マジョルカ、久保建英がもたらした衝撃。降格は避けられず…足りなかった総合力【19/20シーズン総括(4)】

新型コロナウイルスという未曾有の脅威によって2度目の夏を迎えることになった、欧州の長い2019/20シーズンがようやく閉幕した。トラブルに見舞われ、新たな様式への適応も求められながら、タイトル獲得や昨季からの巻き返しなど様々な目標を掲げていた各クラブの戦いぶりはどのようなものだったのだろうか。今回は久保建英が在籍していたマジョルカの1年を振り返る。(文:編集部)

2020年08月31日(Mon)10時00分配信

シリーズ:19/20シーズン総括
text by 編集部 photo Getty Images
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極端な内弁慶ぶりが祟り…

久保建英
【写真:Getty Images】

 マジョルカの2019/20シーズンは久保建英の活躍ぶりなしに語れないが、まずは7年ぶりのラ・リーガ1部での1年を振り返っておきたい。

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 ビセンテ・モレノ監督が2年連続の昇格に導いたチームは、38試合でわずか9勝を挙げるにとどまり、1年での2部降格となってしまった。とりわけアウェイでの成績が振るわず、19試合で1勝3分15敗と、6ポイントしか獲得できなかった。

 この極端な内弁慶ぶりは、降格の要因の1つと言っていいだろう。特に約3ヶ月におよんだ中断期間が明けてからはアウェイゲームの6試合で1ポイントしか上積みできず。その唯一の勝ち点も降格が決まった後のリーグ最終節、オサスナ戦でのものだった。

 指揮官は極端に守備的な戦術を志向しているわけではなかったが、戦力的な限界もあって、どうしても「守備」を最優先に意識しなければならない1年だった。クロアチア人FWアンテ・ブディミルは初めてのラ・リーガ1部で13得点を挙げるなど奮闘したが、得点源として計算できたのは彼くらい。GKマノロ・レイナは毎試合のようにビッグセーブを連発していたが、失点は減らず、点も取れないという悪循環は最後までネックになっていた。

 1年で2部降格に至った要因は、アウェイでの絶望的な成績だけではない。財政的な制約もあって補強は限定的で、1部リーグを戦うために連れてきた新戦力の多くが期待されたほどのパフォーマンスを披露できなかったことも痛かった。

 ビセンテ・モレノ監督は結局、2部時代や3部時代を知る古株の選手たちを頼ることに。19/20シーズンの新戦力でチームにプラスをもたらしたのは久保やアレハンドロ・ポソ、クチョ・エルナンデスくらい。いずれも期限付き移籍で借り受けた選手で、チーム全体を見渡すと戦力的な限界はそこかしこに見受けられた。

 シーズン開幕前に久保をレアル・マドリードからレンタルした際、注目を浴びたマヘタ・モランゴCEO(最高経営責任者)は今年2月に退任している。現在マジョルカを保有するアメリカ人オーナーたちとの間に方針の相違があったことが原因とされており、経営陣も残留に向けて一枚岩になりきれなかった。

久保建英のもたらした衝撃

 ただ、こうした厳しいシーズンを戦う中で、久保は大きく飛躍を遂げた。自身初のラ・リーガ1部の舞台だったが、35試合に出場して4得点5アシスト。2000分以上ピッチに立ち、特に終盤戦はチームに不可欠な攻撃の核として機能していた。

 序盤こそ先発起用とベンチスタートが半々くらいだったものの、ピッチ上で存在感を示して周囲の信頼を掴み、徐々に出場時間を伸ばしていった。シーズンが半分を終えようとしていた昨年12月頃には絶対的な主力の1人になっていた。

 久保が最初にスペイン全土を震撼させたのは、ラ・リーガ第13節のビジャレアル戦だろう。クチョ・エルナンデスの先制点につながるPKを獲得し、見事なワンタッチパスで2点目のPKにつながる起点に。そして53分に自ら強烈なミドルシュートを決め、リーグ初ゴールを奪う。3-1の勝利において全得点に絡む活躍を披露した。

