勝ったのにこき下ろし!? やる気なし、凡庸、哀れ…PSGを取り巻く深刻な問題とは

パリ・サンジェルマン(PSG)は先月28日、チャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグ第2節でイスタンブール・バシャクシェヒルと対戦し、2-0で勝利を収めた。しかし、「選手たちからやる気は感じられない」や「チームプレーの意識はない」など、評価は散々。昨季CLファイナリストが抱える問題は、果たしてどこにあるのだろうか。(文:小川由紀子【フランス】)

2020年11月02日(Mon)7時00分配信

text by 小川由紀子 photo Getty Images
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「選手たちからやる気は感じられない」

パリ・サンジェルマン
【写真:Getty Images】

 パリ・サンジェルマン(PSG)は10月28日、チャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグ第2節のイスタンブール・バシャクシェヒル戦に2-0で勝利し、今季のCLで初勝ち点3を奪った。

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 得点者は今オフに入団したばかりのFWモイーズ・キーン。20歳8ヶ月でのCLでの2得点は、PSGの最年少記録だそうだ。

 初戦はマンチェスター・ユナイテッドに1-2で敗れたが、そのマンチェスター・ユナイテッドがRBライプツィヒを5-0と粉砕してくれたため、PSGはグループHの2位に浮上している。

 がしかし、「リズムはない、テンポは悪い、選手たちからやる気は感じられない、チームプレーの意識もない…」。等々、バシャクシェヒル戦でのPSGのパフォーマンスについて、ファンや批評家からの評価は散々だ。

 元レキップ紙の記者で現在はコメンテーターを務めるご意見番のピエール・メネズ氏も「トルコでのPSGのパフォーマンスは、“凡庸”と“哀れさ”を掛け合わせたようなもの」とこき下ろしている。

 たしかに、「覇気」や「攻め気」といったものは感じられず、連係もスムーズではなかった。ファンから大不評の“カタール色”のサードユニも、パフォーマンスにいっそう影を落としていた気がする。

 チームとして機能していない、という印象は、CL初戦のユナイテッド戦も同様だった。

 マルコ・ヴェラッティやフアン・ベルナト、マウロ・イカルディ、レアンドロ・パレデスら、昨シーズンの『ファイナル・エイト』を戦った主力選手はそろって負傷中で、マルキーニョスも大腿部の負傷から復帰して間がない。そしていま現在、PSGが直面している深刻な問題は、「バーンアウト」だ。

「内容の良い試合をしたいが…」(トゥヘル監督)

 バシャクシャヒル戦の前、10月26日にPSGの公式サイトに掲載されたインタビューで、キリアン・ムバッペが率直に心境を語っていた。

「今回のシーズン序盤戦は、体力的に厳しいし、それにも増して精神的にきつい。開幕前に十分な準備期間もなかった。CL決勝戦のあとは代表戦があって、Covidにかかった選手もいた(注:彼もその一人)。

 僕も、ほかの選手たちも、いまは新シーズンというより、昨シーズンがまだ続いているような感じなんだ。9節じゃなくて60節目、という感じ。新シーズンっていうのは、いったんフットボールから完全にオフになった状態になって、しっかりバッテリーをチャージしてから迎えるものだ。

 この競技が大好きだしいつもでピッチに立ってプレーしたいとは思っている。だから試合があることに不満を言っているわけじゃない。ただ、かなり難しい状況だ」。

“9節じゃなくて60節”、という表現にリアリティーを感じるが、トーマス・トゥヘル監督も、バシャクシャヒル戦のあと同じようなことを訴えていた。

「ロックダウンのあとすぐに決勝戦(リーグカップとフランス杯)、それからポルトガル(ファイナル・エイト)。それが終わったと思ったら間も無くリーグ・アンが開幕した。この現実を見てほしい。もっと内容の良い試合がしたいのはもちろんだが、今はその時期じゃない」。

 コロナ禍によるイレギュラーな環境の中、PSGはクラブ史上初めてCL決勝戦に進出したが、バイエルン・ミュンヘンとの頂上対決に敗れたあとは、精神的、肉体的な疲れを十分癒す間もないまま、わずか2週間半後にリーグ・アンの初戦を迎えた。しかもその間、ムバッペら数人は代表戦にも招集されている。

