“攻撃的DF”冨安健洋が刻んだ驚愕のデータ。カルチョに染まって躍動、大物会長をも魅了

ウィンターブレイク明けのセリエAで、ボローニャの冨安健洋が躍動している。現地6日に行われたセリエA第18節のフィオレンティーナ戦は引き分けに終わったが、冨安は驚愕のスタッツを叩き出した。カルチョの国で攻撃的なDFとしての才覚を示す21歳のパフォーマンスには、ある大物も熱視線を送っていたようだ。(取材・文:神尾光臣【ボローニャ】)

2020年01月07日(Tue)12時37分配信

text by 神尾光臣 photo Getty Images
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攻撃のタスクは冨安に全振り

冨安健洋
ボローニャのDF冨安健洋は攻撃面でも絶大な存在感を発揮している【写真:Getty Images】

 ボローニャが0-1のビハインドで迎えたフィオレンティーナ戦のアディショナルタイム。イタリア代表MFリカルド・オルソリーニは、右サイドのほぼ角度のないところからフリーキックを直接ゴールへねじ込んだ。壁の頭上を狙って蹴り、ゴールの右上隅へ叩き込む。シニシャ・ミハイロビッチ監督の現役時代が乗り移ったような一撃だった。

 もっともボローニャにとっては、嬉しい引き分けというよりも、本来なら勝ち点3を奪って終わるべき内容の試合だった。試合後、取材に応じた冨安健洋もそのように語っていた。

「勝たないといけない試合だったと思います。僕たちの方が内容は良かったと思いますし、そういったなかで最後のクオリティが足りなくて、まあ結果として引き分けに終わっちゃったなという感じです」

 積極的に押していた試合だった。ウィンターブレイク中に就任したジュセッペ・イアキーニ監督のもと、フィオレンティーナはディフェンスラインを下げて、純イタリア的な堅守速攻のプランを敷いてきた。ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督時代から考えれば180度の方向転換だが、結果を重視する上ではセオリーだ。

 そんな彼らに対しボローニャは、終始積極的な試合内容を披露。その中で冨安は、非常に積極的に攻撃の展開を作り出していた。

 ダニーロの復帰で、ポジションは前節レッチェ戦のセンターバックから、ボローニャでの“定位置”である右サイドバックに移動。そして攻撃に絡んだ。ミチェル・ダイクスとラディスラフ・クレイチの故障により、左サイドバックには攻撃的な人材が不在。その分のタスクは、冨安に割り振られた。左のステファノ・デンスビルのポジションを下がりめにし、冨安に攻撃をさせる。4節前のナポリ戦からの展開である。

驚愕のスタッツ、印象深いプレーの数々

 試合のスタッツには、なかなか驚愕の数値が出ていた。レガ・セリエAの集計した公式スタッツによれば、冨安のボールタッチは91回と、2位のダニーロとマッティア・バーニの71回を大幅に超えて両チームでダントツ1位。パスの成功数も66本と、これまた両チーム合わせてトップの数値だった。

 そして、ただボールに触っていただけではない。パスには意図があるというか、常に2、3手先の展開をイメージし、その後のフォローにも走るという積極性を見せていた。

 連係のスイッチとなるのが、すぐ前にいる右ウィングのオルソリーニと、前線で縦横無尽に動く1トップのロドリゴ・パラシオの存在だ。とりわけ、2、3枚を飛ばしてまずパラシオを探すという姿勢が、冨安のプレーには見られていた。

 パラシオからは「常に斜めを見ろ」と言われていたという。右サイドの深い位置にポジションを取る冨安にとって、パラシオの位置は左斜め前方になる。そこから下がったり、また前線へのスペースへと流れる1トップの動きを見つつ、目の前をプレスをかわして縦パスを入れる。これがボローニャにとって、1つの攻撃のスイッチになっていた。

 時にパラシオを探し、相手が中央のスペースを埋めればオルソリーニを使う。こうして攻撃を組み立てる中、34分には展開の起点となったのちに自らゴール前へと迫った。前線のオルソリーニに柔らかい縦パスを通すと、前へ疾走。

 俊足を飛ばして、ボールをキープするオルソリーニを追い越してゴール前へ飛び出すと、アンドレア・ポーリの縦パスを呼び込んで右足でボレーシュートを放つ。相手GKには止められるが、ビッグチャンスを創出した。

「ロッソブルーのロッソ、ってことで」

ロッコ・コンミッソ
フィオレンティーナのロッコ・コンミッソ会長も冨安健洋のプレーに注目していた【写真:Getty Images】

 そんな彼に対し、ミハイロビッチ監督やコーチからは『もっと攻撃に絡め』という指示がハーフタイムで出たという。フィオレンティーナはプレスの強度を高めてくるが、怯まずに逆に高いポジションを取っていくようになる。アウトサイドでオルソリーニをフォローしたかと思えば、中央に絞ってボランチのようにパスを捌いて行く。後方のゲームメイカーとして、積極的に流れを作っていた。

 チャンスを多く作ったボローニャだったが、なかなか相手ゴールが割れない。ミハイロビッチ監督はDFを1枚削り、文字通りの3バックにして攻めるプランを立てた。その時、交代させたのはデンスビル。冨安は攻撃の構築に必要な存在として残されたが、そのことが高い信頼を物語る。

「もっと周りと関われというふうに言われたんで、そういう姿勢っていうのは見せられたのかなって思います。だんだんウィングにも慣れてきたかなという感じです」とは冨安の弁。すっかり攻撃的ディフェンダーというキャラクターが板についたという印象だ。

 彼自身は「ボールを受ける状態がよく、ボールを運ぶことができる」という、3バックの右のように残る役割がやりやすいようだが、違うタスクを任せても攻撃に絡めることが能力の高さを物語っている。

 そんな冨安のプレーは、フィオレンティーナのある人物の目にも留まった。ロッコ・コンミッソ会長だ。試合後、地元プレスにイタリア語で取材対応していたイタリア系アメリカ人オーナーは、日本取材陣を見るなり英語に切り替え、「君たちは日本人プレスだろ? 彼を見にきたんだね? 素晴らしい選手だと思ったよ」と自分から話しかけてきたのである。観る者にインパクトを与えているプレーができているということだろう。

 チームにも、イタリアの環境にもますまず馴染んできている。ウィンターブレイク中に髪を茶色に染めてきたところ、イタリアに戻ってきてからは「チームメイトから『赤に染めたんだ』って言われた」という。日の丸の赤か、と振ったところ、こう返ってきた。

「ロッソブルー(赤と青、ボローニャのチームカラー)のロッソ、ってことで」

(取材・文:神尾光臣【ボローニャ】)

【了】

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