AZ菅原由勢、サイドハーフで見せた「観察力」。PSV堂安律との日本人対決が明暗を分けた理由とは?

エールディビジ第11節、PSV対AZが現地27日に行われ、0-4でアウェーチームが大勝した。前半で2点を失ったPSVの堂安律は前半で退き、AZの菅原由勢は67分までプレー。今季は欧州の舞台でもプレーする2人の日本人選手だが、この試合では大きく明暗を分けることとなった。(取材・文:本田千尋【アムステルダム】)

2019年10月28日(Mon)10時52分配信

text by 本田千尋 photo Getty Images
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PSV戦も気負いはなし

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PSV戦に先発したAZの菅原由勢【写真:Getty Images】

 チーズ市で知られる北部の小さな街にやってきて、早4ヶ月――。菅原由勢は、オランダで充実の時を過ごしているようだ。

 「普段の生活も楽しめていますね。電車に乗ってどこかに行ったりして、すごく楽しめています。街並みもいいですし、本当に人も優しい。そういったことも自分がサッカーに集中できる1つの理由かと思います」

 10月27日に行われたエールディビジ第11節。菅原は、AZアルクマールの一員として強豪PSVとのアウェイゲームに臨んだ。もっとも、7月に名古屋グランパスから1年間の期限付きで加入した日本人DFは、「僕自身は相手の名前を気にせず試合をするタイプ」なのだという。オランダ3強の一角との試合にも、変な気負いはなかったようだ。しかしそのスタンスは、体の奥から沸き起こる闘争心まで否定しない。

「アヤックス、フェイエノールト、PSVは、僕たちの立場からすると戦って勝たなきゃいけない相手だということは、このチームに入るにあたって何回も言われていて。年にホームとアウェイ合わせて6回あるビッグマッチのうちの1つだと思うので、ビッグマッチとなればモチベーションもめちゃくちゃ上がりますし、本当に相手が誰であろうと倒す気持ちでいくので、それが結果に繋がって良かったと思います」

慣れない1列前でのプレー。「試合に出れるんだったらどこでもいい」

 PSV戦で菅原は、[4-2-3-1]の右サイドハーフで先発。ウインガーというよりは、サイドバック(SB)が高い位置を取っているような格好だ。個人で仕掛けるのではなく、味方とのコンビネーションで相手を崩そうとした。

 「ウチのチームでは、SBとウイングはそんなに大きく変わらないと思っていて、もし僕がインサイドに入れば、SBが高い位置を取ったりしますし、僕がサイドに張れば、サイドバックの選手が、ボランチぐらいのところまで高い位置を取るので、そういったところで自然にポジショニングの変化を付けることができる、すごくいいサッカーができていると思いますね」

 加入した当時に菅原は、アルネ・スロット監督から「もしかしたらそういうところ(右サイドの高い位置)でも使うかもしれない」という話をされたという。19歳のポリバレントな日本人選手は「試合に出れるんだったらどこでもいいです」と伝えた。そしてオランダにやってきて、SBだけでなく1列前のポジションもこなすことで、「成長」を実感するところがある。

「相手のSBの動きを見ながら攻撃に変化を付けることができるようになったことに関しては、成長できていると思っています。今日の試合で言えば、対面する左SBが、僕にプレッシャーをすごく掛けてくるにもかかわらず、自分に対して1メートルくらいのスペースを開けてくれていた。なおかつ前重心で後ろには弱いなと思った上で、何回もワンツーで背後を突けました。僕自身相手を観察しながらサッカーをできるようになっていることは、成長しているところだと思うので、そこはポジティブですね」

プラン通りに進まなかったPSV

 ドニエル・マレン、ステフェン・ベルフワイン、モハメド・イハッターレンという攻撃の核3枚が負傷でメンバーから外れ、さらに前半に退場者を出して1人少なくなったPSVに対して、AZは全くと言っていいほどサッカーをさせなかった。ボールを支配し、カウンターを許さない。

 試合後、先発したが前半だけでピッチを退いた堂安律は、次のように振り返った。

「今日の敵に対して1人少なくなると厳しくなりますし、ボールを持ってくる相手だということはわかっていたので、プラス、カウンターを特徴としている選手がいない、2人、3人抜けている中で…全てプラン外でプラン通りに進まなかったです」

 菅原は、前半は敵のマークに苦しんだが、後半に入ると、右サイドの高い位置で綺麗な「ワンツー」を見せてチャンスを演出した。

「前半、1人退場になってから、相手の守備の仕方を観察していて、7番の選手(ブルマ)かな、すごく僕の方をケアして下がってきていて、非常にやりづらいなあと思っていたんですけど、後半、敵のメンバーが変わると、割と僕自身浮くことが多かった。ここでチャンスを作れるな、ということは後半早々に感じていて、上手くボールも呼び込むこともできて、右サイドから何回かチャンスを作りましたし、いい関係性でゴール前まで近づくことができた。1つ攻撃の形として、いい形を何回か作れたのでアピールになったんじゃないかなと思います」

チーム内の「良い競争」でAZは2位に浮上

 菅原は67分に交代。相手が飛車角落ちだったとはいえ、強豪PSV相手に堂々たるプレーを見せた。定位置を確保するため、「アピールになった」と言えるだろう。

 AZはPSV相手に4発快勝。首位アヤックスに次ぐ2位に上がった。このまま行けば、来季もヨーロッパの舞台に参戦できる順位だ。しかし、菅原は「1戦1戦」を強調する。

 「本当に1戦1戦チームは戦っている実感があるので、来季ということではなくて、1戦1戦にフォーカスしてやれていますし、もちろんヨーロッパリーグがあってすごく多忙な日々ですけど、チームは本当に雰囲気も良くて、いい競争ができているので、それがピッチの上で表現できていると思います。今日で言えば、僕と代わった選手(ダニ・デヴィト)が点を決めたりしましたけど、すごくそういう良い競争ができていると思うので、それが今のチームが波に乗っている証拠だと思います」

 1試合1試合の結果がのちのちの大きな結果に繋がってくる、そう菅原は考えている。その言葉どおり、「1戦1戦」を大事に、貪欲に戦っていけば、次の未来が開けてくるはずだ。

(取材・文:本田千尋【アムステルダム】)

【了】

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