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乾貴士、19/20前半戦の評価は? “我が家”に復帰、下位に沈むエイバルでの立ち位置は?【欧州日本人中間査定(15)】

年が明け、2019/20シーズンは後半戦へと突入した。欧州各国でプレーする日本人選手たちはどのような活躍を見せたのか。今回はエイバルでプレーする乾貴士の前半戦を振り返る。(文:編集部)

シリーズ:欧州日本人中間査定 text by 編集部 photo by Getty Images

“我が家”への復帰

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エイバルでプレーする乾貴士【写真:Getty Images】

 昨季、MF乾貴士はベティスに完全移籍した。序盤こそ出番を勝ち取っていたが、次第に出場機会は減少。日本代表として出場したアジアカップの戦いを終えると、アラベスへとレンタルされている。

 アラベスではアクシデントに見舞われながらも、結果を残した。レアル・ソシエダ戦のウォーミングアップ中に負傷して終盤戦を欠場したが、10試合に先発して2得点を挙げる活躍を見せている。

 オフシーズンにはアラベスが完全移籍での買取を模索していたが、3シーズンを過ごしたエイバルへの完全移籍が決まった。昨季は投票によって決まるスペイン紙『マルカ』電子版の「期待外れイレブン」にも選出されてしまった乾は、古巣で捲土重来を期すこととなった。

 フラン・ガラガルサSDは乾の復帰に際して「ホセ・ルイス(・メンディリバル監督)のために、重要で価値の高い選手を戻すことができました」とコメントしている。乾自身も「エイバルに帰って来られてすごく嬉しいです。昨季は僕にとって難しかったけど、今は“我が家”に帰ってきました」と古巣への復帰を喜んだ。

 プレシーズンではフォルトゥナ・デュッセルドルフ戦でゴールを挙げたが、開幕から2戦連続で出番は訪れず。チームはマジョルカ、オサスナという昇格組と対戦した2試合で勝ち点を1ポイントしか得ることができなかった。

幻のゴールと待望の初得点

 初出場は第3節に訪れた。開幕から2試合は2トップを採用していたエイバルだったが、アトレティコ・マドリー戦では4-2-3-1を採用している。乾はMFペドロ・レオン、ファビアン・オレジャーナとともに2列目に入った。得点に絡むことはできなかったが、試合は19分までにエイバルが2点を先行する。しかし、追いつかれたエイバルは90分、MFトーマス・パーテイに逆転弾を喫し、大金星を逃した。

 乾はそこから3試合連続で先発したが、チームは白星から見放された。エスパニョール戦でも先制しながら逆転され、レバンテ戦はスコアレスドローに終わっている。乾も決定機を決めることができず、チームに勝利をもたらすことができなかった。

 続くセビージャ戦では4試合連続で先発の機会を得たが、序盤からチームが機能せず、32分に下げられてしまった。チームは直後に2失点目を喫する苦しい展開となったが、後半に3点を奪って逆転に成功。6試合目で初勝利を収めることに成功した。

 悔しい前半での交代から中2日で行われたセルタ戦にも先発メンバーに乾の名前はあった。後半早々にエイバルが先制すると、オレジャーナが右サイドから上げたクロスに、乾がファーサイドからダイレクトで合わせる。ボールはゴールネットを揺らしたが、直前のプレーにハンドの反則がVARによって指摘され、乾の今季初ゴールは幻に終わった。

 それでも、その後のプレーで乾が相手陣内でボールを奪うと、ペナルティエリアにドリブルで侵入する。前に出て構えるGKの逆を取り、中央で待つ味方にパスを送ると、オレジャーナが冷静に決めて点差を2点に広げた。

 1-4で敗れたレアル・ソシエダ戦でもアシストを記録した乾は、第18節に待望の初得点をマークした。グラナダ戦は前半のうちに2点を先行して試合は終盤に突入。87分にキケ・ゴンザレスがドリブルでアタッキングサードに侵入すると、左サイドでフリーになっていた乾にパスを送る。前に出て対応するGKと冷静に距離をとってゴールコースを作ると、右足を振りぬいてファーサイドのゴールネットを揺らした。

カギを握る乾のパフォーマンス

 2015年の夏にエイバルにやってきたホセ・ルイス・メンディリバル監督は、2014/15シーズンに初めて1部に昇格したバスク州のクラブを着実に成長させてきた。過去4シーズンは13位、10位、9位、12位と中位に食い込んだが、21試合を終えた今季は15位に沈み、入れ替え戦を戦う18位との勝ち点差は6ポイントとなっている。

 乾は21試合を戦ったチームで15試合に先発しているが、1得点2アシストという結果は物足りない。34歳の誕生日を迎えたばかりのオレジャーナが4得点4アシストと気を吐いているが、チームは21試合で20ゴールという得点力不足に苦しんでいる。

 今季の起用を見る限りでは、開幕前のガラガルサSDのコメントの通り、乾に対する指揮官の評価は高い。DFラインを高く設定し、ハイプレスで直線的にゴールを狙うエイバルでは、サイドハーフの乾にも守備での貢献が求められる。攻撃でも得点に関わる活躍が求められ、その負担は決して小さくない。それでも乾が結果を残すことができれば、チームはより上の順位に躍り出ることができる、ともいえるだろう。

 3試合の出場停止が明けた大黒柱のオレジャーナが復帰した18日のアトレティコ戦では、攻めあぐねる相手を前に2-0の快勝を収めている。ベテランのペドロ・レオン、オレジャーナとともに2列目に並ぶ乾の活躍は、後半戦のカギを握ることになるだろう。

(文:編集部)

【了】

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