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南野拓実がリバプールに溶け込むのは難しい? 直近4試合で出場は8分のみ。サバイバルを勝ち抜くために必要なのは…

プレミアリーグ第35節、リバプール対バーンリーが現地時間11日に行われ、1-1で引き分けた。南野拓実はリーグ優勝が決まって以降、ほとんどチャンスを与えられておらず、この試合も出場がなかった。献身的なディフェンスなどは評価されているものの、完成されたチームの中で居場所を築くには、何が必要なのだろうか。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

アンフィールドでの連勝がストップ

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【写真:Getty Images】

 リバプールがゴールネットを揺らしたのは1回だけ。69分にはセットプレーの流れから失点し、試合はドローに終わっている。昨季から1年以上続く、ホームのアンフィールドでの連勝記録は24でストップした。

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 チャンスを作れなかったわけではなかった。

 17分にはアンドリュー・ロバートソンのクロスをロベルト・フィルミーノが落として、カーティス・ジョーンズがシュート。その1分後にはジョー・ゴメスのロングフィードから、最後はモハメド・サラーが右足でゴールを狙った。33分にはサディオ・マネからパスを受けて前を向いたサラーが左足を振り抜く。前半アディショナルタイムにはサディオ・マネが左足を振り抜いている。

 73分には途中出場のトレント・アレクサンダー=アーノルドが中央からミドルシュートでゴールを狙う。その1分後にはフィルミーノからパスを受けたマネがシュートを放った。サラーは85分にペナルティーエリアの外から左足で、93分にはアレクサンダー=アーノルドが上げたグラウンダーのクロスを右足でゴールを狙っている。

 90分で放ったシュートは23本、うち9本を枠内に飛ばしたが、バーンリーの牙城を崩したのは34分の1度だけ。ファビーニョが上げたクロスを、コーナーキックを上げるために右サイドに流れていたロバートソンがヘディングで押し込んだ。それ以外のリバプールのチャンスはすべて、GKニック・ポープの度重なるファインセーブに阻まれている。

 アンフィールドでの連勝は止まったが、消化試合となった今、チームのパフォーマンス云々を語ることは、高校生が模擬試験の結果に一喜一憂するくらい意味がない。主力選手にとって残りのシーズンは、記録達成というボーナスがついた来季へのアイドリング期間でしかない。

「溶け込むのは相当難しい」

 一方で、若い選手がどんな課題を持ち帰って改善していくかは、消化試合を戦ううえでは大きな意味を持つ。19歳のジョーンズは長期契約を結んだ直後の試合でプレミア初得点をマーク。サイドバックのネコ・ウィリアムスは2試合続けて先発の機会が与えられている。「プレミアリーグという異なる環境でプレーするのに慣れさせているところ」というのが、指揮官が語る起用の理由である。

 リーグ戦再開後はナビ・ケイタが高いパフォーマンスを見せて評価を上げている。ユルゲン・クロップ監督も「怪我でリズムを失ってしまったことは確か。しかし、今の彼はスカッドの中に完璧に落ち着いている」と評価。ライプツィヒ時代に見せていたようなダイナミックなプレーで輝きを放っている。

「ここ2シーズンほとんど負けなかった我々のチームに溶け込むのは相当難しい」(クロップ監督)

 17/18シーズンにUEFAチャンピオンズリーグ(CL)で決勝に進み、18/19シーズンに14季ぶりとなるCL制覇。このシーズンはマンチェスター・シティにリーグタイトルを譲ったが、今季は歴史的な独走で30年ぶりのリーグ優勝を果たした。この約2年間でリバプールは世界屈指のチームへと成長している。

 指揮官が言うように完成したチームに割って入るのは容易ではない。ケイタの場合は怪我もその足枷となったが、約2年を経てチームのスカッドに定着している。

 ウィリアムスは今季全休して退団したナサニエル・クラインと、ジョーンズは今季終了後に退団するアダム・ララーナとポジションが重なる。優勝が決まってから出場機会が与えられているのは、彼らがサイドバックや中盤のバックアッパーに足るだけのプレーを見せているかをテストしているのだろう。

南野拓実に必要なのは…

 一方で気になるのは、南野拓実の立場である。

 再開初戦のエバートン戦は先発で起用されたが、ハーフタイムでベンチに下がった。続くクリスタル・パレス戦は途中出場しているが、優勝決定後は4試合で8分間のプレータイムしか与えられていない。

 南野がリバプール加入後、ケイタのように大きな故障を抱えていないことは、チームへの適応を助けているだろう。しかし、ケイタと同じように、ほとんど負けていないチームに溶け込むのは難しい。CLでセンセーショナルなゴールを決めたディボック・オリギですら、ここ2試合ではベンチで90分を過ごしている。

 前の試合から中2日で行われたこの試合で、指揮官が切った交代カードは3枚。3トップは揃って90分プレーし、オリギも南野もジェルダン・シャキリもプレーできなかった。

 南野がまったくフィットできていないわけではない。守備面ではチームに十分貢献できる。ブライトン戦では短い時間の出場だったが、アディショナルタイムにジェームズ・ミルナーからの縦パスを引き出して決定機を呼び込んでいる。

 いいプレーもあれば、物足りない部分もある。この数か月でその立場が大きく変化したわけではないし、プレーが劇的に変化したと分析するにはプレー時間が足りなすぎる。評価を下すのは時期尚早で、指揮官も「継続することが必要」と言っている。

 リバプールはアーセナル、チェルシー、ニューカッスルとの対戦を残している。ビッグクラブ相手に誰が明確な結果を残すことができるのか。誰もできないのか。外野からの様々な声が聞こえてくるが、来季へ通じるサバイバルは続いていく。

(文:加藤健一)

【了】

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