バルセロナ、真のキーマンは不遇の「9番」だった? 伏兵ブライトバイテが覚醒、攻撃力を底上げする決定的な働き【CL分析コラム】

UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージ第5節が現地2日に行われ、バルセロナはフェレンツバロシュに3-0で勝利を収めた。リオネル・メッシやフィリッペ・コウチーニョを招集外とした中で、CLは5連勝。ようやく調子が上向いてきたように見える。その鍵となったのは、不遇な扱いを受けていた「9番」の活躍だった。(文:舩木渉)

2020年12月03日(Thu)13時16分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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ルイス・スアレスを失って…

マルティン・ブライトバイテ
【写真:Getty Images】

 ロナルド・クーマン監督は「9番」の役割の重要性を再認識していることだろう。

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 今夏、バルセロナの監督に就任したオランダ人は、6年にわたってクラブに数々のタイトルをもたらしてきたルイス・スアレスに構想外を言い渡した。真っ先に非情な現実を言い渡された功労者は、抗うことをやめ、すぐに移籍していった。

 スアレスが新天地のアトレティコ・マドリードで鬱憤を晴らすような大活躍を披露しているのは皮肉なことだが、何とも彼らしい。本当に大切な物事ほど、失くしてみて初めて気づく。クーマン監督は自らの決断によってチーム作りにおける基盤の重要な部分を失ったことを実感したのではないだろうか。

 苦しい戦いが続いている。退団しかけたリオネル・メッシが序盤戦から本来の姿ではなく、負傷者も続出。リーグ戦では暫定ながら7位に沈むなど、バルサらしからぬ成績で低迷している。レアル・マドリードの不振を笑ってなどいられない状況だ。

 ディフェンスラインの故障者の多さも問題だが、それ以上に前線のベストユニットが確立されない問題も大きかった。スアレス去りし後、1トップに誰が入るのがベストなのか見つけきれていない。開幕当初はメッシが、その後はアンス・ファティやアントワーヌ・グリーズマンも務めたが、どれもしっくりこない。アンスに至っては長期離脱が決まってしまって、しばらく頼ることができなくなった。

 ところが最近になって、この大問題が徐々に解決に向かいつつある。昨季途中に緊急補強したものの、イマイチ戦力になりきれていなかったデンマーク代表FWマルティン・ブライトバイテが存在感を発揮し始めたのだ。

 11月24日に行われたUEFAチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージ第4節、ディナモ・キエフとのアウェイゲームで今季初先発を飾ったブライトバイテは2得点1アシストの大活躍。バルサを4-0の快勝に導いた。

 続く同29日のラ・リーガ第11節のオサスナ戦でも先発起用されると、貴重な先制点を奪って4-0大勝の口火を切った。そして現地12月2日に行われたCLのグループステージ第5節、フェレンツバロシュ戦で公式戦3試合連続の先発メンバー入りを果たし、1得点とPK獲得で3-0の勝利に貢献。この1週間で4得点1アシストと、チーム内における存在感はとてつもなく大きくなっている。

「僕はここにいられて幸せだし、チームに自分の居場所があることを示したい。とはいえ、最も重要なのは最近のチームがどのようなパフォーマンスを見せているか。僕たちは今の状態を続けていかなくてはならないと思う」

 フェレンツバロシュ戦を終えたブライトバイテは、自信を深めているようだった。

ブライトバイテが果たす「9番」の役割

 スアレスのようにどんな形からでもゴールを決めまくる能力はない。メッシのように単独で局面を打開する力もない。フェレンツバロシュ戦のスタッツを見ても、80分のプレーでボールタッチは29回、パス成功10本、パス成功率66.7%と、バルサの他の選手に比べてボールに絡む回数は少なく、精度もそれほど高くないことがわかる。

 しかし、シュートは4本放っていて、うち2本をゴールの枠内に飛ばしている。そして1得点とPK獲得である。プレーに関与する回数が少なくとも、チーム戦術の中で非常に効率よく自分の役割を果たしていると言えるだろう。

