、ディディエ・キヨ氏も「収入と支出が逆転したのはフランスリーグでは数十年は見られなかった非常に珍しい現象」とコメントしていた。

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