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メッシが“悪者”で終わった南米の祭典。ブラジルは真の勝者、メディアが作り出したピッチ外の敵意【コパ・アメリカ】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

標的はVARに。確かに課題山積だったが…

VAR
コパ・アメリカでは初めての導入となったVAR。運用にあたって数多の批判が噴出した【写真:Getty Images】

 いや、よく考えればコパ・アメリカには1993年大会から毎回招待国が参加していたし、日本も1999年大会に出場したことがある。何を今更…という感じもあるので、もしベリッソ監督がそこまで深く考えずに話していたとしたら、邪推にはなるが、南米メディアが監督たちをスケープゴートにして自分たちの主張を広めようとしていたのかもしれない。

 この流れにベネズエラ代表のラファエル・ドゥダメル監督も続き、「コパ・アメリカは南米の国々だけで行うべきだ。U-23の選手が中心の日本代表の参加はよく思わない。彼らは我々の大会への敬意を欠いている」と語ったことで、ここぞとばかりに南米メディアは燃え上がった。

 ドゥダメル監督の発言があった翌日、グループリーグ最終戦に向けた記者会見で、日本とエクアドルの両監督に何度か「アジアの招待国排除」についての質問が、森保監督にぶつけられた。いずれも南米の記者からの質問だったと記憶している。

 冷静な日本の指揮官は「我々がやるべきことをやるだけだと思っています」とかわした。エクアドルのエルナン・ダリオ・ゴメス監督も「日本やカタールが出場していることについては問題ない。いいことだと思う」と招待国への敬意を口にした。

 結局、この騒動は日本とカタールがグループリーグ敗退で大会を去ったことによって終息していく。そして、次に“悪者”となったのは「VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)」だった。そこかしこで選手や監督がVARについてコメントを求められ、その度に論争が巻き起こる。

 コパ・アメリカで初めて導入されたVARは、とにかく使用基準における課題が様々な場面で噴出した。記者席から試合を見ている限りでは、ピッチ上の審判たちがVARに頼りすぎているのではないかと感じられるほどに、あらゆる場面で展開が「遅れる」のである。

 ゴールが決まれば主審は逐一VARに確認し、少しでも怪しければピッチ脇のモニターでビデオを確認しにいく。単にVARの助言を受ける基準を間違えているの可能性もわずかに考えられるが、あるいは判定ミスを恐れているのか、自信を失っているのか、主審は時に自らの判定への確信を失っているようにも見えた。

 度々話題にはなりながらも、「VAR」への批判が一層強まったのは、ブラジル対アルゼンチンの準決勝からだった。事実上の決勝とまで言われた全世界注目の一戦で、今度はVARが「使われなかった」部分が大きな議論を呼んだ。アルゼンチンが2度にわたってPKをアピールした場面で、際どいプレーながらVARによるレビューが行われることはかった。

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