 今年2月にはベティス戦で1得点1アシストを記録して3-3のドローに貢献。リーグ戦中断直前のエイバル戦では終盤の78分に貴重な追加点を奪い、マジョルカをアウェイ初勝利に導いた。

 中断明け初戦、敗れはしたものの古巣・バルセロナ戦で格上相手にも個のクオリティが十分に通用することを鮮烈なパフォーマンスで証明した。苦しい戦いが続く中で5-1の大勝を収めたセルタ戦で2アシスト、レバンテ戦でもゴールで勝利をもたらした。

 このように久保がゴールやアシストという形で「数字」を残すことで、マジョルカが勝ち点を獲得できた試合は多い。豊かな才能を開花させ、トップレベルでも違いをもたらせるプレーヤーであることを証明した。

 それでも一歩及ばなかった。最も痛かったのは最終盤まで1-0でリードしていながら追いつかれ、勝ち点を2ポイント取り損ねてしまったラ・リーガ第30節のレガネス戦だっただろうか。

 残留争いの直接対決だった試合で勝ち点3を積み上げられていれば、最終節まで望みをつなぐことができたかもしれない。やはり久保やクチョといった若い個の力だけでは、1部残留には力不足だった。

1年での1部復帰は可能か?

クチョ・エルナンデス、久保建英
【写真:Getty Images】

 シーズンを終えると、マドリーには日本の至宝を求めて移籍オファーが殺到したという。一説には20クラブ、あるいは30クラブが争奪戦を繰り広げたとも言われる。

 地元では真の“マジョルキン”(マジョルカ人)として認められ、ゆくゆくはマジョルカのレジェンドとして語られることになるかもしれない。しかし、久保にとってラ・リーガで過ごした最初の1年は、ポテンシャルの全てを解放できたわけではなかっただろう。

 ある試合の後に残した「このチームのウィングに求められる仕事は、他のチームより多い」という主旨の言葉の通りだ。マジョルカはアタッカーとしての役割に集中できる環境ではなかった。

 戦力的な不足を補うために、どうしても守備的に戦わざるをえないマジョルカは4バックや5バックと複数のシステムを試合ごとに使い分けていた。その中で久保はほぼ右ウィングに固定されていたが、5バックで守りを固めているとはいっても攻撃に専念できるわけではなかった。

 守備時にはディフェンスラインのサポートに全力で戻ることが求められるのは、4バックでも5バックでも変わらない。相手に押し込まれる展開が長くなる試合も多く、自陣深くまで帰って守備に参加し、そこからカウンターで長い距離を走って前に出ていかなければならない。

 しかも攻撃に転じる回数も少ないとなれば、久保も自分の特徴を最大限に生かす術を見つけ出すのに苦心していただろう。クチョやポソといった年齢の近いレンタル組の選手たちとはプレー感覚を共有でき、好連係を築いていたが、なかなか結果には結びつかなかった。

 マジョルカは再び1部昇格を目指して2020/21シーズンはラ・リーガ2部での戦いに挑む。先に述べた久保やポソ、クチョといった主役級の若手たちはレンタル元に戻り、久保はビジャレアルへ、クチョはヘタフェへとそれぞれ移籍が決まった。

 1部リーグで13得点を挙げたブディミルにも移籍の噂が絶えない。一方で、マジョルカに目立った新戦力の獲得はなく、戦力的な上積みはほぼない状況だ。トップリーグで経験を積んだ主力が残っているとはいえ、新シーズンも難しい戦いを強いられることになるかもしれない。

 また、ビセンテ・モレノ監督の退任も決まり、ルイス・ガルシア・プラサ新監督の就任が発表されている。2019/20シーズン終盤にラ・リーガデビューを果たした15歳のルカ・ロメロなど有望株もいるだけに、新指揮官がどのようなチームを作って「1部昇格」というミッションに挑むか注目だ。

(文:編集部)

【了】

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