イブラヒモビッチ加入により蘇るレビッチ。クロアチアの重戦車は、なぜミランの救世主になれたのか?

セリエA第24節、ミラン対トリノが現地時間17日に行われ、1-0でホームチームが勝利した。この日のヒーローとなったのはアンテ・レビッチ。これでリーグ戦では直近5試合で5得点と大爆発中だ。イブラヒモビッチ加入により蘇ったレビッチ。その理由とは。(文:小澤祐作)

2020年02月18日(Tue)11時33分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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ミランがウノゼロ勝利

ミラン
【写真:Getty Images】

 インテルとのミラノダービーでは2-4と逆転負け。コッパ・イタリア準決勝1stレグのユベントス戦では終盤の失点により1-1のドローと、ここ最近のミランは勝ち星を奪うことができていなかった。相手のレベルが高いとはいえ、年明け以降好調を維持していたミランからすれば、この結果は受け入れ難いものである。

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 しかし、この日はしっかりと勝ち星を奪った。現地時間17日に行われたセリエA第24節のトリノ戦。ミランはホームでのこの一戦を1-0で終えることに成功している。

 FWズラタン・イブラヒモビッチ加入以降ベースとなった4-4-2をこの日も採用したステファノ・ピオーリ監督。MFフランク・ケシエやDFテオ・エルナンデスらがスタメンに順当に名を連ねる中、ここまで主力としてプレーしてきたMFハカン・チャルハノールがベンチスタート。元スウェーデン代表FWの相方は「カカ二世」と称されるMFルーカス・パケタが務めることになった。

 立ち上がりからボールを支配したミランは、イブラヒモビッチを中心とした攻めでトリノを押し込む。全体のラインもしっかりとプッシュアップし、相手に自由を与えなかった。

 19分には決定機を作る。左サイドをFWアンテ・レビッチが駆け上がると、イブラヒモビッチを経由して最後はパケタがシュート。背番号21のポジションがオフサイドだったことでゴールとはならなかったが、縦にボールが入った瞬間2列目の選手が全力で前へ飛び出すなど、積極的なゴールへの姿勢が見られたシーンの一つだった。

 その勢いのまま、ミランは先制点を奪う。25分、右サイドをFWサム・カスティジェホが突破すると、グラウンダーのクロスを上げる。これに反応したのはレビッチ。クロスをダイレクトで押し込み、1点リードを奪った。

 守備陣も粘り強く対応し、1-0で前半を終えたミランは、後半立ち上がりにイブラヒモビッチがビッグチャンスを迎えるなど引き続きトリノを押し込む。52分にもカスティジェホが決定機を作るなど、いつ追加点が入ってもおかしくはなかった。

 しかし、トドメの一撃を刺せないミランは、その後セットプレーなどからトリノにチャンスを作られる。1トップのFWアンドレア・ベロッティを中心とした相手の攻めに、手を焼くシーンは何度かあった。

 それでも、主将のDFアレッシオ・ロマニョーリを中心とした守備陣が奮闘。無失点に抑え、勝ち点3を奪取した。もっと早くに勝負を決められたのではないか、とも思うが、ミランにとって大きな1勝であることは間違いない。

躍動する小さな戦士

イスマエル・ベナセル
【写真:Getty Images】

 全体的に渋い内容ではあったが、相手の出方を探るイタリアらしい戦いとも言えたこの試合。シュート数は15本:9本、支配率も50%:50%と両者の間にほぼ差はなかった。ただ、大きく違ったのはタックル数。ミランの43回に対し、トリノは27回というデータが出ている。ボールロストの回数もアウェイチームの方が多く、ここが勝敗を左右したと言えるのかもしれない。

 その中で躍動していたのが、MFイスマエル・ベナセルだ。今夏、エンポリからやってきたアフリカネーションズMVPの働きは、ミランにとってかなり効果的だった。

 とにかくボールの行き先を読む力が優れている。パスが出るタイミングで動き出すことにより、相手がタッチする直前かタッチした直後にプレッシャーを与えることができる。これが1回ではなく、複数回繰り返すことができるのが恐ろしいところ。まさに、“相手の芽を摘む”プレーだ。

