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永井謙佑は森保監督の“何か”を動した。日本代表で魅せた力、大迫勇也とは異なる武器とは?

text by 編集部 photo by Shinya Tanaka

永井謙佑
エルサルバドル代表戦で2ゴールを挙げる活躍を見せた永井謙佑【写真:田中伸弥】

【日本 2-0 エルサルバドル キリンチャンレンジカップ2019】

 日本代表は9日、キリンチャレンジカップ2019でエルサルバドル代表と対戦し、2-0で勝利を収めた。

 5日に行われたトリニダード・トバゴ代表戦で初めて3バックを採用した森保一監督は、この試合でも引き続き同システムを採用。最終ライン3枚は5日のゲームと同じく畠中槙之輔、昌子源、冨安健洋で組まれた。WBには原口元気と伊東純也、注目された2シャドーには堂安律と南野拓実が並ぶ形となった。

 そして、1トップには鈴木武蔵の負傷離脱に伴い追加招集を受けた永井謙佑が起用されることになった。明治安田生命J1リーグで首位を走るFC東京でも主力としてプレーするスピードスターがどのような働きを見せるのかは、この試合の大きな注目ポイントとなった。

 その永井は前線開始から果敢に相手DFの背後のスペースを狙う動きで違いを生みだそうとしていた。実際その動きを見逃さなかった小林祐希や橋本拳人らから何度か浮き球のパスが出ていた。しかし、良い形でボールを収めることができない。サイドでパスを貰うことはあったが、ゴールまでの距離が離れているため、得点の匂いというのは感じられなかった。

 それでも一瞬のチャンスをモノにした。19分、冨安からのパスを相手陣内深い位置で受けた永井がDF2人を交わすと左足でシュート。これがゴールネットを揺らし、日本代表に先制ゴールをもたらした。

 勢いに乗った永井は、その後も相手ゴールを脅かす。35分には南野との連係から左足を振り抜き、ボールは枠内を捉えていたが相手GKのセーブに阻まれた。

 その6分後、原口が左サイドを突破すると、グラウンダーのクロスを中央へ送る。これに反応した永井がニアサイドを打ち抜き、前半だけで2得点を奪った。

 後半、ハットトリックが期待された永井だったが、相手選手との接触で肩を負傷し、大迫勇也との交代を余儀なくされる形に。久しぶりの代表招集で重要な結果を残していただけに、なんとも残念な幕切れとなってしまった。

 しかし、森保ジャパンにとって永井が目に見える結果を残したという事実は大きな収穫となったに違いない。というのも、森保監督率いる日本代表はこれまで、大迫不在時に力を発揮できる1トップ候補が見つかっていなかった。

 年明けに行われたAFCアジアカップ2019では清水エスパルスに所属する北川航也が1トップを務めることが多かったが、低調なパフォーマンスに終始し、大迫不在時の新たなオプションとなることができなかった。さらに3月のキリンチャレンジカップでは北海道コンサドーレ札幌の鈴木武蔵が最前線でプレーしたが、こちらも指揮官を満足させる結果を残せたとは言い難い。今シリーズでも招集を受けていた同選手だったが、無念の負傷離脱。アピールの場を失った。

 そんな中、追加招集で代表入りを果たした永井が結果を残した。彼の最大の武器であるスピードはやはり相手の脅威となることができる。それをピッチ上で証明したエルサルバドル代表戦となったのである。大迫の代役候補に名乗り出るには申し分ない活躍だったと言えるだろう。

 もちろん大迫の代役と言っても、背番号15の全てのプレーを真似できる選手という意味ではない。大迫にできることは大迫にしかできないし、彼に求められているプレーを他の選手に求めても、それをこなすのは難しい。

 だからこそ、自身の持ち味を発揮できる選手が必要だった。永井と大迫のタイプは正反対といってもいいが、違うオプションをチームにもたらすといった意味を考えても、永井の活躍は何度も言うがやはり大きかった。

 まだ1試合を終えたばかりという事実はあるが、1トップ候補の人選において森保監督の中で何かが動いたのは間違いないだろう。

【了】

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