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私がリバプールを愛する5つの理由。哀愁漂う労働者の町と、そこに馴染んだフットボールの魅力

text by 小川由紀子 photo by Yukiko Ogawa

レッドナップの人柄

 それが実現したのだから、もう一生の運を使い果たしたような気分だった。

 ベテランカメラマンの赤木真二さんと同行したこの取材は、ジェイミーとスポンサー契約をしていたスポーツ用品メーカーさんが間に入ってくれたおかげで、練習を見学してから一緒にランチをとりつつのインタビュー、さらには週末のアンフィールドでの試合観戦ご招待もついた、いまでは考えられないようなフルコースだったのだが、レッドナップ選手のイケメンぶりと気取らないお人柄に加えて、ノックアウトされたのは、伝説の『KOPスタンド』だった。

 KOPスタンドとは、ゴール裏のサポーター席だ。途中に通路がないのか、スキーのジャンプ台のような、大きな斜面のように見える。

 その斜面を埋め尽くしたサポーターが、試合前、一斉にスカーフを頭上に掲げて、『You’ll never walk alone』を力強く歌い上げたその瞬間、足の先から頭のてっぺんまで、ぞぞ〜っと震えがきた。

 それまで、ウェンブリー・スタジアムやアーセナルのハイバリー、ニューカッスルのセントジェームスパークといった他のスタジアムでも、「良い雰囲気だなあ」と感動していたけれど、あの時はじめて見たKOPスタンドのインパクトは、とにかく、とにかく、震えがくるほど圧倒的だった。

 そんな思いを抱きつつ、その後も取材でかかわっていくうちに、このクラブのいろいろな面を見ることになった。

【次ページ】ブーツルームの秘話

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