 その動きによりカウンターの阻止→速攻への起点にもなることができる。ミランにはアタッカータイプの選手が多いので、こうした働きを見せることができる選手がいるのは非常に大きい。現在も幅広いエリアを一人でカバーせざるを得ない状況を作られることはあるが、この選手がいなければ攻守のバランスは整わないことは確かだ。

 そして、この日最も素晴らしかったプレーは39分、T・エルナンデスが自陣深い位置で中にボールを通してしまい、相手にカットされたシーン。MFトマス・リンコンの下にボールが収まった瞬間、ベナセルが猛烈な勢いで潰しに行き、チャンスを阻んだ。恐らくベナセルがいなければピンチを招いていたが、彼の読みの鋭さが効果を発揮した象徴的なシーンであった。

 この日、ベナセルはタックル数チーム2位タイとなる6回を記録。成功数も4回と高い数字が出ている。インターセプト数2回もチームトップタイとなる数字。中盤での貢献度は絶大である。

 加入当初は4-3-3のアンカーという非常に重要なポジションを任された重圧があったのか、少し冷静さを欠いたプレーも目立ったベナセル。ただ、現在はダブルボランチという形で相棒のケシエがいる影響からなのか、落ち着きのあるプレーが冴える。そのスタイルゆえ、イエローカードを貰うことも少なくはないが、ファイターの存在は名門復活を目指すミランにおいてまだまだ必要となってくるはずだ。

救世主・レビッチの誕生

アンテ・レビッチ
【写真:Getty Images】

 そして、なんと言ってもヒーローはアンテ・レビッチだ。今回のトリノ戦で得点したことにより、公式戦では3戦連発。リーグ戦では直近5試合で5得点と好調を維持している。

 フランクフルトから加入した当初は、なかなか出場機会に恵まれなかったレビッチ。ミランが開幕当時採用していた4-3-3というシステム上、攻撃の中心となるのは右サイドのFWスソで、1トップのFWクシシュトフ・ピョンテクもポストプレーヤータイプではなく、ボックス内に侵入することを好む。タイプ的にレビッチと同じではないが近い。そして左サイドはチャルハノールが基本。右サイドにはそれほど守備に加担しないスソがいるため、そのバランスを整えるべく守備面での貢献を期待されての起用だった。

 そうなるとレビッチがいる意味というものはあまりなくなっていた。左サイドで起用しても、スペースではなく足下でボールを受けることがほとんど。裏へ抜けようとしても、ピョンテクとの動きが被ることもあった。そして、とくに同サイドは守備面での貢献度も求められるため、指揮官からするとスタートからここでクロアチア人FWを使うことには抵抗があったのかもしれない。ジョーカーとしての起用を考えていたのは確かだ。

 しかし、イブラヒモビッチ加入以降、状況は劇的に変わった。最前線で起点となる存在ができたため、レビッチは必然的に前を向いてプレーすることができる。スペースでボールを受ける回数も増え、イブラヒモビッチと動きが被ることもない。もともとゴリゴリなドリブルには定評があったため、ボールさえ回ってくれば仕事を果たせることは明らかだった。出場のチャンスをもらった第20節のウディネーゼ戦で2ゴールを挙げることができたのも、今に繋がっていると言えるだろう。

 そして何よりも守備面でも貢献できることがわかったのは大きい。このトリノ戦でもタックル数4回を繰り出しているなど、運動量豊富に動くことを可能としている。決して守備が上手いわけではないが、苦手でもないという印象が伺える。イブラヒモビッチ加入によりシステム変更、それにより掴んだ出番で結果を残す。これこそ「イブラ効果」ではないか。

 レビッチの好調は間違いなくミランの起爆剤となっている。今後も得点数を伸ばせるか。イブラヒモビッチももちろん、クロアチアの重戦車にも注目だ。

(文:小澤祐作)

【了】

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