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アーセナル、許容しがたいベテラン選手のミス。チームを救ったのは指揮官に腹を立てた18歳だった【欧州EL】

UEFAヨーロッパリーグ(EL)第6節、スタンダール・リエージュ対アーセナルが現地12日に行われ、2-2で引き分けた。20歳前後の若手が8人も起用されたこの試合は、2点を先行される苦しい展開に。チームを救ったのは本職とは異なるウイングバックを務めた18歳のFWブカヨ・サカだった。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

アーセナルに解任ブーストはなし

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1得点1アシストをマークしたFWブカヨ・サカ【写真:Getty Images】

 サッカー界には一般的に、「解任ブースト」と呼ばれるものがある。一時的にではあるが、監督交代によって成績が上向くことを指す。しかし、アーセナルにそれはなかった。

 ウナイ・エメリ監督を解任して、フレドリック・ユングベリを暫定監督に据えた。ノリッジにはなんとか追い付いて2-2のドロー、ブライトンには80分に決勝弾を許して敗れた。ウエストハムには先制を許したが3点を奪い、暫定体制3試合目にして初勝利を収めた。

 そして迎えたUEFAヨーロッパリーグ(EL)で、アーセナルはスタンダール・リエージュに引き分け。暫定体制の戦績を1勝1敗2分けとした。

 月曜日に行われたリーグ戦から、アーセナルは9人を入れ替えた。

 前線にはFWアレクサンドル・ラカゼットの背後にMFエミル・スミス・ロウとFWリース・ネルソン。中盤には右からMFエインシュリー・メイトランド=ナイルズ、MFマテオ・ゲンドゥジ、MFジョセフ・ウィロック、FWブカヨ・サカが並ぶ。最終ラインは右からDFコンスタンティノス・マブロパノス、DFソクラティス・パパスタソプーロス、DFダビド・ルイス。EL全試合に先発しているGKエミリアーノ・マルティネスがゴールマウスを守った。

三十路を過ぎた2人の悪癖は直る気配がない

 ディフェンダーの不用意な対応は相変わらずだ。11分に相手GKからロングボールが放たれる。ダビド・ルイスはパスなのか、クリアなのかわからないヘディングで処理。これを拾ったメハディ・カルセラ=ゴンサレスにシュートを打たれる。さらにマブロパノスのクリアも相手に当たって立て続けにシュートを打たれた。

 52分には、ソクラティスが出しどころに困り、左サイドから反対サイドへと運ぶと、パスが相手に引っかかってしまう。彼らの悪癖は一向に直る気配がない。20代前半のマブロパノスのような選手が、ミスから学ぶということはあるかもしれないが、三十路を過ぎた2人に、学ぶためのミスは許容されていない。

 最終ラインが勝手にミスをするので、スタンダールもあまり高い位置からプレスをかけずにボールを持たせ、中盤にボールが入ると激しく寄せた。アーセナルは最前線のラカゼットが収めるが、そこからの連動性に乏しく、攻撃を展開することができない。

 ゴールは47分に生まれる。スタンダールは、エリア外からMFサミュエル・バスティアンがシュートを放つ。これがソクラティスの肘付近に当たってコースが変わり、ゴールに吸い込まれた。

 前述した中途半端なプレーがさらなる失点を呼ぶ。左サイドからのグラウンダーの折り返しに、ウィロックはクリアできずにボールを残してしまう。それを拾ったMFセリム・アマラーが放ったシュートはマブロパノスに当たってゴールに吸い込まれた。

チームを救った18歳

 アーセナルは76分にダビド・ルイスがFKからゴールを狙ったが、それまでの31分間はシュートすら打てず。攻撃は停滞した。

 2点を追うアーセナルは、ソクラティスを下げてFWガブリエウ・マルチネッリを最前線に入れ、4-4-2へとフォーメーションを変えた。さらには右サイドバックのメイトランド=ナイルズを下げてDFカラム・チェンバースを投入。すると、左サイドバックにポジションを下げたサカのクロスに、ラカゼットが頭で合わせて1点を返した。

 さらに、サカが左サイドからカットインすると、マルティネッリからリターンパスを受けて右足を振り抜く。これがゴール隅に決まって、アーセナルは81分に同点に追いついた。

 1得点1アシストを記録したサカは、両チーム最多の5本のシュートと4本のキーパスをマーク。本職とは異なるウイングバックでの起用に、「彼は私に少し腹を立てていたよ」と暫定指揮官は試合前に明かしている。それでもサカは腐ることなく、得意の攻撃面で持ち味を発揮した。

 18歳のサカは昨季、トップチームでデビューしたが、主にU-23チームでプレー。そこで指揮官を務めていたのがユングベリだった。また、ウィロックも試合前の会見で「メンターのような存在だ」と評していた通り、ユングベリは若手選手がプレーしやすい環境を作ることができるかもしれない。

 それでも、ピッチ上における問題は解決されていない。ビルドアップは依然として出口がない。敵陣に入るためには個人技による打開が必要となり、ボールを奪われるリスクをはらんでいる。ボールを奪われればフィルターなき中盤と、ずるずる下がるだけのDFラインによって、簡単にゴール前へと侵入を許してしまう。

 12月の過密日程の中で、ユングベリに修正のための時間はあまり残されていない。限られた時間の中で、何ができて何ができないのか、誰が良くて誰が良くないのか。そういった見極めも重要になってくるだろう。

(文:加藤健一)

【了】

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