マンU対AZ、互角だった戦いはなぜここまでの大差がついたのか。的中した采配、影の立役者は?【欧州EL】

ヨーロッパリーグ(EL)・グループリーグL組第6節、マンチェスター・ユナイテッド対AZが現地時間12日に行われ、4-0でホームチームが勝利を収めた。前半互角だった戦いは、後半に入り急速に動き始めた。その理由と影の立役者とは(文:小澤祐作)

2019年12月13日(Fri)11時45分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
Tags: , , , , , , , , , , , , ,

思わぬ大勝を収めたユナイテッド

マンチェスター・ユナイテッド
マンUはELグループリーグ最終節でAZと対戦し、4-0と大勝【写真:Getty Images】

 前半45分間を終えた時点での感想は「これは今日も互角の戦いになりそうだな」であったが、90分間を終えてみれば4-0と、思わぬ大差がついた試合になった。

 現地時間12日に行われたヨーロッパリーグ(EL)・グループリーグL組の第6節、マンチェスター・ユナイテッド対AZ。お互いに首位通過を目指して挑んだこの一戦は、ホームのユナイテッドが好調さを存分に発揮して大勝を収めることになった。

 ユナイテッドは、2-1で勝利したプレミアリーグ第16節のマンチェスター・シティ戦からメンバーを9人変更。マンチェスターダービーに引き続き先発出場したのはFWアントニー・マルシャルとDFハリー・マグワイアの二人のみであった。

 一方のAZはほぼベストメンバーを揃えてきた。その中でU-22日本代表のDF菅原由勢は右ウィングでの出場。ELではこれが2試合目の先発入りとなった。

 立ち上がりからボールを支配したのはアウェイチーム。選手間の距離をコンパクトに保ってテンポの良いパスを繋ぎ、敵陣に侵入するとサイドにパスを散らして相手の守備陣を揺さぶる。中央から外へ素早く展開することで、ユナイテッドのプレスを的確に回避することができていた。

 その中でファーストシュートがAZに生まれる。放ったのは菅原であった。3分、左サイドでボールを持ったFWウサマ・イドリッシから中央へ絞ってきた菅原へ浮き球のパスが通る。このボールを胸でコントロールした日本人DFは、そのまま身体を反転させボレーシュート。これはGKセルヒオ・ロメロの正面に飛んでしまったが、試合の入りとしては悪くなかった。

 その後も試合のペースを握ったのはAZ。ビルドアップの際に中心となるのはMFトゥーン・コープマイネルスであり、同選手の下にボールが入ると長短のパスからリズムが生まれる。ユナイテッドは守備時に4-4-2で対応していたが、なかなかここを抑えることができなかった。

 AZの攻めは左サイドからが基本。緩急の効いたドリブルとカットインからの決定的な役割を果たすことができるイドリッシがいるからだ。そのため、右SBで出場していたDFアシュリー・ヤングとCBのDFアクセル・トゥアンゼベにはより一層集中した対応が求められた。が、たとえば9分には両者の間に大きなスペースが空いていて、そこを突かれたらあわや失点という場面を作られるなど、ややバランスが不安定であったと言える。立ち上がり、ユナイテッドが後手に回っていたのは明らかだった。

功を奏したマンUのシステム変更

 なかなか軌道修正できないまま時間だけが進んでいったユナイテッド。しかし、45分間のうちにAZに点を奪われてもおかしくはなかったが、そんな最悪な展開だけは避けることに成功した。前半はこのままスコアレスで終了している。

 前半終了時のスタッツを見ると、お互いにシュート数は5本と差はなかった。しかし、AZは支配率55%、パス本数もユナイテッドの273本に対し330本を記録するなど、ジワジワとユナイテッドを押し込んでいた印象が強い。パス成功率もホームチームの86%に対してAZは90%を記録するなど、やはりアウェイチームの方が試合全体の流れを掴んでいたと言えた。近年のサッカー界は支配率が勝敗に直結することが少なくなっているが、この試合に限って言えば支配率=内容になっていた。

