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ザルツブルクは南野拓実交代で劣勢に…。局面では優ったナポリが1得点に終わった理由とは?

UEFAチャンピオンズリーググループリーグE組第4節のナポリ対ザルツブルクが現地時間5日に行われた。2週間前のリターンマッチとなったこの試合は、1-1のドローに終わっている。試合の主導権を握ったナポリは、30本のシュートを放ちながらも得点はわずかに1点のみ。試合の展開と結果は、なぜ一致しなかったのだろうか。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

国内で苦戦するナポリと準備万端のザルツブルク

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ナポリ戦に臨むザルツブルク【写真:Getty Images】

 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)グループリーグは前半3試合を終えた。リバプール、ナポリ、ザルツブルク、ヘンクが同居するグループEは、戦前の予想通りの2強が順位表の上を占める。ただ、想定外に2強を苦しめているのがザルツブルクである。

 25年ぶりにCLの舞台を戦うオーストリア王者は、CLを見据えた選手起用を敢行してきた。土曜日のリーグ戦、マッテルスブルク戦では、FWファン・ヒチャンと、FWアーリング・ハーランドが45分ずつ出場。MF南野拓実も69分に退いて、来たるCLに向けてタイムシェアをしてきた。

 2勝1分でグループ首位に立つナポリだが、セリエAの舞台では3試合勝ちがない状況だ。この試合の前日会見では、カルロ・アンチェロッティ監督は「我々には一貫性が欠けている」と語り、直近のローマ戦での敗戦については、「インテンシティが低すぎた」と振り返っている。

 10月23日に行われたザルツブルク対ナポリは、3-2でナポリが勝利している。しかし、勇猛果敢にプレスをかけて攻め込むザルツブルクは、相手の脅威になっていた。要所で得点をあげたナポリに軍配が上がったが、互角といっても差し支えない内容だった。

 2週間前のリターンマッチとなったこの対決は、1-1のドローに終わった。結果としてはこの試合も互角と言えるが、2試合の戦いは大きく異なる。布陣を変更したザルツブルクに対して、ナポリは「一貫」して弱点を突き、高い「インテンシティ」を保ち続けた。

5バックで挑むザルツブルクに対するナポリの狙い

 ここまで3戦は4バックで戦ってきたザルツブルクだったが、この試合ではリーグ戦で併用してきた3(5)バックを採用。5-3-2で、南野は右インサイドハーフをスタートポジションとして、攻撃時はトップ下の位置のように振る舞い、守備時はMFとしてバイタルエリアを埋めるタスクを担った。

 試合はアウェーチームが先制に成功する。10分、ファン・ヒチャンがロングボールを収めると、縦の突破を狙ったところをDFカリドゥ・クリバリの足が引っかかり、PKを獲得。ハーランドが左足でこれを流し込んだ。

 1点を追うナポリは、インシーニェが敵陣でボールを拾うと、FWイルビング・ロサーノへとパス。左サイドよりの位置からカットインしながら右足を振り抜くと、低く鋭いシュートはゴールネットへと吸い込まれる。43分にナポリがスコアを振り出しに戻した。

 ナポリのチャンスパターンは主に2つ。1つはハイラインを敷くザルツブルクの裏を突き、シュートにつなげる。試合開始早々に、ロサーノが抜け出したところをDFオンゲネが倒してしまい、イエローカードが与えられている。

 もう1つは、敵陣で奪ったときと、ボールを持って敵陣へと侵入したとき。5-3のブロックを敷くザルツブルクはバイタルエリアにスペースが生まれやすい。ナポリはミドルレンジから積極的に狙うが、得点には至らなかった。

布陣変更に対応するナポリ

 ハーフタイムに両チームは交代カードを切る。ザルツブルクはMFエノク・ムウェプを投入し、南野がトップ下の4-4-2へと布陣を変更。ナポリはDFマリオ・ルイを下げてDFセバスティアーノ・ルペルトを入れた。

 ザルツブルクは中盤の枚数が増えたことで、バイタルエリアの守備は厚さを増したが、DFラインが4枚に減った。ナポリはこれを見逃さず、サイドハーフのMFホセ・マリア・カジェホンとインシーニェを中心に徹底的にサイドを崩しにかかる。

 ナポリは73分にFWドリース・メルテンスを下げてFWミリクを投入。さらに、86分にはロサーノを下げて、FWフェルナンド・ジョレンテを入れて前線に長身FWを並べた。わかりやすくナポリはサイドからクロスを入れる。ボールはFWの頭に合わせられるが、得点には至らなかった。

 南野は61分に交代。攻守のつなぎやくとして他のポジションにも増してハードワークが求められる役回りをこなしたが、得点に結びつく働きをすることはできなかった。

 日本代表MFが下がったザルツブルクは勢いを失った。縦への鋭い攻撃も影を潜め、単発に終わって相手ボールとなる。PKを奪取したシーンをはじめ、縦横無尽に動き回り、相手のDFを翻弄していたファン・ヒチャンも後半はボールに触る回数が減り、PKのみの得点に終わったハーランドも、後半は前線で孤立した。

不調を物語るナポリの決定力不足

 データサイト『WhoScored』によると、対人勝率はナポリが78%と大きく上回った。2週間前の同カードは、41%と相手を下回り、シュート本数も相手の18本を下回る12本だったので、この試合では大きく改善されたことがわかる。

 フィニッシュに至るまでの過程は完璧だった。それでも、ナポリが奪った得点はわずかに1つ。考えられる理由は1つ。フィニッシュの精度を大きく欠いたことだ。

 ナポリがこの試合で放ったシュート数は前半が18本、後半が12本の合計30本にも上る。しかし、ゴールの枠を捉えたのはわずかに5本。フリーの状態でシュートを打たれているので、ザルツブルクの守備が優ったわけではない。ただ単に、ナポリのシュートはことごとく枠外へと逸れていった。

 技術的な部分となると、原因の分析は難しい。3戦未勝利の国内リーグ戦のメンタルを引きずってしまったと言えなくもないだろう。ナポリはその3試合で4得点を挙げているが、うち3得点はミリクがとっている。インシーニェも、カジェホンも、メルテンスもゴールから遠ざかっている。

 アウレリオ・デ・ラウレンティス会長の命を受けて、チームは土曜日のローマ戦後からトレーニングキャンプを張っているそうだ。9日のホーム・ジェノバ戦までキャンプは続くようだが、チームはCLを復調の契機とすることはできなかった。

(文:加藤健一)

【了】

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