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リバプール、破壊力を持つ「DF→DF」の得点。最終ラインが残す驚異のスタッツ、首位独走を止める方法は…

プレミアリーグ第14節、リバプール対ブライトンが現地11月30日に行われ、2-1でリバプールが勝利を収めた。ホームチームが挙げた2点はともにDFトレント・アレクサンダー=アーノルドが蹴ったセットプレーをDFフィルジル・ファン・ダイクが決めたもの。首位を独走するリバプールのDF陣は攻撃面で驚異的な数字を残している。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

2得点は「DFからDF」

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トレント・アレクサンダー=アーノルド(左)、フィルジル・ファン・ダイク(中)、アンドリュー・ロバートソン【写真:Getty Images】

 リバプールはMFファビーニョが累積警告によってこの試合は出場停止。27日のUEFAチャンピオンズリーグ・ナポリ戦で負傷したかじ取り役のブラジル代表が不在の中盤には、MFジョルジニオ・ワイナルドゥム、MFジョーダン・ヘンダーソンに加えて、MFアレックス・オックスレイド=チェンバレンが起用された。

 6得点10アシストは、リバプールのDFが今季残しているスタッツの合計だ。オウンゴールなどを除く個人の合計では30ゴール、22アシストなので、得点の20%とアシストの約45%をDFがマークしていることになる。

 先制点はセットプレーから。中央右寄り30m弱ほどの位置で得たFKをDFトレント・アレクサンダー=アーノルドが蹴ると、ファーで構えるDFフィルジル・ファン・ダイクが競り勝つ。ボールはGKマシュー・ライアンの頭上を越えてゴールネットに吸い込まれた。

 追加点は24分に生まれる。アレクサンダー=アーノルドが左CKを蹴ると、今度はニアサイドに走り込んできたファン・ダイクが頭で合わせて決めた。1点目はアウトスイングをファー、2点目はインスイングをニア。好セーブを見せていたGKマシュー・ライアンだったが、2失点ともノーチャンスだった。

 2点ともにアレクサンダー=アーノルドからファン・ダイク。得点もアシストもDFがマークした。もはや「ディフェンダー」という呼称に違和感を覚える。

2点リードも、終盤に一波乱

 2-0で試合は終盤に突入。リバプールはFWモハメド・サラーとFWロベルト・フィルミーノを下げて試合を終わらせようとする。しかし、このままで終わらないのがフットボールだ。最終ラインのDFダン・バーンが入れたロングボールに、PA外へ飛び出したGKアリソンは手を使ってしまい、一発退場になってしまった。

 リバプールは最後の交代枠を使ってGKアドリアンを投入。すると、ハンドで得たFKは直接ゴールに。壁に指示をしていたアドリアンの隙を突き、がら空きになっていた逆サイドにDFルイス・ダンクが蹴り込んだ。

 キックの直前、マーティン・アトキンソン主審は再開の笛を鳴らしていた。一瞬の隙を突いたブライトンは見事だったが、リバプールからしてみれば、「壁を作っているときに笛を鳴らさないでくれよ」と思っただろう。

 2-0で終わるかと思われた試合は、1点を返され、10人対11人の数的不利となった。攻撃の核となる2人をベンチに下げてしまったリバプールは、最前線にFWディボック・オリギを残して、4-4のブロックを敷いた。

 昨季指揮したスウォンジーでチャンピオンシップ(2部)最多のパス成功数を記録したブラハム・ポッター新監督の下、ブライトンは首位チームに臆することなくボールを繋いでいく。アタッキングサードに攻め込むシーンは何度かあったが、なかなかシュートチャンスへつなげられなかった。

 それでも試合を通じてポジティブなパフォーマンスを見せていたと言っていいだろう。1点を返した後は、10分強で4本のシュートを放ってリバプールゴールに迫った。アディショナルタイムにはバーンを上げてパワープレーに出たが、試合は2-1で首位リバプールが勝利を収めた。

「アシストができる両SB」と「得点ができるCB」

 昨季からここまで、アレクサンダー=アーノルドが残した17アシストと、ファン・ダイクが挙げた7得点は、ともにDFとしてリーグ最多の数字だ。ちなみにアンドリュー・ロバートソンは16アシストで2位。「アシストができる両SB」と「得点ができるCB」が得点パターンのひとつになっている。

 もちろん、相手も対策もしている。サイドバックがボールを持つと素早く寄せるが、リバプールはパスコースが遮られれば迷わず前線にロングパスを送る。するとサディオ・マネやモハメド・サラーはボールを収め、DFをひっくり返してゴールに迫っていく。グーを出せばパー、チョキを出せばグーといった具合に、相手の出方に応じて攻撃を選んでいるようだ。

 DFが起点となって攻撃が開始される。両サイドバックはクロスやフィニッシュにも顔を出す。この試合のようにセットプレーではサイドバックが精度の高いボールを供給し、空中戦ではセンターバックが猛威を振るう。攻撃におけるDFの貢献度には目を見張るものがある。

 今年1月3日のマンチェスター・シティ戦で負けたのを最後に、プレミアリーグで31戦無敗を続けている。特に今季は3点差以上の試合は2試合のみで、1点差勝利は8度を数えている。

 流れの中でゴールできなくても、セットプレーから得点を奪う。初期のクロップ・リバプールは破壊力とともに脆さも持ち合わせていたが、今のリバプールは勝負強さを兼ね備えている。

 グーを出せばパー、チョキを出せばグー。果たしてリバプールを倒す方法はあるのだろうか。

(文:加藤健一)

【了】

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