『攻撃陣は数字や』。南野拓実をリバプール移籍にまで成長させた言葉【南野拓実の原点・後編】

南野拓実はいかにしてプロになり、リバプール移籍を果たすまでに成長したのか。その原点に迫った好評発売中の『僕らがサッカーボーイズだった頃3』(元川悦子著)から、一部を抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:元川悦子)

2020年01月05日(Sun)10時05分配信

text by 元川悦子 photo Getty Images
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「三つの明確な目標に向かってがんばります」

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リバプールに加入した南野拓実【写真:Getty Images】

 南野が変貌を遂げたもう一つのきっかけが、高校1年の春に赴いたフランス遠征だ。セレッソU-18では前述の通り、ハナサカクラブの支援の下で年に2回の海外遠征を実施しているが、南野はASモナコの関係者の目に留まり、チームが帰国した後も2週間現地に残ってトップチームのトレーニングに加わったのだ。もちろんプロ契約前提の練習参加だったという。

「実際のところ、それほど実力は発揮できなかったと先方のクラブからレポートが届きました。『もっと攻守両面に関われると思っていた』という報告でした。言葉の問題や慣れない環境に戸惑いもあったのでしょうが、本人にとってはいい経験だった。海外での挫折が20歳目前でオーストリア移籍に踏み切る原動力になったんだろうと思います。失敗を含めて全ての経験を前向きに生かせるのが南野拓実なんです」(大熊裕司監督)

 直後の2011年6月のU-17ワールドカップでも、10番を背負いながら自分らしいプレーができずに挫折感を味わった。この大会ではゼッセル熊取FC時代の親友・室屋と再び一緒にプレーできるチャンスが巡ってきて、南野自身もモチベーションを高めていた。それは室屋の方も同じ。「何で俺がここにおるんや」と室屋は信じられない思いでメキシコの大舞台へたどり着いたことを明かす。

「僕はアジア最終予選の前にいきなり呼ばれましたけど、エースの拓実との差は依然として大きかった。そんな自分にできるのは、とにかく走って走って走ること。吉武(博文)監督にも『迷ったら走れ、そして近くに預けろ』と言われていました。

 メキシコで拓実と絡んだ一番の思い出は、決勝トーナメント1回戦のニュージーランド戦で、自分のアシストから拓実がゴールしたことですね。ゼッセル時代と同じことがメキシコの世界大会でできて、僕自身もすごく嬉しかったけど、親同士が特に喜んでいましたね。そうやって同じ舞台で戦っていても、やっぱり拓実はいつも自分の前を走っている存在でした」と室屋は本音を包み隠さず吐露してくれた。

 親友にリスペクトを持って見られていた南野本人は、大会通して1得点という結果に不完全燃焼感を抱いていた。その心情を大熊裕司監督は強く感じ、より高いレベルへ引き上げるためにあえて厳しく接した。

 こうして本物のプロ意識が養われた南野は高3だった2012年に2種登録としてJリーグデビュー。2013年にトップ昇格を果たす。トップに上がる直前、クーバーで小学校高学年のときに指導してくれた丸野一博コーチのもとを訪れた南野は、力強くこう語ったという。

「『Jリーグタイトル、ワールドカップ出場、海外挑戦という三つの明確な目標に向かってがんばります』と拓実は僕にキッパリ言い切りました。18歳とは思えないほど大人だなと感じましたね。彼はあらゆる仕事もこなせて、ゲームに変化を出せる選手。そのよさを失うことなく、この先もグングン成長してほしいと僕自身も強く思いました」(丸野コーチ)

 南野は恩師との約束をキッチリと果たす。ルーキーイヤーだった2013年にはJ1で29試合出場5ゴールという目覚ましい働きを披露。2013年Jリーグベストヤングプレーヤー賞に輝いたのだ。

 「レヴィー(クルピ)監督に言われて心に残っているのは『攻撃陣は数字や』ってこと。『ゴールするんやって気持ちを持っとけ』と毎日言われて、本当に結果が大事なんやと強く思いました。何でもできるっていうのは最低限のベース。その中で自分のストロングな部分を出していかないといけないと思っています」と授賞式で語気を強めた南野は、その後も成長の歩みを止めずにグングン前へ進んでいる。

(文:元川悦子)

9784862553577

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