アーセナルが整理すべきポジションは? マンUは守護神を見切る? ビッグ6の命運を握る夏の補強プラン【粕谷秀樹のプレミア一刀両断】

リバプールが首位を独走する今季のプレミアリーグも終盤戦へ突入した。残り10試合を切り、来季に向けた移籍の噂も飛び交い始めている。ビック6が抱えるそれぞれ事情を鑑みながら、それぞれの補強ポイントを探っていく。(文:粕谷秀樹)

2020年03月14日(Sat)9時00分配信

シリーズ:粕谷秀樹のプレミア一刀両断
text by 粕谷秀樹 photo Getty Images
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リバプールの備えは…

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【写真:Getty Images】

 今シーズンの行方は見えている。3月8日現在、首位リバプールと2位マンチェスター・シティは25ポイント差。逆転の可能性は皆無、といって差し支えない。早ければ3月中旬にもリバプールの優勝が決まる。

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 しかし、一瞬の気の緩みが修復不可能な傷口に広がるケースは多々ある。リバプールはもちろん、マンチェスター・シティ、トッテナム、アーセナル、チェルシー、そしてマンチェスター・ユナイテッドも、早々と来シーズンの準備に取りかかった。

 リバプールの補強ポイントは前線と左サイドバックだ。2021年1月にアフリカネーションズカップ(アフリカ選手権)が開かれるため、サディオ・マネ(セネガル代表)とモハメド・サラー(エジプト代表)が一か月ほど戦線を離脱する。年末年始のプレミアリーグは多忙を極めるため、ひとりでも多くの戦力を確保しなければならない。巷で噂のティモ・ヴェルナー(ライプツィヒ)はハードワーカーで、〈ヘヴィメタル・フットボール〉に順応できる。是が非でも獲得すべき人材だ。

 また、実質アンドリュー・ロバートソンただひとりの左サイドバックの補強にも、本腰を入れなくてはならない。ジェームズ・ミルナーは健在だが、彼も1月に34歳になった。ベン・チルウェル(レスター)の才能は認めるものの、ロバートソンのバックアップとしては刺激が強すぎる。

 エヴァートンのリュカ・ディーニュには手を出せない。ローカルライバルから主力を引き抜けば暴動が起きる。ノーリッジのジャマル・ルイスは22歳。ユルゲン・クロップ監督が好む積極果敢なタイプだ。ロバートソンが充実しているとはいえ、後釜は確保しておいた方がいい。

マンチェスターの2クラブの出方は…

 シティは流動的だ。ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)違反がクロと認定されれば、UEFAチャンピオンズリーグは出場禁止、勝ち点が剥奪され、補強も制限されるに違いない。「なにが起きても残留」と誓ったジョゼップ・グアルディオラ監督でさえ、翻意するかもしれない。彼を慕うベルナルド・シウバ、エメリック・ラポルト、ラヒーム・スターリングが追随することも考えられる。

 また、シロと判定されても大胆に動けるだろうか。FFP関連でイメージが低下した。市場における競争力にも小さくないダメージだ。ビッグディールの可能性は低い。

 シティの隣人ユナイテッドは24節のバーンリー戦に敗れた後、公式戦7勝3分無敗。急に息を吹き返したため、経営陣の一部がオレ・グンナー・スールシャール監督の評価を見直したとも伝えられている。しかし、ブルーノ・フェルナンデス、フレッジ、ルーク・ショーなど、個人の力に負うところが大きく、昨シーズンも11戦無敗の後、ポール・ポグバの不調とともに長いスランプに陥った。スールシャールの立場もまだ安泰ではない。

 さらに、好不調の波が激しくなったダビド・デヘアを見切り、シェフィールドにローン移籍しているディーン・ヘンダーソンの復帰を検討しているようだ。3月5日、エドワード・ウッドワードCEOがヘンダーソンのエージェントと接触したことも確認されている。ちなみにポグバは120~130億円のオファーが届けば放出、夏の本命はジェイドン・サンチョ(ドルトムント)が現時点の基本ラインで、ビッグ6すべてが興味津々だったバーミンガムの17歳、ジュード・ベリンガムの獲得も濃厚になってきた。

