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鎌田大地、フランクフルトでの立場は?指揮官が押した太鼓判と「もっと上に行く」ための課題

UEFAヨーロッパリーグ(EL)の予選3回戦2ndレグ・アイントラハト・フランクフルト対FCヴァドゥツが現地15日に行われ、1-0でフランクフルトが勝利を収めた。前の試合から9人を入れ替えたため、長谷部誠はベンチ外、鎌田大地は72分から途中出場。3日後に控えたブンデスリーガ開幕戦を前に、ベルギーでの飛躍を経てドイツに戻ってきた鎌田は手応えを感じている。(取材・文:本田千尋【フランクフルト】)

text by 本田千尋 photo by Getty Images

リーグ開幕戦先発が見えてきた鎌田大地

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今季、フランクフルトに復帰した鎌田大地【写真:Getty Images】

 鎌田大地が“可能性”を示している。

 8月15日、陰鬱な雲の間に薄明が見えるコメルツバンク・アレナ――。

 アイントラハト・フランクフルトがホームにFCヴァドゥツを迎えた、UEFAヨーロッパリーグ(EL)の予選3回戦2ndレグ。先発メンバーは、4日前に開催されたDFBポカール1回戦から、GKケヴィン・トラップとFWデヤン・ヨヴェリッチを除く全員が入れ替わった。8日に敵地で行われた1stレグは5-0で大勝しており、かつ今週末の18日にブンデスリーガの開幕戦を控えているため、アディ・ヒュッター監督はこの試合で「ローテーション」を行うことを示唆していたのである。

 ポカールのヴァルドホフ・マンハイム戦で先発し、1ゴールを決めた鎌田もベンチスタート。同様にヴァルドホフ戦で先発した長谷部誠はメンバー外になった。ELの予選が始まった7月下旬から出ずっぱりだったリベロには、このタイミングでお休みが与えられた、ということだろう。

 よって、このELヴァドゥツ戦の2ndレグで先発から外れたということは、ブンデス開幕戦で先発する可能性が高いということだ。もちろん鎌田が「日曜日に出られると決まったわけではないです」と話すように、確実なことはオーストリア人指揮官の頭の中だけにある。だが、長谷部はもちろんのこと、プレシーズンを通してヒュッター監督に評価されてきたことを考えれば、鎌田もTSGホッフェンハイムとの開幕戦で先発して何らおかしくはない。

「僕に対する周りの見方が変わった」

 昨季、ベルギー1部のシント=トロイデンに期限付きで移籍した鎌田。武者修行を終え、フランクフルトに戻ってくると、周囲の見る目が明らかに変わったという。

「ゴール前の部分だったり攻撃の部分は、僕的にはあんまり、ベルギーに行く前とは変わっていないと思っていて、それ以外の球際の部分だったりキープする部分だったりが、やっぱりベルギーで試合に出て変わったと思います。一番は、やっぱりこう周りの見る目も、向こうで結果を残したことによってすごく変わったなあっていう風には思います」

 どこか飄々とした風貌の日本人MFは、ベルギーの地で公式戦36試合に出場。16ゴール9アシストの結果を残した。時として数字は言葉より多くを物語る、といったところだろうか。

「去年ベルギーで点を取って、僕に対する周りの見方が変わったと感じています。僕自身も1年目の時よりプレー自体も良くなっているので、それをみんなが見て、接し方が変わったなと思います。プレー面でボールがうまく集まってきたり、ミスをしても声の掛けられ方でプラスのことが多かったり。そういうちょっとしたことが変わってきましたね。それはすごくいいことだなと思います」

ポジションは10番か8番。鎌田が語る強み

 レンタル先のシント=トロイデンで結果を出した鎌田に、フランクフルトの選手たちは一目置いているようだ。

「周りから信頼してもらえていると今すごく感じています。こっちのサッカーに慣れてきていると思うし、かなり余裕が出来て、日本でやっていた時とあまり変わらない感覚で出来ている。サッカーもこのチームですごくやりやすくなりましたし、その辺はすごく変わったなと思いますね」

 23歳の日本人選手の成長に、ヒュッター監督も目を見張った。プレシーズンの間に鎌田は、昨季は構想外にされたオーストリア人指揮官から、次のような言葉を掛けられたという。

「攻撃の時は、もう言うことはない。守備の部分だけ向上させれば、もっと上に行ける」

 ヒュッター監督は、鎌田を8番か10番で起用することを考えているそうだ。そして鎌田自身、そのポジションから飛び出して得点に関与していこうとしている。

「僕の良さについて、足元の上手さだったり、色々言う人もいますけど、僕自身は中盤の選手の割には点に絡める、ということが自分の強みだと思います。なので、試合に出た時にアシストだったり得点の結果を上手く残せるようにしていかないとだめだと思うし、そうしていけば、このチームでもポジションを取れると思うので、練習から自分の良さを磨いていかないとだめだと思います」

真価が問われるドイツ2年目の挑戦

 昨季はフランクフルトを率いて、一時はチャンピオンズリーグの出場権圏争いを演じ、ELのベスト4に進出したヒュッター監督が太鼓判を押すのだから、ブンデスを戦う上で鎌田の攻撃面に問題はないのだろう。そして守備の時は「中盤の選手を1枚掴む」といったことをオーストリア人指揮官から言われているそうだが、守備面でハードに戦えるかどうかが、今季の鎌田の成否を左右するのかもしれない。

 ブンデスの開幕戦を前に、鎌田は「個人的にはできると思っている」と言う。

「それを口だけじゃなくて、プレーで証明しなきゃいけないので、今年はすごく大事な年になると思います。今の自分がどれだけできるかはわからないですけど、1年目よりもはるかに余裕も出てきているし、周りからの信頼も掴めてきていると思う。まあ今週、(ホッフェンハイムと)試合をしてみて、どれぐらいできるかが、大事かなと思います」

 17年、サガン鳥栖から完全移籍でフランフルトに加入した直後の「1年目」は、ブンデスで3試合に出場した鎌田。たった3試合かもしれないが、その内2試合は強豪相手のRBライプツィヒ戦とバイヤー・レバークーゼン戦だった。ブンデスのレベルを測る物差しは持っている。あとは実戦の中で手応えを得ることができるか、どうか。

 18日、「日曜日」に控えるホッフェンハイムとの開幕戦は、鎌田にとって今季の行方を占う重要な試金石となりそうだ。

(取材・文:本田千尋【フランクフルト】)

【了】

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