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圧巻のチアゴ・シウバ、今も世界最高峰。チェルシー勝因は3得点奪取の攻撃陣にあらず【分析コラム】

プレミアリーグ第14節、チェルシー対ウェストハムが現地時間21日に行われ、3-0でホームチームが勝利している。チェルシーはこれで連敗ストップ。レスターやエバートンらにプレッシャーを与えている。では、勝因はどこにあったのだろうか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

3点差以上での勝利は今季4度目

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【写真:Getty Images】

 第2節リバプール戦を0-2で落とした後は無敗を継続と好調だったチェルシーだが、ここにきてまさかの失速。とくに攻撃陣が沈黙しており、エバートンに0-1、ウォルバーハンプトンに1-2と2試合続けてポイントを落としてしまった。

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 そんな中で迎えたプレミアリーグ第14節、ウェストハムとのロンドンダービーを、フランク・ランパード監督は「非常に重要」と位置付けている。また、DFクルト・ズマは「2連敗の後ということもあり、勝つための準備をしなくてはいけない。挽回する以外に解決法はない。月曜の試合は絶対に勝つ」と強気なコメントを残していた。

 チェルシーのそうした勝ちに向けた姿勢はウェストハム戦の序盤からよく表れていた。10分にはベン・チルウェルが負傷交代するというアクシデントに見舞われたものの、その直後にコーナーキックからチアゴ・シウバが得点。いきなりリードを奪っている。

 その後はウェストハムにボールを持たれる時間が続いたが、守備陣がしっかりと対応。守護神エドゥアール・メンディが目立つシーンは少なかった。

 1-0のまま迎えた後半はチェルシーが守り、ウェストハムが攻めるという展開が長く続いた。ハイタワーの揃うアウェイチームはサイドからのクロス攻撃を徹底して行っていたが、チェルシー守備陣はそれを身体を張って弾き返している。ゴール前のバトルは非常に見応えがあった。

 上記したことからもわかる通り、流れは完全にウェストハムだった。しかし、点を奪ったのは守備に追われていたチェルシー。相手が前掛かりになったところを突き、それまで沈黙していたタミー・エイブラハムが78分、80分と立て続けに得点。一気に勝負を決めた。

 このまま3-0で試合を締めたチェルシーは連敗脱出。勝ち点を25に積み上げ5位とし、レスターやエバートンなどにプレッシャーを与えている。

チアゴ・シウバの能力

チアゴ・シウバ
【写真:Getty Images】

 ランパード監督が「非常に重要」と話したウェストハム戦を最高の結果で終えることができたチェルシー。では勝因はどこにあるのか。それは、3得点を奪った攻撃陣ではなく、守備陣にあるとみていいだろう。

 とくに獅子奮迅の活躍をみせていたのはベテランCBのチアゴ・シウバだ。これまで様々な舞台で磨き、進化させてきたディフェンススキルを余すことなく発揮したことはもちろん、前半に値千金の先制ゴールを奪うなど、とにかく随所でよく目立っていた。

 先述した通り、チェルシーは開始10分で左サイドバックのレギュラーであるチルウェルを負傷で失った。その代わりに入ったのはエメルソン・パルミエリだったのだが、同選手はもともと守備に定評があるわけではない。この日もボールホルダーに対し十分に寄せられなかったり、フィジカルコンタクトで後手に回ったりと、不安な部分を多く露呈してしまった。

 しかし、そんなエメルソンが受け持つ左サイドに蓋をしたのが他でもないT・シウバだ。カバーリングの質が抜群に高いなどクレバーな背番号6は、エメルソンのサポートを常にハイレベルにこなし、不安なポイントを着実に消している。かなり負担は大きかったはずだが、そのようなことを感じさせないあたりも、さすがはベテランといったところだろうか。

 また、T・シウバは幾度となく飛んできたクロス(チェルシーの19本に対しウェストハムは25本)をほぼすべて弾き返している。

 この日、身長183cmのT・シウバが対峙したのは同190cmを誇るセバスティアン・ハラー。単純な競り合いであれば勝つことは当然難しいが、ブラジル人CBは身体能力の高さ、そしてこれまた頭の良さで大型FWを完全に封じ込めている。

 T・シウバの動きを目で追っていると、ちらちらとハラーの位置を確認していることがわかる。そしてボールホルダーとハラーを同時に確認しやすい場所へポジショニングし、相手が動き出した瞬間に自身も走って、ハラーが飛び込むコースを先に消す。相手より前に入り先に飛んでしまえば、いくら身長差があろうと相手はボールに合わせることが難しくなる。そして、ここは個人能力だが、跳躍力のあるT・シウバは高確率で頭にボールを当てる。事実、この日ハラーをシュート1本に抑え、自身はチーム最多となる6回の空中戦勝利を記録している。

 73分の場面では、サイード・ベンラーマのフワッとした折り返しに対し、E・メンディが飛び出すと判断した瞬間に競り合うのを止め、身体をぶつけることでE・メンディからハラーを遠ざけている。こうして守護神は余裕を持ってボールをキャッチすることができた。細かいシーンではあるが、T・シウバのこうした一つひとつの気の利いたプレーがウェストハムを大いに苦しめていた。

 先制後、流れ的には追いつかれてもおかしくなかったが、耐えたことで隙を突いて点差を広げることができた。ティモ・ヴェルナーやカイ・ハフェルツらがフィットできていない中、しばらく生命線はT・シウバが中心となった強固な守備ということになりそうだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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