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日本代表 5年前

日本代表はなぜイランに完勝できたのか? 「粘り強さ」の正体と「非・自分たちのサッカー」

text by 植田路生 photo by Getty Images

森保ジャパンの「粘り強さ」とは何か

 森保監督の口癖の1つに「粘り強く」という言葉がある。粘り強く戦うことはサッカーにおいては当たり前のことだ。記者会見では慎重に言葉を選ぶ森保監督だけに、当たり障りのないワードの1つとして言っているとさえ思えた。

 だが、まさにイラン戦は森保ジャパンの真骨頂である「粘り強さ」が出た試合だった。イランの激しい攻撃を集中力を切らすことなく跳ね返し、ラフなプレーにも平静さを保った。先制点につながった南野のプレーもその1つだ。笛が鳴るまで諦めずにプレーするのは選手として基本のことだが、実際はそう簡単ではない。

 そうやって相手が苦しむようなサッカーを続けるのはこのチームの特徴でもある。ベスト16のサウジアラビア戦は相手の攻撃パターンを熟知し、相手を完封。ベスト8のベトナム戦も、苦戦しているように見えたが、後半45分は何もさせなかった。

 森保ジャパンの強さは「自分たちのサッカー」を持たないことだ。パターンがない分、相手は分析がしにくい。どんなタイプのチームにも対応してくるため、敵にするとかなりやりにくい。

 イランは「自分たちのサッカー」にこだわった。通用しないロングボールを続け、それ以外の攻撃パターンは貧相なものだった。前線からのプレッシングは前半は効果的だったものの、日本に読まれると徐々に瓦解し、しまいには集中力が切れた。

 森保ジャパンには派手なプレーは少なく、かつて本田圭佑が見せていたような飛び道具のFKがあるわけではない。だが、崩れにくく、相手を罠にはめ、90分間戦い続ける。これこそがまさに「強いチーム」と言えるのではないだろうか。

(取材・文:植田路生【UAE】)

【了】

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