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ベネズエラが突いたボリビアの弱点とは? 3得点は必然、感じさせるダークホースの気配【コパ・アメリカ】

コパ・アメリカ2019(南米選手権)のグループリーグA組第3節、ボリビア代表対ベネズエラ代表が現地時間22日に行われた。試合はベネズエラが3-1で勝利。他会場の結果によって2大会連続の決勝トーナメント進出を果たす形となった。この日のベネズエラの勝因は、ボリビアの弱さを的確に突いたからだと言える。ではその弱点とはどこにあったのだろうか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

ベネズエラは勝利が決勝T進出への条件

ベネズエラ代表
現地時間22日、ベネズエラ代表はボリビア代表と対戦している【写真:Getty Images】

 コパ・アメリカ2019(南米選手権)に挑んでいるベネズエラ代表はここまで粘り強い戦いを見せてきた。グループリーグ第1節ではペルー代表に多くのシュートを浴びせられながら0-0のドローに持ち込み、さらに同第2節のブラジル代表戦でもVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)に助けられた場面はあったが、最後まで集中した守りを見せ、スコアレスドローで試合を締めている。2試合で勝ち点2の無失点は、決して悪くはない成績だ。

 迎えたグループリーグ最終節、ボリビア代表戦。ベネズエラは勝利すれば他会場の結果次第で決勝トーナメント進出が決まることになっていた。反対に敗れればその時点でノックアウトステージへの進出は不可能となる。2大会連続でのベスト8入りへ、チームはかなりの意気込みを持ってこの一戦に臨んだことだろう。

 ベネズエラはこの日、ブラジル戦と同じく4-1-4-1のフォーメーションを採用。最前線にはニューカッスルに所属するサロモン・ロンドンを置き、2列目は左からダルウィン・マチス、トマス・リンコン、フアン・パブロ・アニョル、ジェフェルソン・サバリーノという並びになった。最も重要となるアンカーはブラジル戦と同じくフニオール・モレノが担うことになっている。

 試合は立ち上がりからベネズエラがボールを保持する展開に。2列目のアニョルやリンコンらは最終ラインから縦パスを引き出そうとスペースを見つけて動き出し、それに合わせてサイドの選手が高い位置を取って相手のマークを引き付けるなど連動した組み立てが前半の早い段階からしっかりと発揮できていた。

 そして、その良い流れを切らさずにベネズエラはさっそく1点を奪う。1分、CBジョン・チャンセジョルから縦パスを引き出したサバリーノがサイドバックのロナルド・エルナンデスへパス。ボールを受けた同選手は右足でふわりとしたクロスを送ると、これをファーサイドでマチスが合わせ豪快にゴールネットを揺らした。

再び露呈したボリビアの弱点

 幸先よく1点を奪取したベネズエラは、その後も試合のペースを握る。ボールを奪われても素早く切り替え前線からプレスをかけにいき、ボリビアに余裕を与えない。最終ラインをコンパクトに保ったことで大きなスペースも作らせず、攻守両面で優位に立っていた。

 一方ボリビアは次第にボールを持つ時間を増やしていったが、それは持っていたと言うより持たされていた、といった表現が正しいだろう。攻撃のクオリティは低く、得点の可能性はあまり感じられず。ポストに弾かれた惜しいシーンがあったのは事実だが、そのほとんどがペナルティエリア外からのシュートであり、大きな決定機とは言い難かった。

 そして守備時には弱点を露呈させた。ボリビアは単純な地上戦での守りではおおむね強さを発揮できるのだが、何よりクロスボールに対する対応が緩い。初戦のブラジル戦、ペルー戦と2試合連続でサイドからクロスボールを上げられ失点しているなど、そのあたりの脆さは明らかだった。

 そしてこの日も、クロスボールからマチスにヘディング弾を献上している。さらに54分には右サイドで起点を作られ、あっという間に反対サイドへの展開を許す。最終ラインのスライド、ボランチの戻りが遅れたボリビアはベネズエラのマチスにフリーでボールを持たせてしまい、DFと1対1という状況に。だがマチスの鋭いドリブルに反応しきれなかったDFは中央への侵入を許し、ファーサイドにシュートを放たれ追加点を献上している。

 このように、ボリビアはサイドで崩された際の対応に問題を抱えていた。理由としてはSBとCBのポジショニングが曖昧なところにある。ボリビアの守備陣はサイドでボールを保持された際、ほとんどの選手がボールウォッチャーになってしまうため、ポジショニングがバラバラ。SBとCB、CBとCBの間のスペースも埋め切れておらず、人に対するマークの確認もかなり甘い。先制ゴールの場面でも、ディエゴ・ベハラノがボール方向ばかり気にし、背後から中へ入ってくるマチスの存在にまったく気づくことができていなかった。

 ブラジル戦、そしてペルー戦で露呈した弱点を、ボリビアは見事に突かれてしまった形だ。

3得点奪取は必然

ベネズエラ代表
3-1で勝利したベネズエラ代表は2大会連続で決勝T進出を果たす。8年ぶりのベスト4進出はあるか?【写真:Getty Images】

 後半立ち上がりに2-0とリードを広げることに成功したベネズエラは、落ち着きを持って時間を進める。ボリビアの反撃に耐える時間があったのも事実だが、DF陣は粘り強く集中した対応を光らせ、ボリビアの猛攻を凌いでいた。

 82分にレオネル・フスティニアーノに1点を返されるものの、その4分後には再びボリビアの弱点を見事に突いた。86分、途中出場のジェフェルソン・ソテルドが左サイドでボールをキープし、縦に仕掛けクロスを上げると、同じく途中出場のホセフ・マルティネスが頭でファーサイドへ流し込み3点目を奪った。

 このシーンはJ・マルティネスの動き出しで勝負あったと言えるだろう。ソテルドが仕掛けた瞬間、背番号17はベハラノ、アドリアン・フシノの間のスペースへ流れ込む。その動きに気付かなかったフシノは簡単に侵入を許し、フリーでシュートを許してしまう結果となった。

 結果、試合はこのまま3-1で終了。ボリビアの弱点をこれでもかと突いたベネズエラが3得点を奪ったのは必然と言えたのかもしれない。

 そしてベネズエラに試合後、嬉しいニュースが飛び込んできた。同時刻にキックオフされていたグループリーグA組のもう一試合、ブラジル対ペルーの一戦は5-0で開催国が勝利を収めたため、ベネズエラはペルーを上回って2位に浮上。この瞬間、決勝トーナメント行きの切符を掴んだのである。

 準々決勝では、グループリーグB組2位の国と対戦することが決まっている。パラグアイ、カタール、アルゼンチンのどこと当たるかはわからないが、3試合で1失点という堅守を生かして2011年大会以来となるベスト4進出を果たしたいところ。一つ言えるのはすでにダークホースの気配を感じさせていることだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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