サンフレッチェ広島、大迫敬介が理想とするGK像。「ゴール前で存在感を出すには…」【東京五輪世代の今(7)】

J1の再開は5月にずれ込むことになり、東京五輪は今夏の開催が見送られることが決まった。思いがけずおとずれた中断期間に、東京五輪世代の選手たちは何を思うのか。サンフレッチェ広島の正GK、大迫敬介にその胸中を聞いた。(取材・文:元川悦子)

2020年03月29日(Sun)10時44分配信

text by 元川悦子 photo Getty Images
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さらなる飛躍を決意する大迫敬介

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【写真:Getty Images】

 東京五輪の延期、Jリーグの3度目の再開延期と日本サッカー界が慌ただしい動きに包まれた3月下旬。サンフレッチェ広島は通常通りのトレーニングを行っていたが、J1再開が5月9日にずれ込んだのを受けて、27日のガイナーレ鳥取との練習試合を最後に6日間のオフに突入した。6日休むとフィジカルコンディションを取り戻すのに10日かかるというが、城福浩監督はあえてメンタルをリフレッシュさせることを優先させた。

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 20歳の守護神・大迫敬介は「僕らのプレーを待ってくださっているサポーターに自分たちがサッカーしてる姿を早く見せられるといい」と先を見据えながら、まずはしっかりと心身ともに充電するという。

 確かに振り返ってみると、2019年から2020年にかけての彼はハードなスケジュールを強いられた。昨年は広島と東京五輪代表の行き来に加え、A代表としてコパ・アメリカ(南米選手権)やEAFF E-1サッカー選手権に参戦。今年1月もオフをほとんど取ることなく、AFC U-23選手権に出場している。

 ご存じの通り、その大会で日本はサウジアラビア、シリアに連敗。カタールにも引き分けるという最悪の結果でグループ敗退を強いられた。

 3試合続けてゴールマウスを守った大迫は「自分たちがどれだけボールを持っていても、最後やられてしまったら何にもならない。やっぱり結果だなと強く感じたのがあの大会でした。最後のところでやらせない、いくらボールを握られても決められなければいいというくらいの感覚で自分はゴールマウスに立てるようになりたいと思います」とさらなる飛躍を決意。広島に戻って自らのブラッシュアップに努めた。

「もう1年間準備する期間ができた」

 その成果もあって、2月23日のJ1開幕・鹿島アントラーズ戦を3-0で勝利。新シーズンに向けて好発進を見せたが、直後に新型コロナウイルスの感染が急拡大。公式戦中断に至り、1カ月もの時間が過ぎた。そんなさなかに五輪延期が決まったわけだが、前だけをしっかりと向いている大迫にダメージはない。むしろ「新たな時間をもらった」とプラスに捉えているようだ。

「もう1年間準備する期間ができたのかなとう感覚なので、全然、ネガティブには考えていないです。僕は99年生まれですし、年齢制限の問題もない。1年あれば、他のGKも力をつけてくるでしょうし、彼らと刺激を与えあいながら、まずは自分がポジションを奪うことに集中してやりたいなと思います」と競争意識を高めていくという。

 近未来の日本代表GKと評される彼が理想とするのは「最後の最後でやられない守護神」だ。チーム全体がどれだけ劣勢を強いられても自分がスーパーセーブを連発すれば、失点はゼロに抑えられる。そこがGKの醍醐味と言っていいだろう。

 世界を見れば、マヌエル・ノイアー(バイエルン)やティボ・クルトワ(レアル・マドリード)のように圧倒的な存在感を示しながらゴールを守り切り、攻撃の起点にもなれる選手がいる。そういう高みを目指して、弱冠20歳の若きGKはこの中断期間に自分自身をより研ぎ澄ませていく覚悟を持っている。

雰囲気を持ったGK

「ゴール前で存在感を出すためには、1つ1つ声を出すことも大事。そこは強くこだわりながらやってます。去年コパ・アメリカの時に川島永嗣選手と一緒にやりましたけど、すごく声を出していたし、僕にとってはホントにいい経験になった。ああいったところで学んだものをムダにしたくないという気持ちは強いです。

 今は公式戦が延期延期になっていて、どうしてもチーム全体がネガティブになりがちだけど、一番後ろにいる選手がチームを盛り上げる声を出していけたら、雰囲気もガラリと変わる。そこはこれからも意識して取り組んでいきたいですね」

 オフ前の3月26日のトレーニングでも、大迫は年長の林卓人や増田卓人らとキックやセービングの練習をこなしていたが、つねに大声でコーチングをし、笑顔で周りの雰囲気を明るくしていた。彼がいるだけで広島は安心感に包まれる。本当に不思議な空気感を持った選手だと再認識させられた。

 そういった独特の魅力があるから城福浩監督も日本代表の森保一監督も大迫を重用するのだろう。日本代表は初めてワールドカップに出場した98年フランス大会以降、川口能活、楢崎正剛、川島と偉大な3人の守護神が君臨し続けてきたが、その後はまだ混とんとした状態だ。

 最近のA代表では権田修一やシュミット・ダニエルが試合に出ることが多かったが、若くて技術に優れ、身体能力も高く、周りを安堵させる雰囲気を持つ大迫が彼らを一気に抜き去る可能性もゼロではない。そういう意味でも、今回突如として与えられた2カ月超の中断期間を自らの糧にすることが肝要だろう。大迫敬介ならば、本人も行っている通り、Jと五輪の延期をプラスにできる力があるはずだ。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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