 これこそがブライトバイテの存在価値だ。ゴールへの意欲はあっても、必要以上の「欲」は出さない。まずはチームの一員として最低限のタスクをこなす。常に「9番」として相手のディフェンスラインと駆け引きし、センターバックとバチバチの勝負を繰り広げ、チャンスシーンでは必ずゴール前に顔を出す。

 相手DF陣の意識がブライトバイテに向けば万々歳。ディフェンスラインを駆け引きで押し下げることもでき、するとバルサの最大の武器である2列目のアタッカーたちが自由に躍動するスペースが生まれるのだ。昨冬、スアレスの負傷にともなってレガネスから緊急補強された際に「バルサでプレーするには実力が足りない」と批判も浴びたストライカーは、献身的に働く自分らしさを発揮することでチーム内に居場所を確立しつつある。

 CLのグループステージでは全勝するも、公式戦という広い括りではなかなか連勝が続かなかった今季のバルサが、ブライトバイテを先発起用した3試合で今季初の3連勝を達成。しかも、4-0→4-0→3-0と計11得点を奪い、攻撃の破壊力が際立っている。

 得点者を見てもブライトバイテが3試合で4得点、トップ下起用がハマったグリーズマンは3得点、さらにメッシ、コウチーニョ、ウスマン・デンベレ、セルジーニョ・デストが1得点ずつとなっている。

クーマン監督も再認識する重要性

マルティン・ブライトバイテ
【写真:Getty Images】

 4-2-3-1の頂点に立つブライトバイテが最も多く、そこにグリーズマンやメッシら2列目の選手が続く。セルジーニョ・デストのゴールもブライトバイテのアシストによるものだ。明確な「9番」が前線に入ったことによる効果が、ゴールや得点者の傾向によっても実証されていると言えるだろう。

「僕は(フェレンツバロシュ戦前の)2試合で自分に何ができるかを示してきたが、時間の経過とともにもっと良くなっていくと思う」

 絶好調のデンマーク代表ストライカーは、充実一途だ。自ら獲得したPKはデンベレが蹴ることになったが、「彼が蹴りたがっただけで、何の問題もない」とわだかまりを否定。味方にゴールチャンスを譲る余裕すら見せている。

 クーマン監督もフェレンツバロシュ戦前の記者会見の中で「彼の仕事ぶりは、試合でプレーするに値する。時には『9番』が必要だ」とブライトバイテの存在価値を認めた。自らが一度捨てたはずの「9番」の重要性を、ひしひしと感じているに違いない。

 財政的な状況や動き出しの遅れによって、夏の移籍市場でストライカーを獲得できなかったバルサにとって、ブライトバイテは現チーム内唯一の純粋な「9番」タイプの選手だ。シーズン序盤は出場しても終盤に数分だけという試合が続いていた、ほぼ構想外の状態から、今や攻撃のキーマンとなりつつある。

 ラ・リーガでは6試合の出場で先発は一度だけ、出場時間はわずか115分だが、苦しい立場でも腐ることなく努力を続けてきたからこその台頭だ。浮上のきっかけをつかんだCLでは57分に1得点のペースでゴールネットを揺らしていて、先発起用の期待に見事な結果で応えている。

「新監督がやってきたら、誰もが物事は簡単になるだろうと思いがちだ。クーマン監督がこのチームに来た時は、チームに新しいアイディアを植えつけようとしていたのに、シーズン開幕まで準備する時間がなかったことを忘れてはいけない。時間が必要なんだ」

 ブライトバイテは一度は自らを厳しい立場に追いやった指揮官をも擁護する。この誠実なパーソナリティも彼の魅力だ。常にチームのために何が最善かを考え、献身的に自らの役割をこなす忠実な「9番」は、バルサにおいて今後も不可欠な存在になっていくだろう。

(文:舩木渉)

【了】

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