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Jリーグ 4年前

FC東京は「なんとか引き分け」をどう捉えたか? 必要な打開策と優勝のシナリオ【週刊Jリーグ通信】

明治安田生命J1リーグ第32節、FC東京対湘南ベルマーレ戦が23日に行われ、1-1のドローに終わった。FC東京は首位でこの試合を迎え、勝てば優勝に大きく近づくはずだったが、前半36分に先制を許すなど、6連敗中の湘南に主導権を握られる苦しい展開。終了間際にDF森重真人の豪快なミドルシュートでなんとか引き分けに持ち込んだ。苦戦の要因の1つは、ここ7試合で8ゴールの得点力。優勝争いが佳境を迎える中、打開策はあるのか?(取材・文:下河原基弘)

シリーズ:週刊Jリーグ通信 text by 下河原基弘 photo by Getty Images

湘南相手になんとか引き分け

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FC東京のFW永井謙佑(左)と長谷川健太監督【写真:Getty Images】

「まあ、どこもそうですから。マリノスも松本と開始2分の先制点からスコアが動かない、広島と鹿島も0-0ということで。ここの終盤はどのチームも必死に戦いますので、簡単ではないと思います」。やや欠乏気味の得点について聞かれ、冷静に答えたFC東京・長谷川健太監督。

 ガンバ大阪で3冠を達成している百戦錬磨の指揮官だからこそ、リーグ最終盤の難しさを人一倍分かっているのだろう。「ホーム最終戦というところもだんだん増えて、順位関係なく気持ちの入った試合を、どのチームもしていくと思いますので。次は浦和ですけど、そういう試合になるのかなと思います」と、自らに言い聞かせるように話した。

 試合開始直後は、高い個人能力と組織力で東京が一方的に攻めた。さすが首位チームという入りだったが、残留に向け必死に戦う湘南ベルマーレの勢いに徐々にのまれていく。前半36分には中盤のミスから先制点を許すなど、守勢に回った。

 後半は修正し攻勢に出る時間も増えたが、なかなか得点は決まらない。どうにか後半49分にDF森重真人の起死回生のミドルシュートで追いついたが、会心のゲームには程遠い印象。「なんとか引き分けてよかったなとは思っています」という長谷川監督の言葉がゲームを象徴していた。

 久々のホームゲームに気持ちが空回りした部分もあるだろう。11月中旬に行われた日本代表のキルギス遠征やキリンチャレンジカップに主軸3人が参加し「代表組が若干いつもより疲れていたのは否めないかな」と指揮官が話す通りの出来だったのも痛かった。

「僕かディエゴが取らないと優勝は絶対できない」

 様々な要因があったのは事実だが、終盤に向かうにつれ、やや陰りが見えてきた得点力の低下も見逃せない。終盤に入り一気に勝ち点を伸ばして首位に立った横浜F・マリノスは9月からの7試合で16点を挙げているが、東京は7試合で8得点とちょうど半分だ。

 チームカラーの違いは確かにあるが、決してポジティブな数字ではないだろう。特にエースFWディエゴ・オリヴェイラと日本代表FW永井謙佑の2人は、この間1ゴールずつと得点を伸ばせないでいる。

 湘南の浮嶋敏監督は「素晴らしいスピードを持っている2トップで、逆に言ったら非常に特徴を持っているチーム。それに対してスペースを消して、前に上げてしっかり制御してやった方が勝ち点を取れると考えていました。バックラインの所も非常にしっかりトレーニングをやりましたし、すごくよくやってくれたなと思います」と綿密な対策を練ってきていたことを明かしている。

 FC東京自慢の2トップは今季開幕直後から猛威を振るい、他チームにとっては脅威の存在になっていた。そしてチームも常に上位を走り続けていたことで、当然マークされ研究しつくされた状態だ。自慢の堅守は健在なだけに、ゴールさえ奪えれば、勝利はぐっと近づくはずなのだが、この試合はチームで1点が精いっぱいだった。

「僕かディエゴが取らないと優勝は絶対できないので」と永井が話すように、できれば2トップで得点を奪いたいところだが、次節の浦和レッズも、そして最終節の横浜F・マリノスも簡単にはやらせてくれないだろう。

基本の戦い方は変えず

 この試合、ディエゴ・オリヴェイラがかなり低い位置まで下りてきて、そこから仕掛けて長い距離をドリブルするという場面が散見された。得点力を上げるため、エースをフィニッシュ周りの仕事に専念させる手もあるのではと聞くと、長谷川監督は「まあ、そうですね、それは思いますけど」と一定の理解を示した。

 だが続けて「その分逆に謙佑がずっと高い位置にいる訳ですから。代表FWなんですから、そこは背負って自分がもっと決めるというね」と、快足FWの奮起を促した。

 同じ質問をMF東慶悟にぶつけると「そうですね。それも1つの手だと思います」と話すも、「全部が全部そうではないと思うので。彼はボール触ってリズムに乗るタイプ。もっとボールに触らせてあげたりとか、その辺はまた話し合ってやれればいいと思う」と、それが最適解ではないと話した。

 MF高萩洋次郎が「何か本当に特別なことをしようという気持ちはないので、いつも通り今まで今シーズンやってきたことを意識してやります」と語ったように、これまでの堅守からのファストブレイクが基本線であることは変わらないだろう。

指揮官が「一長一短」と評するサブメンバー

 一方で、湘南戦のように展開によってはどうしても1点(もしくは2点以上)が欲しい場面も来るかもしれない。この試合ではMF三田啓貴、MFユ・インス、FW田川亨介が途中出場し奮闘したが、ゴールやアシストという目に見えた結果は残せなかった。

 このゲームではベンチに入ってはいなかったが、圧倒的な強さと高さを誇るFWジャエル、抜群のドリブルにチームトップクラスの強さと精度を持つシュートが武器のMFナ・サンホという高い能力を持つ選手たちも控える。

 “一発”のある選手たちだけに、途中から試合に入れても面白いのではと問いかけると、長谷川監督は「いないといないでそう思いますけど、使ったら使ったでまったく動かないというのは今までもよくありましたので。サンホもさんざん9月の時期に使いましたから。連続性という部分ではインスは非常に長けた選手だとは思いますので。まあ、一長一短じゃないですか」と返した。

 改善する必要がありそうな選手の距離感や、守備のスイッチを入れるタイミングなどは修正して次節以降に臨むはず。そして、この本来の戦い方で失点をせず、2トップが得点し2連勝して頂点に立つのが最良のシナリオだろう。だが、それだけでは届かない状況も頭に入れておかないといけない。

 堅実な采配で着実に勝ち点を積み上げるスタイルの長谷川監督。今までもここぞという場面で勝負手を打ってきたこともあるだけに、何か策を考えてくるかも知れない。また選手層は厚いだけに、ラッキーボーイが生まれる可能性もある。

 けが人も戻ってきて、選択肢も増えたFC東京。その底力と采配が注目される。

(取材・文:下河原基弘)

【了】

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