 ただ、後半はその流れが一変する。理由として挙げられるのは、オーレ・グンナー・スールシャール監督が見せてきたシステム変更だ。ユナイテッドはそれまでの4-2-3-1から、後半は4-1-4-1へと動かしてきたのである。

 明確だったのは中盤2枚の役割。MFネマニャ・マティッチとMFジェームズ・ガーナーである。前者はアンカーとして主に攻撃時のビルドアップの中心となり、全体のリズムを状況を見ながら変える。守備時はガーナーが果敢に飛び出して相手の攻撃をけん制。より中盤での守備強度を高めた。

 するとペースは次第にユナイテッドへ傾く。そして52分には左サイドを崩すと反対サイドを駆け上がっていたA・ヤングが角度のない位置からシュート。これがゴールネットに突き刺さり、ユナイテッドが先制に成功したのである。

 ノルウェー人指揮官の采配がいきなり的中したホームチームは、その後もAZを押し込む。58分にはFWメイソン・グリーンウッドが得点。さらに62分にはMFファン・マタがPKを沈め、64分には再びグリーンウッドがゴールゲット。先制からわずか12分間で4得点を叩き出し、AZを大きく突き放した。前半の互角の戦いが嘘みたいな展開になったのだ。

 こうして勝利を大きく手繰り寄せたユナイテッドは、マルシャルとマグワイアを早い時間に下げ、休ませることに成功。週末にリーグ3連勝を懸けてエバートンと対戦するユナイテッドにとってはここも大きなポイントになった。

 試合はこのまま4-0で終了。ユナイテッドは首位で決勝トーナメント行きを決めた。スールシャール監督の采配が見事的中した、完璧なゲームであったと言えるだろう。

影の立役者は?

ネマニャ・マティッチ
的確にパスを散らしリズムを生んだネマニャ・マティッチ【写真:Getty Images】

 前半はあらゆるスタッツでAZを下回っていたユナイテッドであったが、後半はアウェイチームのシュート2本に対しホームチームは9本。支配率も前半の45%から54%までに回復している。パス成功率も後半は93%と高い数字。前半よりチームが余裕を持ってプレーできていたのは明らかだ。

 この日のヒーローはグリーンウッドで間違いないだろう。2ゴールと申し分ない活躍で、4得点大勝の立役者になった。データサイト『Sofa Score』でも「9.4」という高いレーティングが与えられるなど、文句なしのMVPに輝いている。

 では影の立役者は誰になったのか。とくに後半に存在感を放ったマティッチであったと言える。

 負傷離脱していたマティッチはこの試合で戦列復帰。前半はダブルボランチの一角として出場していたが、あまり存在感があったとは言い難いパフォーマンスだった。しかし、後半に4-1-4-1のアンカーとしてプレーすると、次第に持ち味を発揮していくようになり、決定的な役割を果たした。

 先制点の場面では、MFアンドレアス・ペレイラからのパスをダイレクトで叩き、狭いコースを射抜いてボールをマタへ。そこからA・ヤングへのゴールへと繋がっている。

 さらに4点目の場面では、相手のクリアボールを正確なコントロールで足元に収めると、素早く顔を上げマタへパス。グリーンウッドのゴールを生むキッカケになった。

 もちろんその他のシーンでも最終ラインなどからパスを引き出してワンタッチ、ツータッチとリズムを変えながら的確にパスを散らしたマティッチ。復帰戦ではあったものの、タスクはしっかりと果たした。

 マティッチはこの日、パス成功率91%、決定的なパス2本、ロングボール成功数12回中11回を記録するなど、安定感あるパフォーマンスが光っていた。データサイト『Sofa Score』でも「7.5」という高評価が与えられている。好不調の波が激しいのは事実だが、今後これをどこまで維持できるか。

 ただ、マティッチに関しては絶対的な主力というわけではなく、早ければ今冬にも出場機会を求めインテルなどのクラブに移籍するのではないかと噂されている。今日のパフォーマンスを見る限り、使い方によってはまだまだ戦力になり得そうだが、果たしてスールシャール監督の判断はいかに。

(文:小澤祐作)

【了】

新着記事

↑top