カットイン対策には「右足の精度」を高める
シュートはGKナイジェル・ベルトラムスに防がれ、狙い通りにとは行かなかったが、結果的には、堂安のアクションが決勝点をもたらすことになった。獲得したCKを堂安自ら蹴る。DFがクリアし損ねたボールを、パウル・グラドンが左足ダイレクトで突き刺した。そしてこのまま1-0のスコアで、フローニンゲンはデ・フラーフスハップに勝利。敵のタイトな守備に苦しみながらも、堂安はフル出場を果たした。
エールディビジでの2シーズン目が終わろうとする現在、バイス監督からの信頼も完全に掴み、チームを牽引する主力としてヒタチ・スタディオンのピッチに立つ堂安。オランダのフットボール・ファンの間でも、その名を知らない者はいない程だという。今では、対戦相手も堂安のカットインを知り尽くし、十分に対策を立てて来るようになった。
「そうですね、かなり見られていますけど。その分、縦に行く馬力がすごく出て来ている。今日も縦に行くシーンは何個かありましたし、成長できているな、と感じています」
そのように語る堂安は、決して行き詰まってはいないようだった。
「中を切られたら縦に行くだけで、僕自身、縦に行けないと思っているわけじゃない。その後のプレーが左足でやり易いから、そのプレー(カットイン)を選択しているだけで、縦に行けと言われれば、全然行ける。中を切られ出して、完全に縦に行けるので、簡単だな、とは思います」
「中を切られたら縦に行くだけ」——。対戦相手の“カットイン対策”は、古くからのイタチごっこのように、かえって堂安のプレーの幅を広げているようである。今後、さらに「右足の精度」を高めていくことができたなら、対峙するDF陣にとって、本当に怖い選手となるに違いない。
縦に突破して「右足」でフィニッシュに持ち込む場面が増えれば、それこそが、堂安が次のステップに進んだことの証となるのではないか。昨年9月の日本代表デビュー時には、右足も練習していることを公にしていた。“練習の虫”の堂安であれば、成し遂げる可能性はある。
これまで数多くの選手が欧州のビッグクラブに羽ばたいたエールディビジ。その系譜に名を連ねるため、堂安は日々、まっすぐな気持ちでサッカーと向き合っている。
(取材・文:本田千尋【オランダ】)
【了】