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長谷部誠、35歳の飛躍。自らはどう感じたのか? 枯渇する事なき意欲と晴れやかな表情

text by 本田千尋 photo by Getty Images

駆け抜けた今季。挑戦することの意味

 全試合同時刻キックオフの最終節を終え、他会場でマインツがホッフェンハイムを下したことで、アイントラハトは7位に滑り込む。辛うじて来季のヨーロッパリーグ出場権を獲得した。1-5での大敗だったにもかかわらず、試合後の長谷部の表情がどこか晴れやかだったのは、まずは最低限の結果を手にしたからだろう。

「よく言う二兎を追うものは一兎をも得ずということで、自分たちの中では、チャンピオンズリーグの出場権も、そしてヨーロッパリーグの優勝も両方追っていた中で、両方とも獲ることはできなかったんですけど、だけどその二兎を追わないと、やっぱり感じられなかったことっていうのは、今すごい感じている部分もあって。

 二兎を追えるチームっていうのもなかなかないし、その中で自分たちが、こういうアイントラハトみたいなチームが、これだけって言ったらあれですけど、これだけの選手層でチャレンジした意味っていうのはやっぱり考えなきゃいけないし、そういう意味では、最後7位で来季ヨーロッパリーグの予選からっていうのは、挑戦したご褒美かなっていうくらいに感じています」

 そして何より、リベロだけでなくボランチのポジションもこなしてアイントラハトを支え、戦い抜いた今季に充実感を覚えているようだ。

「個人的にもね、非常に充実したシーズンだったし、自分も前半戦の最後の1週間だけ怪我でちょっと休んで、本当にほぼフルで後半戦も駆け抜けてきて、そこでまあ、なんだろう…駆け抜けてきて感じるものっていうのはすごく大きかったと思います。だから、満足まではしていないんですけど、すごく実りあるものでした」

 特に前半戦、リベロとして示したパフォーマンスは秀逸だった。鋭い読みと出足の速さで繰り出されるインターセプト、ゴール前での固い守備、1対1で負けない強さ、強烈なキャプテンシー、チームに力を注入するビルドアップ…35歳というベテランの領域に足を踏み入れるからこそできるプレーと、35歳の選手とは思えないフレッシュなプレーを、長谷部は同時に体現し続けたのだ。

 なお、「満足まではしていない」と話すのは、「複雑な心境」もあるからである。

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