サッカー談議は、なぜいつも結果論なのか? W杯ベルギー戦を正しく論じる【岩政大樹・真の戦術論 前編】

たとえば日本代表とベルギー代表の雌雄を決した「ロストフの14 秒」を論じるとき、その指摘は結果論になっていないだろうか。解説者として活躍する元日本代表の岩政大樹氏は、まず問うべきは「原則」であると説く。2月6日発売の「フットボール批評issue23」から一部を抜粋して前後編で公開する。今回は前編。(文:岩政大樹)

2019年02月08日(Fri)10時20分配信

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サッカー選手を構成する3つの要素

岩政大樹
元日本代表で現在は解説者としても活躍する岩政大樹氏【写真:編集部】

 私が指導あるいは解説をするとき、もっとも重視するのは「原則」です。あの「ロストフの14秒」も、まず「原則」の有無から論じられるべきだと考えます。これはどういう意味なのか、順を追って説明していきます。

 ピッチにおけるサッカー選手のプレーを構成する要素は、3つの種類に分類できると思っています。

 プレーを構成する一番深いところにあるのは「原則」です。サッカーで同じ場面は二度とありませんが、実際には「こういう場面では基本的にこうすべき」と定められたいくつかの決まりごとがあります。例えば、攻撃の優先順位であれば、“まず前”を目指していくのが「原則」であり、決して横や後ろの選択を先に探してはなりません。

 この括りの中には、チームの「約束事」や個人の「セオリー」、あるいは局面における「判断基準」なんかも含まれます。ボールを大事にするスタイルなのかどうか。自分なりに「こうなったらこうなるはず」と考えたもの。迷った時に選択するのはリスクか、リスク回避か。様々な要素が各チーム、あるいは選手には設定されています。

 基本的に選手たちはこれらを忠実にこなしていこうと考えているものです。サッカーは11人でやるもの。混沌とした状態で流れていく時間の中で、チームが規律をもってプレーするために最も大切な部分になります。 

まず「原則」があり、その次に「判断」と「技術」

日本代表
日本代表はロシアワールドカップでベルギー代表に敗れ、ベスト16で大会を去ることになった【写真:Getty Images】

 大元となる「原則」の上に「判断」があります。

 サッカーの試合は、原則を基にプレーをし続けていれば必ず勝てるわけではありません。原則とは「そうした方が一番成功する確率が高い」と言えるようなものですが、サッカーの場合、そもそも攻撃が成功する確率が低いため、成功する確率が低い選択をした方が勝ってしまうことだって往々にしてあるのです。

 そこで選手たちにはいつも「判断」が求められます。ここでは「認知」「状況把握」という要素もあえて「判断」に含めて説明しますが、状況把握をして、できるだけその状況に即した的確な判断を下し、そして瞬時に実行に移していかなくてはならないのがサッカーです。ここはサッカー選手にとって終わりがないもの。取り組み続けて高め続けていかなければいけない、プレーする上で最も重要な要素と言っていいでしょう。

 判断と並ぶように、もう一つ「技術」という要素があります。

 ここには「フィジカル」という要素も含まれます。「原則」を基にプレーをしても、それを可能にする技術やフィジカルがなければ、そのプレーは成立しません。技術を高め、フィジカルを鍛えて、プレーの精度をより高めていくことも当然、サッカーにおける大事な部分です。

 原則(約束事、セオリー、判断基準)に基づいてプレーする中で、判断(認知、状況把握)と技術(フィジカル)が選手たちにはいつも試されています。原則は頭にありながらも、それを基に実行すべきなのか否か。それを実現する状態に自分がいるのか否か。それを瞬間的に考えて選手はプレーをしています。

 ちなみに、原則と約束事、判断と認知などを一緒くたにすることに対して疑問を持たれる方もいると思いますが、話の構成上、同じ括りに入れられるという判断のもと括らせていただきました。ご理解ください。

(文:岩政大樹)

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【了】

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