汚名返上のチェルシー

 チェルシーは夏の市場で最も注意すべきチームのひとつである。財務に詳しい弁護士の尽力により、FFP違反で科された補強禁止処分は19年夏だけで解かれた。しかし強化担当のマリアナ・グラノフスカヤは、20年1月の市場で動いていない。アヤックスのハキム・ジイェフを獲得したとはいえ、チェルシーでプレーするのは来シーズンからだ。フランク・ランパード監督が「だれも来ないなんて想定外だ」と語ったことでもわかるように、グラノフスカヤはうまく立ちまわれなかったのだろう。

 したがって、夏は汚名返上。サポーターにも熱く支持されるランパードを敵にまわさないためにも、強化担当は積極的に動かなければならない。潤沢な補強費が用意されているのだから、監督が推進する新旧交代を念頭に置き、サンチョ(前出)やライプツィヒのダヨ・ウパメカノといったスター候補性を獲得し、多くの不満を一掃する責任がある。

 また、度重なるチョンボで信頼を失いつつあるケパ・アリサバラガに代わる新GKの補強も必須だ。ランパードのお気に入りとされるアトレティコ・マドリードのヤン・オブラクはアンタッチャブルだ。すでにジィエフを獲得しているため、アヤックスからアンドレ・オナナまで奪うのは難しい。ウェストハムの名手ウカシュ・ファビアンスキのような、プレミアリーグをよく知るタイプをピックアップすべきだ。

 なお、オリビエ・ジルーとマルコス・アロンソ、ペドロ・ロドリゲスの退団は避けられず、ウィリアンは契約年数をめぐる交渉が遅々として進んでいない。4選手とも、ボスマン・プレーヤーである。

ノースロンドンの両雄は…

 ミケル・アルテタ監督のもと、試合内容が充実してきたアーセナルはセンターバックの整理が最優先だ。現時点でダビド・ルイス、スコドラン・ムスタフィ、ソクラティス・パパスタスプーロス、ロブ・ホールディング、カラム・チェンバーズ、パブロ・マリを抱え、ローン移籍中のコンスタンティノス・マブロパノス(ニュルンベルク)、ウィリアム・サリバ(サンテンヌ)を含めると計8名の大所帯。センターバックの上限は4~5名だろう。移籍を示唆したパパスタスプーロス、ミスが多いムスタフィ、成長が止まったマブロパノスは整理の対象だ。

 そして、不満分子も排除しなくてはならない。退団の噂が絶えないピエール=エメリク・オーバメヤンは換金の対象とする。アルテタ監督との衝突が表面化したマテオ・ゲンドゥジも同様だ。クラブに対するモチベーションが薄かったり、指導部に反旗を翻したりするようなタイプは説得するだけ無駄だ。さっさと追い払い、新生アーセナルに尽力する選手との交渉に時間をかけたい。FWではナポリからフリートランスファーとなるドリース・メルテンス、MFはフェイエノールトの有望株、オルカン・コクチュがターゲットといわれている。

 さて、アーセナルの怨敵トッテナムは新スタジアムのオープンに伴う増収と、プレミアリーグやCLの放映権、報奨金により、2019年の収益は4億5900万ポンド(約642億6000万円)にも達した。過去3シーズンの総計でも2億5000万ポンド(約350億円)の大プラスである。

 ただ、ダニエル・レヴィー会長は財布の紐が固い。ジョゼ・モウリーニョ監督がカリドゥ・クリバリ(ナポリ)のような即戦力を望んでいたとしても、レヴィー会長は難色を示す確率が高い。では補強を怠ると、どのようなケースが想定できるだろうか。「会長はクラブを強くしたくないのか」とハリー・ケインの心にさざ波が立ち、移籍を志願する。

 プレミアリーグとヨーロッパで引き続き成功したいのなら、レヴィー会長は現場の声に耳を貸さなくてはならない。ビジネスの色が強すぎるとメインステージからふるい落とされる。超一流に向けて投資するか、それとも1ランク下で安住するのか……。レヴィー会長の考え方次第だ。

 投資したくても周囲の視線を気にしなくてはならない。新シーズンの監督が決まっていない。ビッグ6それぞれの事情がある。しかし、プラスアルファなくして成功は望めない。移籍市場の成否が、彼らの命運を握っている。

(文:粕谷秀樹)

【了】

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