冨安健洋はやはりすごい。イタリア在住記者が舌を巻く希有な能力とは? セリエAで見せる上々の反響

セリエA第7節、ボローニャ対ラツィオが現地時間6日に行われた。この試合は2-2の引き分けに終わったが、右サイドバックで先発したDF冨安健洋は前節よりも改善されたパフォーマンスを見せた。移籍1年目にして弱冠20歳の冨安がここまでの7試合で披露したプレーにイタリア在住記者は舌を巻いた。(取材・文:神尾光臣【ボローニャ】)

2019年10月08日(Tue)10時20分配信

text by 神尾光臣 photo Getty Images
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あわやシュートというプレーも

冨安健洋
ラツィオ戦でも先発フル出場を果たしたDF冨安健洋【写真:Getty Images】

 攻守が激しく入れ替わり、前半だけで4ゴール。警告は全部で9、退場者も各チームに一人ずつ出た。第2戦のSPAL戦以来5戦ぶりにベンチに座ったシニシャ・ミハイロビッチ監督の闘志に引っ張られるボローニャと、ヨーロッパリーグ(EL)・レンヌ戦から中2日の試合でほぼベストメンバーを送り込み勝利への執念を見せたラツィオとの試合は、文字通りの死闘だった。

 その中で、冨安健洋も闘った。百戦錬磨の左ウイングバックや個人技に優れたMFを抱え、強烈なプレスからの速攻を磨き上げたチームに対し、彼自身も戦う姿勢をプレーに表現していた。冷静に状況を判断しながら的確にパスを出し、大胆なフェイントでプレスをかわし、たとえ単独であっても相手を抜いて前に出た。

 ところどころ荒削りでもあったが、プレーの多くは効果的。格上のチームや国際試合の経験値が違う相手にも怖じけず勝負を仕掛け、90分間を通して勝ちに行く意思を見せた。

「次も本来のポジションではない右サイドバックとして出るが、ウディネーゼ戦では疲れからか動きが重そうに見えた」

 5日付のコリエレ・デッロ・スポルトでは冨安のスタメンの予想とともに、疲労の蓄積も指摘されていた。ローマ戦以降1分2敗というチーム成績も相まって、冨安に対する評価には芳しくないものもあった。

 しかし、この日は前半から積極的に行った。9分、右サイドからマティアス・スバンベリとワンツーをかわしてポジションを上げると、リッカルド・オルソリーニからのリターンを受けて深い位置に走り込み、グラウンダーでクロスを上げる。その直後には一気にゴール前まで駆け上がると、そのままスルーパスを受け、あわやシュートかというポジショニングまで取っていた。

ラツィオの強力攻撃陣にも怯まず

 SPAL戦で見せていた、アグレッシブな姿勢が戻った。ディフェンスラインの統率に長ける35歳のベテランDFダニーロの復帰により、安心できる状況になったのか。それとも3バックシステムを使うラツィオのために、戦術を細かく修正したのか、多分その両方だろう。

 ともかくこの日は、アウトサイドの選手に余裕をもってスイッチすることができるようになっていた。ローマ戦やウディネーゼ戦とは違い、この日は対面のウイングバックにつき遅れるということはなくなっていた。

 良いの流れの中で、チームは前半20分に先制。しかし26分、冨安がセナド・ルリッチを止められなかったことが原因で崩され、同点とされた。ガリー・メデルが付いたところに、自らも体を寄せてボールを奪いに掛かる。ところが、かっさらったつもりがボールはルリッチの足に当たってしまう。そのこぼれ球を拾ったルリッチは中へと切り込み、前線で狡猾にマークから逃れていたチーロ・インモービレにパス。シュートを決められてしまった。

 ルリッチにプレスを掛けた時、ミスなくボールを奪いきらなければならなかったのは確かだ。ただそれも、積極的に前に出てボールを奪おうとした結果のものだ。それに後ろには、ダニーロをはじめとし人数が揃っていたからチャレンジができる状態ではあった。むしろ狡猾にこぼれ球を拾ってドリブルで運んだルリッチと、シュートコースがないところを決めきったインモービレを褒めるべき場面だった。

 だが冨安は、そこで怯むことはなかった。ラツィオの攻撃陣がかけてくるフォアプレスを、大胆にもフェイントで外し、そこから前線の味方へ縦パスを出す。時には2、3枚先のロドリゴ・パラシオの足元に強いパスを通すこともあった。

次節は代表戦後にユベントス。どのようなプレーを見せるか

 2-2となった後半からは、よりプレーはアグレッシブになる。オルソリーニやスバンベリと細かくパスを交換して前に出たと思えば、攻守が入れ替わった途端に高い位置からボールを奪いに行く。相手がカウンターに移行した場合は、ストライドの大きいランニングで一気にスピードを上げ、相手ゴール前から戻って足の速いラツィオの攻撃陣に追いつくなどという真似も見せていた。

 後半はルリッチを抑え込み、突破をさせないだけでなく空中戦で右クロスも触らせない。プレスに掛けられそうなところでも単独で相手をかわし、自力で守備から攻撃へと切り替えていた。おまけに終盤には、ハーフウェーライン付近でボールをインターセプトした後でドリブル突破を敢行し、左足のミドルシュートを狙うなどという芸当まで見せている。

 ところどころミスもあったし、中にはガリー・メデルやGKウカシュ・スコルプスキらのフォローに救われたものもあった。だが若干20歳ということを考えれば、ここまで戦えるのはやはり大したものだろう。

 とりわけ、足元にボールを確保した際には、人数が足りなかろうが自ら責任を持って局面を打破しようという姿勢が光った。冨安はこの日4つのファウルを受けているが、実は両チーム合わせて最多の数字だ。繊細な技術を用いて、積極的に仕掛けようとしていたことの現れである。

 日本人選手の多くは良くも悪くも、数的優位の状況を作ってサッカーをすることが重要視される環境で育った。ただ欧州のサッカーではそれが許されない局面が多々あり、その中で踏ん張って単独で状況打開を図る選手は少ない。そこを怯まず挑むガッツは稀有なもので、冨安の能力の源泉と呼べるものなのかもしれない。

 ここまで7戦、冨安が見せてきたインパクトは上々のものだった。次節は、インテルを破って首位に立ったユベントスとの対戦。日本代表の試合から戻って間もない試合でコンディション面では厳しいことが予想されるが、どこまでやれるのか楽しみだ。

(取材・文:神尾光臣【ボローニャ】)

【了】

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