浦和が天皇杯決勝で示した強者たる所以。計算し尽くされた“神ボレー”までの8秒間

2018年12月10日(Mon)13時05分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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浦和が見せた勝利へのこだわり

浦和レッズ
浦和レッズはオズワルド・オリヴェイラ監督就任1年目でさっそくタイトルを獲得した【写真:Getty Images】

 長澤は浦和の選手が3人固まっていて人数でも仙台と変わらないファーサイドへと緩めのゴールと逆方向に曲がる右足クロスを送る。ここで槙野らが目線をずらされてプチ混乱状態の相手に競り勝てればダイレクトにゴールも狙えるが、今回は自らのゾーンで野津田岳人がクリア。この時に限らず、仙台の選手は相手の少ない逆方向へボールを押し出す傾向が強く、宇賀神はそれを狙っていた。

 そして、まさに狙いがハマり赤いユニフォームの背番号3のもとへ野津田のクリアボールがこぼれた。GK西川周作は「練習ではよくゴールの上にボールが飛んでいましたけど…」と冗談で笑いながらも、「こぼれたところには、ウガ(宇賀神)が練習から常に良い準備をしていました」と明かす。

 さすがにドライブ回転のかかった高速シュートには日本代表GKシュミット・ダニエルも為す術なく、「ちょっとだけ(宇賀神が)蹴る瞬間のところがブラインドになってしまって、その分ちょっと反応が遅れたので、もうちょっと自分に何かできたんじゃないかという気持ちはすごくある。準備しだいでは止めることができたかもしれないですけど…」と痛恨の失点を悔やんでいた。

 仙台側から見れば、これまでアプローチを大きく変えてこなかったコーナーキックの守備の弱点を突かれてしまった。浦和は今季のリーグ戦で奪った51得点のうち、約31%にあたる16得点をセットプレー(直接を除く)から奪っている。これは清水エスパルスと並びJ1で最多の数字だ。

 リーグ戦での失点のうちセットプレー(直接除く)は約22%で、それほど苦手としているわけではなかった仙台だったが、準決勝の鹿島アントラーズ戦でもコーナーキックから決勝点をもぎとっている浦和に関しては特別な対策を用意しておくべきだったか。

 見事なボレーシュートで浦和にタイトルをもたらした宇賀神は、「セットプレー」へのこだわりについて、こんなことを言っていた。

「やはり勝負の細部にこだわるところがセットプレーの練習だったりとか、そういうところからも感じられると思います。セットプレーを練習するだけでなく、そのセットプレーの練習のときにいち早くポジショニングを取ったりだとか、そういう本当に細かいところの選手1人ひとりの意識というのが非常に高くなった。それがこういう形で、(天皇杯の)準決勝、決勝でわかるようにセットプレーから勝負が決まっていくところだったと思います」

 キャプテンの柏木は「正直内容が良かったと試合はほとんどなかった、この(シーズン)終盤に関しては特に。けど勝ち切る強さはすごく身についたと思うし、何より必要だったタイトル、ACLに出場したい、それだけだった。勝ちにこだわった結果が(優勝に)つながった」と、満身創痍の中でも目標にしがみついて必死に戦ってきたこれまでの努力の成果を誇った。

 タイトルへの強い執着心とともに、時間がない中でも細部まで準備を怠らなかった浦和の強者たる所以、あるいはオズワルド・オリヴェイラ監督の流儀が、わずか8秒ほどのコーナーキックに詰まっていたのである。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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