「うん、なるほど」元日本代表DFも感興。サッカーが取り入れるべきデータ活用法【岩政大樹×統計家・西内啓 特別対談(後編)】

近年、欧州ではデータによりプレーが可視化され再現性を追求する流れが加速しているが、日本ではまだまだ発展途上の領域である、統計学とサッカー。それぞれの第一線に立つ二人が、日本サッカーにも到来するであろう近未来を語り合った8/6発売『フットボール批評 isuue25』から、一部を抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(司会・構成:清水英斗)

2019年08月06日(Tue)10時10分配信

text by 清水英斗 photo Yasuhiro Suzuki
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今のデータには自分しか入っていない

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岩政大樹
元日本代表の岩政大樹氏(左)と統計家の西内啓氏(右)【写真:鈴木康浩】

岩政 僕は色々なところで言っていますが、今のデータは自分しか入っていないじゃないですか。相手の立ち位置とか、スピードや角度への対応がデータに出ないなと。

 たとえば、「守備はボールを持った相手とゴールの線上に立ちなさい」と言うじゃないですか。ということは、攻撃側はその原則を外すように立てばいいわけですよね? たとえばボールを受けた瞬間、ゴールとの線上に敵がいるかいないか、みたいなところは取れますよね?

西内 取れます。それは面白いポイントですね。

岩政 逆に守備側は、それを防ぐポジションを取れているかどうか。当然、戦術によって変わる部分はありますけど、ゴールに近づけば近づくほど、その原則は変わらないと思います。

 高い位置の場合は、誘い込みで縦を切ったりとか、内から行くとか、変わってくるかもしれませんが、少なくともDFやMFは、何か計れそうな気がします。逆に攻撃だったら、FWやMFも同じように。

西内 データスタジアムに伝えたら、すぐに集計してくれますよ。あとは攻撃的な選手なら、吸引力みたいな、何人マークを引きつけたか、というのもできると思いますね。

岩政 なるほど。自分の周辺に。

西内 そうそう。それは警戒されるような危険なプレーをやって、その結果、周りにマークが増えたということ。少なくとも2人分はフリーになれるので、そうすると一気にチャンスにつながる。

岩政 あー。なるほど確かに。逆に言えば、どういうデータが欲しいのか、指定しなきゃいけないってことですね。一時期、ドイツがボールを持つ時間を計っていましたよね。平均1秒切ったとか。プレーモデルと合わせてなんでしょうけど、データで取れる時代になってきたわけですよね。ちょっと前には、もっと大雑把なデータだったと思いますけど。

MLBが取り入れたデータ活用法

西内 選手の位置が取れるようになった、というのが大きな変化ですね。それまでは画面を見て、「今パスだっ!」と人間が入力していましたから。

 位置情報が取れたことで、野球の場合、何が起こったかというと、ピッツバーグ・パイレーツというチームで、守備が崩壊して、点を取られてヤバい時期がありました。そのとき実践したのが、キャッチングが上手くて、平凡なピッチャーのストライク率を高められるキャッチャーを見つけ出すこと。

 良いピッチャーは高くて獲れないけど、こいつと組むと、なぜかストライク率が上がるというキャッチャーを見つける。そうしたら、普通のピッチャーでも活躍できるようになったと。

 もう一つは守備です。いわゆるバットコントロールでボールを落とすエリアを狙うって、実はほとんどの選手ができていなくて、この選手が打ったときには、どこのあたりに落ちるか、確率的に捉えた方がいいという考え方がされるようになってきました。それが明確に分かれば、明らかなシフトを引く。それで守備が良くなったと。

 これはサッカーも同じです。相手が右サイドでクロスを上げる得点パターンしかないと分かったら、そこを重点的にケアする。そもそも右サイドへボールが行きにくくする。

岩政 うん、なるほど。

西内 いざ攻撃のスイッチが入るときって、結局ここが経由ポイント、みたいな選手がいるから、とにかくそこにボールが行かないようにするとか。

(司会・構成:清水英斗)

<プロフィール>
岩政大樹 Daiki Iwamasa

1982 年1月30日生まれ、山口県出身。東京学芸大から鹿島アントラーズに加入し、2007 年からJリーグ3連覇に貢献した。2010 年南アフリカW杯日本代表。13年に鹿島を退団したあとタイのテロ・サーサナ、ファジアーノ岡山、東京ユナイテッドFCを経て18年に現役を引退。現在は解説や執筆を行うかたわら、メルマガ、ライブ配信、イベントを行うなど、多方面に活躍の場を広げている。今年3月には『FOOTBALLINTELLIGENCE 相手を見てサッカーをする』(カンゼン)を上梓した。

西内啓 Hiromu Nishiuchi

1981年、兵庫県生まれ。統計家。東京大学助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長等を経て、多くの企業のデータ分析および分析人材の育成に携わる。著書である『統計学が最強の学問である』は2014年度ビジネス書大賞を受賞しベストセラーに。その他著書多数。2017 年には第10回日本統計学会出版賞を受賞。サッカーへの造詣も深い。2015年からはJリーグとアドバイザー契約を結び、Jリーグが推進する各プロジェクトへの助言や提言を行う立場にある。

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