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メッシが“悪者”で終わった南米の祭典。ブラジルは真の勝者、メディアが作り出したピッチ外の敵意【コパ・アメリカ】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

メッシの怒り。大きすぎる代償

リオネル・メッシ
リオネル・メッシ(手前)とガリー・メデル(中央)は小競り合いを起こし2人揃って一発退場に【写真:Getty Images】

 特に71分の場面では、セルヒオ・アグエロが敵陣ペナルティエリア内で倒されたように見えたものの、笛はならず。直後のカウンターでブラジルが勝利を決定づける2点目を奪った。試合後にはリオネル・メッシらアルゼンチンの選手たちが、「彼らは僕らにVARは5人目の審判だと言った。でも、今日のようなことが起こった時、僕の思ったようにはならない」とビデオレビューを行わなかった審判団を公然と批判する。

 さらに3位決定戦のアルゼンチン対チリで、メッシは37分のプレーによってチリの主将ガリー・メデルとともに一発退場を命じられる。ライン際の攻防でボールが外に出た後、メッシに突き飛ばされたメデルが怒って小競り合いに。とても一発退場になるようなプレーではなく、にらみ合って胸を4度ぶつけ合った場面を加味してもイエローカードが妥当かに思われたが、両キャプテンにはレッドカードが提示された。

 こうした一発レッドカードが妥当かを判断する場面で、VARはまたも使われず。主審は毅然と2人に退場を命じた。メッシはこれに抗議の意思を示すため、表彰式に現れず、メダルの受け取りも拒否。そしてメディアの前で「今大会は僕らへの敬意を欠いている」と怒りを爆発させた。

「あれはイエローカードで全てが済んだはずだ。汚職と審判がサッカーを楽しむことを許さなかった。試合を台無しにした」

 表彰式に参加しなかったことについても「この大会を通して続く腐敗の一部になることはないと考えた」ときっぱり。CONMEBOLや審判団を痛烈に批判したのである。穿った見方にはなるが、メッシは準決勝での出来事も踏まえ、ブラジルが優勝するための道が作られていると主張したかったのかもしれない。

 しかし、傷心のメッシに寄り添う者は、抗議文を提出したアルゼンチンサッカー連盟をはじめとした母国サッカー界以外にいなかった。CONMEBOLは公式に声明を発表し、アルゼンチンやメッシに直接の言及を避けながら「サッカーでは勝つことも負けることもあるが、誠実さと敬意を持って結果を受け入れることはフェアプレーの根本だ。同じことは審判の決定にも言える。(審判への批判は)事実無根であり、競争相手や全ての参加選手たちへの敬意を欠くこと」と審判に対する批判を強烈に非難した。

 そのうえメッシにはチリ戦でのレッドカード退場に加え、「審判批判」による長期の出場停止処分が検討されているとも報じられている。あまりにも手厳しい、まるで“悪者”扱いだ。ところが先述の通りメッシに同情する声はほとんど聞かれない。

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