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ドイツ代表、W杯のその後。カウンター型への移行も前途多難…旧世界王者に希望はあるか

text by 本田千尋 photo by Getty Images

新システムが機能。オランダを苦しめる

 このEURO2020への第一歩となる「威信を掛けた」オランダ代表戦で、レーブ監督は[5-2-3]の布陣を採用。10月16日のフランス代表戦から用い始めたカウンター型である。

 メンバーは、左からアントニオ・リュディガー、マッツ・フンメルス、ニクラス・ジューレの3バックに、ニコ・シュルツ、ティモ・ケーラーの左右ウィングバック。中盤はトニ・クロースとヨシュア・キミッヒの2枚。そしてレロイ・サネ、ティモ・ヴェルナー、セルジュ・ニャブリのドリブラーが並んだ3トップだ。

 10月13日にアムステルダムで戦った時とは全く別の顔を持ったチームは、中盤を省略した速攻でオランダ代表を翻弄した。10分、左サイドに下がったクロースが、前線から降りてきたニャブリにパス。ニャブリは右足ダイレクトで前方のヴェルナーに送る。ヴェルナーは頭でトラップして、ペナルティエリアの外から右足一閃。先制に成功する。さらに20分には、クロースのロングボールに合わせて抜け出したサネが、CBマタイス・デリフトを交わし、左足でゴールを決める。

 早い時間に2点を奪ったため、気持ちにゆとりが生まれたのか、次第にドイツ代表のボール・ポゼッションは安定。守備時にも素早くリトリートして5バックを形成し、オランダ代表にチャンスを与えない。フランス代表戦、テストマッチのロシア代表戦を経て、3試合目にして新システムはスムーズに機能し始めていた。改めてドイツ代表の選手たちの戦術理解度の高さが窺える。

 そしてチャンスと見れば、ギアを上げてオランダ代表を強襲。ボールを奪えばすぐに左サイドのニコ・シュルツにボールが渡り、重戦車のようなウィングバックはフィジカルを活かして攻撃参加。さらにサネが右サイドにポジションチェンジして、ドリブルで中央に仕掛けていく。オランダ代表は、前線のトリオを中心とするドイツ代表の速攻、特にサネのドリブルに手を焼いた。

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