 主力陣に負傷が重なっているのもこの状況と無関係ではないだろう。加えて開幕後まもないマルセイユ戦では乱闘事件もあり、出場停止処分も重なった。

キーンは希望の光か

モイーズ・キーン
【写真:Getty Images】

 トゥヘル監督は、「現状、全員が100%という状態で試合に臨むのは難しい。何人かの選手はリスクを冒しながら使っていく必要がある」と話している。バシャクシャヒル戦で左腿の内転筋を痛めたネイマールの復帰も、少なくとも次回の代表ウィーク明けになる見込みだ。

 このような状況の中で、キーンの躍進は希望の光だ。

 いまの好調さを持続してゆけるかが今後の課題だが、昨シーズン、エバートンで2得点2アシストと消化不良に終わっていた彼にとっても新天地で己の真価を発揮するチャンス。疲弊しきったチームの中でフレッシュな心身状態を保てているのは大きなアドバンテージだ。

 初得点をあげた第3節のディジョン戦では、ネイマールとパブロ・サラビアが両サイドでキーンが真ん中という布陣だったが、トゥヘル監督はキーンに最も適しているのは2トップの一角だと考えているようで、「彼は相手FWのためにスペースを空ける働きができる。我々のゲームにインテンシティを与えてくれる。身体能力の高さも強みだ」と評価している。バシャクシャヒル戦ではムバッペとの2トップだったが、イカルディが復帰したら、彼とのコンビも試されるだろう。

マルキーニョス&D・ペレイラ起用法問題

 もう一点、現在PSGを取り巻いているのは、ダニーロ・ペレイラ&マルキーニョス問題だ。

 発端はシーズンオフのメルカート。トゥヘル監督はスポーツダイレクターのレオナルドの補強方針に満足しておらず、とりわけ、チアゴ・シウバ(チェルシー)とトンギー・クアッシ(バイエルン)を手放した後に獲得したのが守備的MFダニーロ・ペレイラで、彼らに代わるセンターバックが補われていないことへの不満を露わにしていた。

 トゥヘル監督は、第8節のディジョン戦、続いてバシャクシャヒル戦でもペレイラをCB、本業はCBのマルキーニョスをアンカーと、両者を逆位置で起用した。これがトゥヘルからレオナルドへの「宣戦布告」だと、メディアは祭り上げているのだ。

 前述のメネーズ氏やPSGのOBで元フランス代表のDFクリストフ・ジャレなど、「中盤はマルキーニョスが力を存分に発揮できるポジションではない」とみる意見も多い。

 トゥヘル監督はバシャクシャヒル戦のあと、「なぜみながこのことについて騒いでいるのか理解できない。マルキーニョスは昨シーズンも多くの試合を『6番』のポジションで戦った。実際、彼のその働きがなければ、我々はCLの試合には勝てていなかった。それをなぜ変える必要があるのか? それに、ダニーロは、守備的MF よりCBこそ適任だと思っている」と正当化した。

 チアゴ・モッタが引退後、アドリアン・ラビオも離脱し、人材が不足した状況でマルキーニョスを守備的MFのポジションで使ったトゥヘル監督の策が、多くの試合で奏功したのは事実だ。バシャクシャヒル戦ではパスミスも目立ったし、相手に十分なプレッシャーもかけられていなかったが、気力、体力とも十分ではなく明らかにコンディション不良だった。

 しかしこういった起用法も火種となって、「トゥヘル迷走」という批判がじわじわ燻りつつある。何か決定的な敗戦でもあれば、メディアの煽りも受けて、一気にトゥヘル解任説が浮上してきそうな空気だ。

 ただ冷静に現状を見るなら、バーンアウト状態の選手達で、例年をしのぐ過密スケジュールをどう乗り切るかが重要課題だろう。リーグ・アンでは、第8節目にして首位に復活、王者の面目をなんとか保っているが、『PSG史上最高』と言われた昨シーズンの功績が「極限の疲労」という負荷になってしまったのは残念だ。

 いったい回復できるタイミングはくるのか!? という感じだが、当面はキーンや、昨年怪我がちで欠場が多かったレーバン・クルザワら、フレッシュなメンバーにがんばってもらうしかない。

(文:小川由紀子【フランス】)

【了】

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