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久保建英はなぜ使われなくなったのか。ビジャレアルにとっても想定外だった絶望的な状況【分析コラム】

ラ・リーガ第15節、ビジャレアル対アスレティック・ビルバオが現地時間22日に行われ、1-1の引き分けに終わった。久保建英は2試合連続で出場なしとなり、冬の移籍市場での去就が注目されている。なぜ、久保は出場機会を失ってしまったのだろうか。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

今度はキャプテンが…

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【写真:Getty Images】

 ビジャレアルは前節でオサスナに勝利して5試合ぶりの白星を挙げたが、アスレティック・ビルバオ戦で連勝を達成することはできなかった。公式戦の無敗記録は19試合に伸びたが、リーグ戦は6試合で1勝5分と勝ち星を伸ばせていない。

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 順位こそ4位と持ちこたえているものの、1試合消化が少ない5位バルセロナとの勝ち点差は2ポイント。2試合消化が少ないセビージャには3ポイント差に迫られている。

 主力の離脱がウナイ・エメリ監督を悩ませている。アキレス腱を痛めていたパコ・アルカセルは、復帰したエルチェ戦でハムストリングを負傷して再離脱。カルロス・バッカも筋肉系の負傷で先月末からプレーできない状況が続く。13日のベティス戦ではアンカーを務めるビセンテ・イボーラが左膝の前十字靭帯を断裂し、今季中の復帰が絶望視されている。

 過密日程を戦うビジャレアルは連鎖的に負傷者が出ている。このビルバオ戦では前半にマリオ・ガスパールが負傷。大腿部を痛めたビジャレアルのキャプテンは、24分にルベン・ペーニャと交代でベンチに退いている。

 ジェラール・モレノと並ぶスコアラー、それをバックアップしてきたベテランFWの不在が続くビジャレアルは得点力不足に悩まされている。アンカーとして公式戦全試合に出場してきたアンカーは替えが利かず、キャプテンとしてチームをまとめてきた右サイドバックもいなくなった。苦戦は必至だった。

18歳がビジャレアルを救う

 ビルバオ戦はオサスナ戦から中2日だったが、メンバーの変更は2人のみ。モイ・ゴメスが先発に復帰し、アルフォンソ・ペドラサが出場停止明けで先発に戻ってきた。久保建英は2試合連続で先発から外れた。

 5試合ぶりに複数得点を挙げたオサスナ戦の戦い方を踏襲している。勝っているときに形を変えないのは手堅いエメリ監督らしいチョイスだ。右サイドにアタッカーを置かず、攻撃時は2トップのジェラール・モレノが右サイドに開いた。

 ビルバオはビジャレアルのエースに自由を与えなかった。データサイト『Whoscored.com』の集計では、ビジャレアルの先発したフィールドプレーヤー全員が80%以上のパス成功率を記録した中で、ジェラール・モレノはチームワーストの66%。タイトなディフェンスに苦しみ、サイドの低い位置でプレーする場面が多くなってしまった。

 それでも6本のキーパス、4本のシュートはチームトップとさすがの活躍だった。しかし、チームとしてはボックス内の迫力不足は否めず、エースの個人技術に頼らざるを得ない場面が多かった。

 19分に先制を許したビジャレアルは66分に動く。アンカーのフアン・フォイスを下げてジェレミ・ピノを投入する。ダニエル・パレホがアンカー、モイ・ゴメスが左サイドから中盤にシフトし、ピノが左サイドに入った。

 推進力のあるドリブルが持ち味のピノは、積極的に仕掛けた。74分にマヌ・トリゲロスのパスを受けたが、シュートはニアのポストに直撃。しかし、その次のプレーで再びトリゲロスからパスを受けると、左足を振り抜いてニアサイドのゴールネットにシュートを突き刺した。

 ピノはこれがラ・リーガ初ゴール。初アシストをマークした前節に続き、18歳のピノが結果を残した。

久保建英は絶望的な状況

 アピールに成功するピノとは対照的に、久保建英は2試合連続で出番が回ってこなかった。1-1で迎えた82分にビジャレアルは3回の交代機会を使い切ったが、フェルナンド・ニーニョに代わってピッチに立ったのはサミュエル・チュクウェゼだった。

 久保の去就については様々な報道が飛び交う。リーグ戦における久保の291分というプレー時間の短さにレアル・マドリードが不満を持っている。今季中の復帰が絶望的なビセンテ・イボーラの代役を確保すべく、EU外枠を空けるために久保を返却する。この2つがビジャレアル退団のシナリオとされている。とくに後者は両クラブと久保にとって想定外だったに違いない。

 ピッチ内だけ見ても、久保の置かれた状況は絶望的かもしれない。ジェラール・モレノを活かすため、ビジャレアルは右サイドにサイドアタッカーを置かないことが多い。中央にはトリゲロスのような8番(インサイドハーフ)のプレーが求められ、守備面での要求も高い。

 久保にチャンスがあるとすれば流れを変える後半から、ということになるが、ここ2試合ではチュクウェゼが選ばれた。相手の足が止まる試合終盤であれば、チュクウェゼのスピードが活きることの方が多い。ピノのブレイクも、開幕前の時点では想定していなかっただろう。

 19歳の久保がどの道を歩むべきか、正解は存在しない。ただ、今という一地点を切り取れば、満足な出場機会を得ることが難しい状況に久保が置かれていることだけは確かだと言える。

(文:加藤健一)

【了】

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