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セリエA 4年前

吉田麻也vsルカクの結果は…。着実にフィットするエリクセン、インテルが遂げつつある進化

セリエA第25節、インテル対サンプドリアが現地時間21日に行われ、2-1でホームチームが勝利している。スクデット獲得を目指すインテルは、後半に失速するなどやや不完全燃焼に終わった印象は強い。しかし、ポジティブな要素もあったのは事実。クリスティアン・エリクセンがフィットし始めてきたことだ。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

サンプドリアを押し込むも…

インテル
【写真:Getty Images】

 2009/10シーズン以来となるスクデット獲得を目指すインテルからすると、安堵できる結果になった。しかし、満足できる結果だったかと言うと、決してそうではないのが実情だ。

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 現地時間21日、セリエA第25節のインテル対サンプドリアが行われ、2-1でホームチームが勝利。ネラッズーリは首位ユベントスとの勝ち点差を6に縮めることに成功している。

 この日のインテルは立ち上がりからエンジン全開だった。守備時は5-4-1のような形で守ってくるサンプドリアに対し、アントニオ・コンテ監督率いるチームはダイレクトパスを巧みに織り交ぜたテンポの良い攻めで敵陣へ何度も侵入。まさに相手を“圧倒”していた。

 その勢いのまま、インテルは10分に先制点を奪取。流れるようなパスワークでサンプドリア守備陣を完璧に崩し、最後はFWロメル・ルカクが冷静に仕留めている。

 その後も、インテルはアウェイチームをまったく寄せ付けず。相手は前から果敢にプレスをかけてきたが、冷静なパス回しで的確に回避。攻撃の連動性は見事で、11人全員が高い集中力を保っていた。攻守の切り替えも素晴らしく、サンプドリアにボールを蹴らせてセカンドボールを回収し、再び縦に速い攻めを展開させた。

 33分にはFWラウタロ・マルティネスがゴールをゲット。リードを2点に広げ、前半を終えている。45分間が終了した時点でのインテルのスタッツは、支配率72%、シュート数11本、被シュート数2本である。内容は完璧だったと言えるだろう。

 しかし、後半はインテルの悪い部分が出てしまった。

 52分にコーナーキックから一瞬の隙を突かれてMFモアテン・トルスビーにゴールを許し、1点差に詰め寄られたインテルは、失点後もすぐに気持ちを切り替え、前半同様相手を押し込むことができていた。しかしながら、何度も訪れた決定機を逸し続け、なかなかスコアを動かすことができない。サンプドリアの守備陣が素晴らしい対応を見せていたとは言い難かったため、ほぼ“自滅”だった。

 後半は計7本のシュートを放ったが、枠内に飛んだのはわずか1本。勝ち点3こそ得られたものの、得失点を伸ばすことができなかったのは痛い。コンテ監督も試合後、「3-0や4-0にできる状態で2-1になるのは良くない」(伊紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』より)と話しているなど、不完全燃焼に終わったのは明らかだ。

 コッパ・イタリア準決勝2ndレグのナポリ戦でもそうだったように、今季のインテルはボールを保持し、相手を押し込みながらも点を取り損ねて苦しむという内容が多い。それも、後半に入るとやや失速するという傾向にある。セリエA制覇へ向けて、やはりこのあたりの改善は必須と言えそうだ。

着実にフィットするエリクセン

クリスティアン・エリクセン
【写真:Getty Images】

 しかし、ポジティブな部分も十分にあった。MFクリスティアン・エリクセンがチームにフィットし始めてきたことだ。

 今冬、トッテナムからバーゲン価格でインテルにやって来たデンマーク代表は、加入当初コンテ監督のスタイルに馴染めず、ベンチから戦況を見つめることも少なくなかった。期待値とは程遠い内容と言わざるを得なかったのだ。

 しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響による中断明け初めての公式戦となったナポリ戦で先発を飾ると、その試合で得点を奪取。その好調ぶりを、サンプドリア戦でも発揮する形になった。

 サンプドリアは5-4-1で守っていたが、最終ラインと中盤の間に大きなスペースが空くことが少なくなかった。トップ下に入ったエリクセンにマンマークは付けておらず、あくまで警戒していたのはルカクとL・マルティネスの2トップ。そのため、エリクセンにはある程度の自由が効いたのである。

 そうなると、背番号24は止められない。常に高い位置を取り、積極的にアタッキングゾーンでボールを受けては幾度となくサンプドリア守備陣の脅威となった。シュート数は5本、キーパスは両チーム合わせて断トツ1位の4本を記録しているなど、試合後のデータを見てもその活躍ぶりは明らかだ。

 ボールを持った際の視野の広さとパスセンスは、トッテナム在籍時から大きな変化はなく、相変わらずワールドクラスであった。ボールを受けた際のワクワク感やアイデアの豊富さは、MFステファノ・センシが負傷離脱している影響もあるが、これまでのインテルにはやや足りなかった要素と言え、チームにとって非常に良いスパイスとなっている。

 とくに、ルカクとL・マルティネスという強力2トップとの距離感や連係の向上は著しい。先制点の場面ではこの3人だけで崩しているなど、スピーディーかつ確実な攻めが目を見張った。先述した通り決定力については改善が必要だが、エリクセンがフィットし始めてきた今、インテルは3-4-1-2のシステムで進化を遂げつつあると言えるのではないか。

吉田麻也ら守備陣の課題とは?

吉田麻也
【写真:Getty Images】

 一方、敗れたサンプドリア。押し込まれながらも1点差に抑えられたのはポジティブなことだが、決して内容は褒められたものではない。第26節を終えた時点で16位と今季は残留争いに苦しんでいるが、今後も厳しい戦いぶりは続きそうだ。

 さて、今冬サウサンプトンからサンプドリアに加入したDF吉田麻也は先発フル出場。3月に行われた第26節のエラス・ヴェローナ戦に続き、これで2試合連続での起用となった。

 3バックの中央に配置された吉田のパフォーマンス自体は決して悪くなかった。DFオマール・コリーやDFバルトシュ・ベレシュインスキのカバーリングも悪くなく、ロシアワールドカップでも対戦したルカクらとの1対1でも大きく劣っていた印象はない。インテルがバックパスを出した瞬間には恐れずラインアップするなど、最終ラインで高い集中力を保っていた。

 しかし、クラウディオ・ラニエリ監督が試合後に話した通り、コミュニケーションや連係の部分に関しては改善が必要か。

 とくに2点目の場面では、コリーのカバーに回った吉田の背後を誰もケアできておらず、MFアントニオ・カンドレーヴァにスペースを突かれて最後は失点を許している。安易に飛び込みたくなかったのか、ボールを持ったルカクへの寄せも甘かったのは事実で、マークに付いていた吉田も失点に関与したと言わざるを得ないが、そこまで簡単にやられるような場面でもなかった。個人がというより守備陣全体として、やはり連動性は磨いていきたい。

 現時点でのサンプドリアの失点数は「46」。あまりにも多い。残留に向け守備陣の奮闘は不可欠なものとなるが、吉田はそんなチームを牽引していけるか。注目だ。

(文:小澤祐作)

【了】

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