ファンも公然と反旗を翻す。外国人オーナーが起こす数々の波紋。終焉の時は近いのか?【億万長者クラブの真実(3)】

世界中で起こっているサッカーバブルの全貌を解き明かす。 サッカー界を「異様」とさせた億万長者たちの正体を、英国人ジャーナリストが徹底取材した『億万長者サッカークラブ』(カンゼン)から一部抜粋して公開する。(文:ジェームズ・モンタギュー/訳=田邊雅之)

2019年01月04日(金)10時40分配信

text by ジェームズ・モンタギュー photo Getty Images
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欧州サッカーが蓄積したノウハウに直接アクセス

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写真中央に写るのが中国の習近平国家主席【写真:Getty Images】

 中国政府は、今もしっかりと手綱を握っている。そして必要とあらば、ありとあらゆる分野において断固たる手段が取られることになる。サッカーも然りだ。

 実は、中国企業がADOデン・ハーグを買収した要因もここにある。王輝は個人的な理由や思い入れで、クラブのオーナーになったわけではない。その裏には、オランダが世界に誇る指導のノウハウを吸収して、中国サッカー界に還元したいという国家の思惑が働いていた。

 ヨーロッパのチームを買収したことで、クラブのオーナーたちは中国の巨大なマーケットに対するマーケティングツールを手にした。またクラブ側にしてみれば、10億を超える市場が開放された形にもなるかもしれない。

 だがさらに重要なのは、ヨーロッパサッカーが蓄積したノウハウに、直接アクセスできるようになった点だった。これは中国サッカーを蘇らせ、ワールドカップの本大会にもう一度出場させるという習近平の計画を実行する上で、一つの鍵となっていたのである。

 デン・ハーグを買収した直後、王輝は何人かのコーチを中国へ送り、習近平のプランを実現させるための手配を行っていた。これらのコーチは、北京市内の教育機関に送り込まれる予定になっていた。リストには、かつて習近平が卒業した中学校も記されている。

 そして代わりに中国人の指導者たちが、逆にオランダに渡ってくることになる。

 これらの指導者の中には、高洪波も含まれていた。中国代表チームを率いて2011年のアジアカップ本大会に導いた監督である。同大会は中国サッカー界にとって、代表チームが主な国際大会に出場を果たした最後の機会になっていた。

 中国では、中国で最も経験豊富な指導者である高洪波が、デン・ハーグの指揮を執ると大々的に報じられた。高洪波は、ヨーロッパのクラブを指揮する初の中国人監督になるだけでなく、 中国サッカー界の地位が向上したことを示すシンボルともされたのである。

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