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ユベントス、完勝の要因は? サッリの面目躍如たる攻撃の形、誇示した「経験あるチームの強さ」

チャンピオンズリーグ・グループリーグD組第2節、ユベントス対レバークーゼンが現地時間1日に行われ、3-0でホームチームが勝利を収めている。前半こそレバークーゼンの強度に手を焼いたユベントスであったが、後半はその強さを示して完勝を手に入れた。流れは一体、どこで変わったのだろうか。(取材・文:神尾光臣【トリノ】)

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

「気がついたら0-3で負けていた」(ボシュ監督)

ペーター・ボス
ボシュ監督もユベントスの強さを認めざるを得なかった【写真:Getty Images】

 89分、カウンターから前線のスペースへと抜けたクリスティアーノ・ロナウドの足元に、パウロ・ディバラからの正確なスルーパスが入る。ゴール前に立ちはだかるのはもはやゴールキーパーのみ。正確なシュートを突き刺し、自身チャンピオンズリーグ(CL)通算127ゴールを達成した。

 もっともこの日、絶対的な点取り屋には珍しく、イージーなシュートを2本も外している。そういう経緯があったからか、ゴールの後もC・ロナウドの喜びは控えめだった。しかし、ユベントスにとってネガティブなエピソードといえば、せいぜいそのくらいだったのだろう。

 鮮やかな攻守の切り替えに、きっちり点を取ってくる前線の攻撃力。それに加えて、この日は守備もきっちりと機能していた。「自分たちも良い試合はしていたはずだが、気がついたら0-3で負けていた。それがやっぱり、経験のあるチームの強さだ」と、試合後の記者会見で、レバークーゼンのペテル・ボシュ監督は力の差を認めた。第1節でアトレティコ・マドリーとドロー決着を演じたユーベは、強さを誇示して勝ち点3を得た。

 ボシュ監督の言った通り、前半はレバークーゼンもよく抵抗していた。むしろ、ポゼッションもパスの成功数も、ホームのユベントスよりも実は上回っていたのである。高い位置でしっかりとプレスをかけて、奪ったら左右のオープンスペースへと素早く展開を図る。ユーベにボールを奪われた後はすぐに帰陣を心がけ、相手に攻撃を許さなかった。

 17分に、レバークーゼンのDFヨナタン・ターがボールの処理を誤り、そこを狙ったゴンサロ・イグアインがボールを確保して先制点を決める。しかしレバークーゼンはショックをあまり引きずらずに攻めてくる。チリ代表MFチャルレス・アランギスを中心にチームをまとめ、ユーベに立ちはだかった。

ユベントスが握った主導権

 しかし、崩れなかったのはユベントスも然りだ。フェデリコ・ベルナルデスキを4-3-1-2のトップ下に置くことで、中盤から前線への圧力を高める。サイドのスペースは度々空いたが、故障者続出のため久々にサイドバックとして起用されたファン・クアドラードもよく戻って埋める。きちんと前からプレスが掛かるので、攻撃の限定がしやすくなる。レオナルド・ボヌッチにマタイス・デリフトのセンターバックコンビは、相手の攻撃を前方から積極的に捕まえに行くようなアプローチで相手からボールを奪い続けた。

 前半を終了し、レバークーゼンのボールポゼッション率は58%。しかしその一方でシュートはたったの二本、枠内シュートに至っては全く記録されていなかった。ユベントスが組織的に相手の攻撃を制限していたことの証左だ。

 そして後半、レバークーゼンが前半のようなプレー強度を保てなくなると、一気にユベントスペースとなった。

 前線から勤勉に相手へプレスを掛け、パスを限定させたのちに中盤の3人でボールを絡め取る。そして素早く前線にパスをぶつけ、縦方向でパスを交換。その間にユーベの選手たちは、中盤のMFなども飛び出しを図って、前方のスペースを攻略していくという方向性だ。

 62分のゴールの場面は象徴的だった。中央のイグアインから、左サイドに流れていたロナウドへパスがだされる。ロナウドは中央のスペースに走ったイグアインの動きを把握し、ワンタッチでパスを入れる。ワンツーでボールを受けたイグアインは、スピードに乗ってエリア内を突破した。

 イグアインも、クレバーにゴール前に詰めてきたロナウドの動きを把握し、グラウンダーのボールを折り返した。決定的な場面だったが、ロナウドが合わせられずボールは外に流れてしまう。だがロナウドがDFの注意を自らに引き付けたために、ボールが流れたファーの位置にはぼっかりとスペースができてしまっている。ベルナルデスキがフリーで詰めていた。このボールを受けて、きっちりとシュート。ユーベはリードを広げた。

選手個々も成長しつつある

ユベントス
レバークーゼンに快勝を収めたユベントス【写真:Getty Images】

 これで試合の主導権を掌握したユーベは、相手を凌駕する攻撃を繰り出し続けて勝利をもぎ取った。前半では譲り気味だったボールポゼッションも、55%対45%と実は逆転もしている。リードしてもただ後ろに引くのではなく、攻める姿勢を明確にして追加点を奪った。

 そのあたりは、攻撃的なサッカーを志向するマウリツィオ・サッリ監督の面目躍如か。ただ、ナポリのようにショートパスをつなぎ倒していくサッカーを新天地で当てはめているわけではないというのも興味深い。「ナポリの時代はああいう選手がいたからこうせざるを得なかった」と地元メディアに漏らしていたが、ここでは多少違うスタイルが培われているようだ。相手が攻撃的に向かってきてもそれを耐え、趨勢を戻して手堅く結果を得るという、このクラブの伝統的なキャラクターの上に攻撃サッカーを構築しているような印象を受けた。

 選手個々も、それぞれ成長しつつある。右サイドバックとしての起用には不安の声もあったクアドラードも、特に後半はしっかりと戻ってスペースをよく埋めていた。新天地でのデビュー当初はおぼつかない面もあったデリフトも、堂々としたプレーで攻守両面に機能していた。

 そしてイグアインである。もともとサッリ監督とはナポリ時代に邂逅を果たし、ユーベ復帰後は戦術的に動いて味方を助けるシーンが多いのだ。味方の上がりを待つボールキープや、左右に流れてチャンスメイクを行う動きには、戦術を知り尽くしているものとしての安定感が感じられた。

「簡単な試合ではなかったが、後半に良いところが出た」とサッリ監督は地元メディア相手に試合を振り返った。堅実に勝ち点3を積み上げ、ロコモティブ・モスクワとの2連戦を見据える。

(取材・文:神尾光臣【トリノ】)

【了】

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